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 ふと気づくと、空には満月が浮かんでいた。

 眩いばかりの月光が降り注ぎ、夜とは思えないほどの明るさが周囲に広がる。

 地面は焼夷弾でも炸裂したかのように完全に焼け焦げて、『カウンター』によって抉られた痕が4本も走っていた。


 俺の足元には、デュラハンの首が転がっている……傷だらけで真っ白な、老人の顔だ。左半分はめちゃくちゃで、目が潰れて頬は裂け、並んだ歯が覗いてる。

 身体の方も酷いもので、手足は()げてバラバラになり、あちこちに千切れ飛んでいた。

 数メートルほど離れた所に、ゴロンと胴体が転がっている。鎧は完全に砕け、腹部からは真っ白な臓物がドロドロと溢れる。おそらく魔術によって防腐処理されたであろうそれらは、まるで生々しさを感じられず、一見すると壊れたマネキンの腹に豆腐を叩き付けたみたいだった。

 幽霊の大群も、とっくに消えてる。『メガクラッシュ』に巻き込まれたか、それともデュラハンがいなくなって統率を失ったか……どちらかだろう。


 俺は、口の中に苦い味が広がるのを感じながら、疲れきった体で深々とため息を吐く。


「はぁ……惨憺(さんたん)たる有り様だな」


 ……あの後、俺は『メガクラッシュ』を12回も撃った。

 デュラハンは片手片足になっても、まだ立ち上がろうとした。ついには両足を失い地面に転がっても、肘までしかない寸詰まりの腕で己の首を構え、口で剣を咥えて『カウンター』を打ち返してきた。

 ここまでやるつもりはなかった……だが徹底的にやらなければ、こいつは止められなかったのだ。

 と、硬く閉じられていたデュラハンの目が、ゆっくりと開く。


「う、わしは……今まで、なにを……?」


 デュラハンの時とは違う。穏やかさを感じられる瞳だ。

 俺は首を拾い、持ち上げながら問うた。


「あんた……『剣聖カノッサ』か?」


 首は、瞬きを何度かした後で苦しげに呻く。


「ぐっ……そうだ。わしは、カノッサだ。……あ、あの死霊術師はどこだ!? 仲間を、助けにいかなくては……っ!」


 それから視線を動かし、自分の首から下がない事に気づき、ハッとした顔をする。


「ああ、そうか! ……わしは……そうだったな。……思い出した」


 カノッサは(ほう)けたような表情で、しばし沈黙する。

 それから必死の形相で口を開いた。


「た、頼む! わしを倒したお主に、頼みがある! 東の地下迷宮に仲間が囚われたままだ! 彼らは、非道な人体実験をされている。きっと同じように、バケモノに変えられているだろう……どうか、彼らを救ってやって欲しい。お主ならできるはずだ! ……どうか頼む! ……お頼み申しますっ!」


 俺は、大きく頷いて見せた。カノッサの首は、安心したように息を吐く。

 それから俺は、言おうとした……あなたの仲間のマリオンは、俺と一緒にいると。

 だが、伝える前に首は目を閉じて。

 それきり、動かなくなってしまった。

マリオンは日本だと女性名のイメージがありますが、実は男女両用の名前です。

日本でいう、ハルカ、カオル、シオン、アスカみたいな感じですね。

僕はマリオンクレープでは、アズキクリームとピーチメルバが好きです。


次回は……燃える明け方

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