5話 真実2
よろしくお願いします
新都庁、場所は靄さんの研究室。
俺、ノトス、靄さんはここに着いてからかれこれ30分は何も話してない。
目の前に置かれたコーヒーをちびちびと口の中に押し込みながら二人の様子を窺う。
ノトスはひどく退屈そうな顔で机の上のコップを眺めながらぼーっとしている。靄さんは先ほどまで逆立っていた髪をしっかりと整えており部屋の照明によって本来の綺麗な茶髪が際立っている。視線は座ってからずっと空中を見つめており話始める気配もない。
するとノトスがもう待てないとばかりに大きなため息吐き靄さんに向けて言う。
「なぁ……靄よ。いい加減話したらどうじゃ。わしも燈もお主が話すのを待っておるが一向に話はじめる気配がない」
「…………いや、すまない。頭の中で色々と整理していたんだ。……そうだな燈、まずは君に謝りたい。今まで君のことについて隠していた。本当にすまないと思っている」
真剣なまなざしで俺を見てから頭を下げてくる靄さん。
「…………正直まだ俺のことを隠してたことについて完全には納得してません。でも靄さんにも何か理由があることは分かってるし、それに靄さんにはいろいろと恩がありますから……」
笑顔でそう答えると靄さんは一瞬悲しそうな顔をするがすぐに俺から顔を背け「……すまない」と言う。
「燈……お主はやはりアカリなんじゃのぅ。自分の本当の気持ちをすぐに偽る。靄も燈が無理して笑っておることを分かっているのにそれに甘えて……なんじゃお主たちは本当に親子なのか?」
「息子だと思っているに決まってる!!」「母親だと思ってるに決まってるだろ!!」
ノトスの発言に反射的に反論してしまった俺の声にかぶるように靄さんも似たようなことを言う。
「ふむふむ。最初からそれだけ言えば良かったのじゃ。お主らは難しく考えすぎなのじゃよ。ただ一言お互いの気持ちを素直に言えばそれだけでいいんじゃ」
「「……………ふふふふ…………」」
ノトスの言葉に俺と靄さんは顔を見合わせ同時に微笑む。
「な、何がおかしいのじゃ?」
「だってノトスがそういうことを言う奴なんて思わなかったから、なんだか意外で……」
「いや、そうでもないかもしれんぞ。 こいつはこう見えて1000歳を軽く超えているらしいからな。私たちより人生経験がけた違いに多い」
「えっ!」
靄さんからもたらされた情報に衝撃を受ける。
だってノトスの見た感じどう考えても15歳の少女にしか見えない。
ついノトスのことをまじまじと見てしまう。
人形のようにひどく整った顔、部屋の照明に照らされ銀色に輝く白髪、柔らかそうな白い肌。
どう見ても1000歳を超えたおばあちゃんには見えない。
「確かにわしは齢1000を超えとるぞ」
「いやだって……」
「そこら辺の疑問は多分私がこれから説明する。これは燈、君の過去にも関わることだ」
「っ!!」
靄さんの口から俺のことについて語られる時が来た。
口の中に溜まった唾液を飲み込み、はやる心臓を落ち着かせながら靄さんの口が開かれる。
次話は明日投稿予定です