第10話「竜人族」
お披露目が始まって既に数日が経過した。
毎日小さな街を3~4カ所回って、最後に大きな街で歓迎会があった。
そしてユウト達は最後の訪問地である西方の最大都市ヴェスターに着いた。
ヴェスターでの歓迎会が終わった翌朝、ユウトが帰り支度をしているとアークが近寄ってきた。
「ユウト、帰る前に一カ所行くところがある。」
「昨日の話ではここで最後と行っていたけど、まだ歓迎会であるのか?」
「歓迎会ではないよ。まぁ、でもユウトがやってくるのを待っているよ。」
ユウトは少し不思議そうな表情を見せてアークに聞いた。
「いったいどこへ行くんだい?」
「竜人族の住んでいる山だよ。」
(そういえば竜人族がいると、以前シュヲルツ調整官が言っていたな。)
「それは楽しみだ。」
「馬車はここに置いておいて、とりあえず移動門で麓まで行こう。」
(竜人族に会うのは楽しみだな。四季の調整をしていると言うことだったから、能力はかなり高いんだろうな。)
麓に着くと、数人の竜人族が出迎えてくれた。
「ユウト様、ようこそいらっしゃいました。」
「出迎え感謝致します。ユウトです。」
「それでは、長老が待っておりますので、ご案内いたします。」
出迎えに来た竜人族は、見た目は人間とほとんど同じだったが、人間と比べると少し大きく目つきは非常に鋭かった。
しばらく山を登っていくと、竜人族の里に着いた。
大きな館が有り、中に入ると巨大な竜が横たわっていた。
(龍はかなりのサイズで、謁見も間での魔王パイトスと同じくらいに見えた。)
「ユウト様よくおいでになった。私はこの里の最長老のライラと申します。」
「ユウトです。お招きに感謝いたします。」
「里の者達もユウト様のお力を拝見できると、楽しみにしておりました。」
(何かやらないといけないのかな?何も聞いてないけど・・・)
「さて、ユウト様は竜人族についてどれくらい知っておられますか?」
「竜人族については、いずれ会うことになるのでその時の楽しみにして、あまり調べないように言われていたので、ほとんど知りません。」
「そんなことを言うのはきっとパイトス様ですね。ほほほほ。」
(またパイトス様の仕込みか・・・・)
「では、私からご説明いたします。」
そう言うと人型になったライラが、竜人族についての知識を全く持たないユウトのために竜人族について語り始めた。
「竜は地水火風のうち一つの属性を持って生まれ、属性ごとに黄水赤緑のいずれかの色をして生まてきます。長年生きていると、私のように新たな属性を得るものがおり、体の一部が属性に応じた色に変わります。ご覧の通り、私は四つの色を持ち地水火風すべての属性を持っています。本来の姿は竜ですが、竜人族という名の通り人の姿をとることが出来ます。」
「竜人族の能力としては、非常に目がよく、いわゆる千里眼というものを持っています。また、憎悪の感情に敏感で、そのため広範囲で魔獣や魔物の存在を察知することが出来ます。後は、気候を操る能力がありますが、これは水と火の属性の両方を持つ者に限られます。ただ、単に雨を降らせる程度なら水属性があれば可能です。」
「現在も数名の竜人族がイーデル国の気候を調整しています。気候の調整は、遙か昔に魔王ガリウス様がこの地を訪れて、イーデル国の建国に伴い気候の調整をして欲しいと頼まれた時から始まりました。」
「当時の長老は、ガリウス様に、我らが従うに足る者かどうか力を示せと言いました。今となっては大変失礼なことを言ったものだと、恥ずかしく感じております。そしてガリウス様は、それで納得してもらえるならと、その力を我らに示しました。ガリウス様の魔法の威力を見た里の者達は、驚きのあまり皆擬態が解けて、竜の姿になってしまったと聞いております。」
「このようなことがあって、竜人族は気候を調整することとなり、また、数名の者がガリウス様直属の部下として付いていきました。最後にガリウス様は、今後次期魔王が決まる度にお前達が従うに足る者であることを示すため、この地を訪れるさせると言い残してこの地を去りました。」
(あ、この話の流れだと、やはり私も何かやらないと言うことなのか。)
「ユウト、そういうことだ。竜人族の人たちが敬服するような魔法を披露してやってくれ。」
「アーク。知っているならもっと早く教えてくれても良かったんじゃないか。パイトス様と言い、私を驚かせて喜んでいるのか?」
ユウトは少し怒った表情を見せアークに言った。
「有能な竜人族をパーティーに加えたいから、ガツンと頼むよ。」
ヨシマサがユウトの耳元で囁いた。
(あまり派手な魔法ではこの辺り一帯が消滅しかねないんだけど、何か良い魔法はないかな?どうせなら地水火風のすべての属性の魔法を使った方が良いだろな。)
ユウトが周囲を見渡たすと、大きな岩山が目に入った。
ユウトは、探索魔法で生き物が居ないことを確認すると。
「分かった、じゃ、あの山を見ていてくれ。」
まずユウトは右手の人差し指と小指を立てて、「水刃」と言いながら、手を左から右へと軽く振った。
すると、2枚の巨大な水の円盤が山へ飛んでいき、山の中腹を通り抜けた。
次に、中指で軽くはじく仕草をすると、山の中腹部分がはじき飛ばされ、粉々になった。
すぐさま人差し指を立て火玉と言って山頂部分を指さすと、巨大な火の玉が飛んでいき、落ち始めた山頂部分を焼き尽くしてしまった。
あっという間にユウトが山を消し去ると、竜人族達の間にざわめきがが起こった。
(これで、水と火は良いな。じゃ次は地と風を行くか。)
ユウトは、手のひらを上に向けると、軽く上に持ち上げ、「隆起」と唱えた。
すると、大地が盛り上がった。
盛り上がった土地は立方体になっていて、とても山には見えなかった。
(後は元の形に戻せば良いな。)
ユウトは「成形」と唱えて、人差し指と中指を立てて、くるくると回し始めた。
すると、巨大な竜巻が起こり、あっという間に盛り上がった大地が削られて元の山に戻った。
すべてをやり終えるとユウトはライラに「これでいかがでしょう?」と言った。
「これは、ガリウス様が我らに示した魔法と寸分違わぬ。」
「生きているうちに見ることが出来るとは、ありがたいことだ。」
「ユウト様のお力、感服いたしました。今後とも配下としてお仕え申します。」
(これで良かったみたいだな。たまたまだけどガリウス様と同じ事をやったみたいだな。)
「有りがとございます。今後とも宜しくお願いします。」
「ライラ殿、我らはこれから魔獣討伐の旅に出ます。宜しければどなたか我らのパーティーに入って欲しいと思うのですが如何でしょう。」
アークがそう言うと、二人の子供がユウトの前に飛び出してきた。
「私はカルマ。」
「私はマルカ。」
「是非ともお供に加えてください。」
カルマは赤い髪の男の子、そしてマルカは青い髪をした女の子の竜人族だった。
「ユウト様、この者達はまだ若いが、能力は年長者に引けをとりません。この者達をお仲間に加えていただけますでしょうか。」
ユウトは、カルマとマルカの真剣なまなざしを見るとにっこり笑って「よし一緒に行こう。」そう言って二人を仲間に加えることにした。




