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超絶頭脳明晰異世界探偵アケチ  作者: ショームズ
1/1

1話 探偵アケチの最初の事件

超本格ミステリです。肩の力を入れて読むことをオススメします。

1


私の名はアケチ。

ごく普通の高校生だ。


しかし、謎の乱気流によって時空を超えてしまい、今は異世界で探偵をやっている。


私は元いた世界の知識を活かし、数々の事件を解決してきた。


今やこの推理力を頼って王にまで依頼がくるこの私だが、それでもこの街で探偵という存在を認めてもらうには結構な努力をした。


今思えば、あの事件から私は認められ始めた

のかもしれないーーー


「おい!探偵のアケチというのはお前かっ。」


何度もドアを叩く音がする。ようやく依頼が来たらしい。


「ほう。ついにこの私の、探偵の力が必要になったかな。」


「違うわい。貴様は容疑者だ。この殺人事件のな。」


「ふむ、殺人か。まあ悪くない。入りたまえ

よ」


「悪くないじゃない。人が殺されているんだぞ。」


「喧しい奴だな。わかっているよ。君達無能な警察に代わって、名探偵であるこの私に協力を仰ぎに来たんだろう。まあ、入り給えよ。」


俺の事務所に突然やって来たこの男はレード警部。


この空き家を乗っ取って探偵事務所にしたあたりから何故かつきまとう嫌な奴だ。


しかし、今日は何やら事件を持ってきたらしい。不思議と憤慨している彼を居間に通した。


「で。ここに来る程の事件なんだろうな。」


「貴様に力を借りたいなどと誰が言った?君はこの事件の犯人候補だ。『タンテイ』などと意味不明な事を勝手に始めやがって。


この謎の事件も、どうせお前が引き起こしたに違いない。正直に言ってもらおう。」


謎の事件、というのが面白い。

興味をそそられる。


「そうだな、探偵と言うのは・・・・・・警部、君は、ガニ股で歩く癖があるね。」


「む。確かにそうだ。何故知っている。」


「さらに言えば、君は左利きだし、今日は朝から歩いて捜査をしている。

西の商店、住宅地、奴隷市の順で歩いて来たのかな。

血液型はA型。

人間関係で悩んでいる。

ストレスが増えてついついお菓子を食べてしまう。」


「な、なんだ。何故そんな事までわかる、何をした。」


「これが探偵、さ。

靴のすり減り方を見ればこのくらいは論理的に誰でもわかるよ。」


「う、うむむ」


「まあ私に任せ給えよ。どんな事件でも解決してやろう。」


2


「ここが、事件の起きた場所だ。」


警部は木製の一軒家を指差した。

中をのぞいてみれば、なるほど男の死体がある。


「警部、死因は。」


「それが不可解なんだ。

被害者は毒殺されているんだが、その毒というのは遅効性の毒で、すぐに治療の魔法を受ければ治せたはずなんだ。

なのに、被害者は外に出てこなかった。」


「自殺では無いのか。ドアに鍵は。」


「自殺は無い。

死に際に書かれていた羊皮紙に、午後の予定が書いてあったからだ。

自殺をする奴はそんな事ををしない。


しかし、その紙に走り書きで毒を飲まされた事に気づいた旨が書いてあった。

そして、鍵は無い。」


「ふむ、中に入ってみるか。」


ドアに手を掛けようとして、その木製ドアがじっとりと濡れている事に気がついた。


「雨が降ったのかな。」


「いや。最近雨は降っていないが。」


なんだろうか。

そのドアというのも、やけに立て付けが悪い。

二、三度試してみてようやく開いた。


小さな小屋だ。一部屋しかないのか。

部屋は綺麗に整頓されていて、椅子に座ったまま事切れた被害者の死体があった。

そして、机の上には飲みかけのコーヒーカップが2つあった。


おや。


「警部、この帽子を見て思うことは無いかね」


「む。この、玄関に落ちているやつか。普通の帽子だが。」


はあ、と私はため息をつく。

これだから凡人は。


「そうかね。私には、これは犯人の帽子にしか見えないんだがね。」


「な、なんだと、何故そんな事がわかる。」


「被害者にはどう見てもこの帽子は大き過ぎるだろう。そして、この帽子から犯人の特徴がわかる。」


「う、うむ」


「まずこの帽子は大きいだろう?」


「ほう。」


「つまり犯人の頭も大きいだろうな。」


「なるほど。」


「こんなに頭の大きな奴だ。

きっと頭脳のほうも良さそうなものだ。」


「な、なんという事だ!この帽子からそんな事までわかるなんて!」


私の頭はカーンと冴え渡っていた。

今の私の推理力はかのシャーロック・ホームズにも劣らないだろう。


「レード警部。雨を降らす魔法はあるのかい。」


「妙な所で常識のない奴だな。 また何か気づいたのか。水を出したり火を出したりはあるが、雨は聞いたことがないぞ。」


「警部。私には、既に何故、被害者が外に出る事が出来なかったか。

犯人とどの様な関係だったのか。

そして、犯人はどのように被害者を殺したのか。

その全てがわかったよ。」


「なんだと!?まだこれだけしか捜査していないのにか!?なんてやつだ!」


私には既にこの事件の全貌が見えている。

良い機会だ。読者の皆様も、ここらで手を止め、考えて見てはいかがかな?


3


「まず、犯人は。」


「犯人は?」


「この戸棚の裏にある隠し通路を用いて家に侵入!

氷の魔法で凶器を作り、被害者を刺した!」


「しかし、そんな凶器などないぞ!」


「溶けてしまったのさ。

それなら凶器は見つからない。

そして羊皮紙に嘘を書き込んだ。

立て付けの悪いドアには手も触れず、机の下のもう一つの秘密の通路から外へ出たのだ!」


「なるほど!そういうことだったのか!」


「よって犯人はその辺によくいるシリアルキラーだったのだ!」


「くそう!必ず捕まえてやる!」


こうして私たちは犯人の特徴を特定し、街へと歩いていったのだった。


4


この世界には指紋やDNAなどの鑑定は存在しない。


犯人を捕まえるためには私の推理力が不可欠なのである。


私たちは手早く街の殺人鬼を広場に集めて、一人ずつ検証を始めたのだった。


「まずは君からいこう。名前は。」


「クン=ツェだ。なぁ、なんで俺たちは集められたんだ。」


「今回の殺人事件の容疑者だからだ。」


私がそう言うと、にわかに容疑者どもがざわつき始めた。


ついに足がついたかと2、3人自首をしている。


私は間接的に事件を解決してしまったわけだ。自分の才能が恐ろしくなる。


「ツェ君。君は今日、どこで何をしていた。」


「・・・・・・今日はずっと家にいたんだ。久しぶりに休みをもらったからな。」


「それを証明出来る者は。」


「いない」


ツェ君は正直に答えた。


私は心理学にも明るいので、これが嘘では無い事がわかった。


ツェ君の横にいる者に目をやる。


胸を張り、こちらを真っ直ぐに見つめる魔法使いがいた。


一見すればただの好青年だが、その腹の底に何かを隠している事を私は鋭敏に感じ取っていた。


「君、今日は何をしていたんだい」

「はい。僕の名前はモリアート。

今日は朝4時から10時まで魔法学院にいました。


これは先生と同級生によって証明できます。


また、10時から11時までは図書館に、11時から今までは商店にいました。


これらは全て、僕の三人の同級生---アンナ、ビル、ケビンの三人---によって証明されますし、図書館の館長のホシさんや、商店の主のクロさんも僕を見たと言ってくれるでしょう。


だから、僕はそんな男の人が殺されたなんて初めて知りました。


あ。あと、僕は水の魔法とかは使えませんよ。まだ簡単な魔法しか使えませんから。」


「聞かれた事だけ答えるんだ。」


「警部、落ち着いて。話してくれる情報は多いほどいい。ふむ・・・・・・」


その後も私は捜査を続けた。

そして私は、一つの結論に思い至ったのだ。

私の頭はカーンと冴え渡っていた。

今の私の推理力はかのエルキュール・ポアロ

にも劣らないだろう。


「犯人がわかりました。」


広場に緊張が走る。おしゃべりはすっと止み、容疑者達は耳をすませた。


「わ、わかったのかね、犯人が、誰か。」


「私にわからない謎なんてございません。」


私は広場に向き直った。


彼は、こちらを一点に見つめ、くちびるを舐めた。


「犯人は---」


4


「犯人は貴方だ!ツェ君!」


電撃を受けたように固まるツェ。

唾を飲み込み、震える声で聞き返した。


「---なんだって?」


「君にはアリバイが無い。つまり君が犯人だ!」


「なるほど!確かにアリバイが無いのはこいつしかいない!」


「違う!俺はやってない!本当だ!何故俺が殺人なんかしなきゃいけないんだよ!」


「君は連日の仕事で疲れ果て、正気を無くし、今回の凶行に及んだのだ。違うかね。」


「素晴らしい!アケチくん、やっぱり君を信じてよかった!」


「そんなわけないだろ!だいいち、証拠がないじゃないか!」


「諦めたらどうですか!?」


突如モリアートか割って入った!


「探偵さんが言ってるんですよ!貴方が犯人でしょう!?さっさと捕まりなさい!

捕まれ!捕まれ!

捕まるんですよ!」


「なんだおまえ!?なんでそんなに必死なんだよ!?」


「観念したまえ!私の推理が外れるはずがないだろう!」


「ほらあああ‼︎ 探偵様がこう言ってるんですよお!?貴方以外に犯人がいるわけない!いるわけがないでしょおおおおお!?」


「警部として、お前を逮捕するうううう!」


「捕まってたまるかああああ!」


ツェが逃げ出そうとしたその刹那!


モリアートによる高位魔法、イクスプロージョンが炸裂!


「ぎゃああああ」


「今のはカス当たりだったですけどねえ!」


モリアートは杖を構え直した!

「次は当てるよお!?」


「まってくれ!何故なんだ!なんで俺がこんな目に!」


私はツェの前に回り込み、強烈な投げ技を食らわす。

私は戦闘においては無敵とも言える。

この技は日本人に古来から伝わる有名な武術。

バリツだ。


「正義はなされた。」


5


「嫌だあ!俺はやっていない!違う!死にたくない!」


「続きは後でゆっくり聞かせてもらおうか!」


警部によって連行されていくツェを見守っている中、私は一仕事終えた充足感に包まれていた。


モリアートはツェが捕まるのを見ると、走ってその場から去ってしまった。

彼には仕事を手伝ってもらった。後でまた会いたいものだ。



「いやあ、探偵さんに助けられたよ」


後日、居間で私は警部と話していた。


「あの後、彼を数日拷問したところ、あっさりと事件の真相を話したよ。全部自分がやったのだとな。」


「私にとってはあの程度の事件、造作も無い。また私の力が必要になれば言ってくれ。」


「ああ、もちろんだとも。それで、報酬の話だが・・・・・・」


「もう十分に頂きましたよ。この家が手に入るなら、あの事件を解決した甲斐があったというものだ。」


「いやあ、まだ足りないのではないかと思ってね。何か、欲しいものは無いのかい。」


「ではコカインをください。」


優秀な探偵というものは得てしてコカインをやっているものだ。


「ああ。いくらでも持っている。すこし、分けてやろう。」




---あれから、私は幾度も彼とともに事件を解決したものだ。


その事件をこれからもつらつらと書いていく事にする。


暇だったら被害者がどのように殺されたのか推理してみてください。

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