23話 崩壊への一歩
お久しぶりです!
おまたせしてすいません!
それから5分ほどして靄さんと霞が黒塗りのワゴン車に乗ってやって来た。
二人は車から降りて死んでいる怪物を見てギョっとしたがすぐに俺とノトスそれからユアの元に走ってくる。
「燈、倒したのか?」
「うん、なんとか……」
「なかなか手強かったがわしたちにかかればチョチョイのチョイじゃったな!」
まだまだ元気なノトスの言葉に苦笑いしか出てこない。
「おかーさん! それに燈も! もちろん説明してくれるんでしょう?」
額に青筋を浮かべた霞が俺と靄さんを目は笑っていない笑顔で立っている。
俺は靄さんを見ると目をつぶり少し考えている。
そして決心がついたのか俺に向かって静かにうなずくと俺に教えてくれたことすべて霞に話す。
淡々と事実を話した。俺のことも、ノトスのことも、異世界のことも、宇宙人のことも全て。
霞はずっと黙って聞いていたがすべてを話し終えるとただ一言。
「そんなことなら最初から話しなさいよ」
呆れたように言う霞。
正直殴られるかと思った。
俺も事実を知ったのはつい最近だが黙っていたことに変わりない。
しかし霞は平然といつもの調子で仁王立ちでそう言っただけだった。
「な、殴らないの?」
「なんで殴るのよ」
「いや色々と隠してたし、危険な目にも会わせたし……」
「別に隠してたのはお母さんもだし、燈のおかげで危険な目にも会ってないわ」
そう言われるとそうなんだけど……。
「それとも殴られたいの?」
「いやいや! 勘弁してください!」
拳を突き上げて殴ろうとしてくる霞。正直、さっきの怪物よりも怖い……。
「話は終わりましたか?」
すると靄さん達が乗ってきた車から知らない声が聞こえてくる。
「こ、この声は、まさか!」
隣にいるノトスが珍しく変な声を上げる。
「ノトス知ってる――」
「燈! 今すぐ逃げるのじゃ!」
「えっ?」
車から降りてきたのは金髪の美女。
一目見て明らかにこの世界の住人ではないことは分かった。
しかし靄さんの所で見た監視映像には金髪美女なんていなかったはずだが……。
悠然とこちらに向かって歩いてくる金髪美女。
そのたたずまいは見るものを魅了し周囲の空間さえ輝いて見える。
近くで俺の服を引っ張りながらノトスが何かを言っているがその声は認識できない。
すべての五感が金髪美女を捉えようとフル稼働してしまう。
そして目の前にその女神が降臨する。
月のように静かに微笑む女神。
そして……
「クチュ……」
「!!」
俺の唇に柔らかい感触が当てられる。
何が起こってるか理解が追い付かない。
そんな俺を追い打ちするかのように口の中にまでやわらかな感触が侵入してくる。
たっぷり10秒ほど口内を撫でまわされる。
唾液が糸を引き俺と女神を繋いでいる。
「な、な、な……」
「遅かったのう……」
ゆっくり俺を抱きしめる金髪の女神。
しかし俺の意識はそんな柔らかな感触よりも俺に向けられる明確な殺意に持ってかれる。
そこにいたのは般若だった。いや般若のような顔をした霞だ。
「やっと会えましたの……」
「あ、あの……」
どうやらこの人も俺のことを知っているらしい。多分ノトスの様子からアルトリアの住人なんだろうことは推測できる。
そんなことより今は般若……いや霞のことだ。
このままだと確実に殺される。
「私のこと……覚えていないですの?」
「い、いや……今はそれより後ろ……」
「ああ! やはり覚えていないのですね! 私と交した愛のひとときも!」
「っ!」
愛という言葉に反応する霞を見える。
「ちょっと待て霞! これは昔のことで……」
拳を握り顔を下にしてこちらに向かってくる霞。
そして金髪美女を押しのけると何も言わずに下を向いたまま固まる。
「あの……今のはっ?!」
言葉が遮られ再び唇に柔らかな感触が押し付けられる。
最初こそ押し付けるだけだったが次第に口の中に舌が入ってくる。
「ほうほう、なかなかやるのう」
ノトスが感心したような声を出している。
俺は霞の肩に手を置き少し強めの身体を押す。
唇から柔らかな感触が離れる。
「霞……」
霞は笑っていた。
そして隣りにいる金髪の女神に向けて一言。
「今は燈は私のだから。昔の女はふざけたことしないで」
そう言うと俺の手に自分の手を重ねてくる。
「…………」
女神は何も言わずにただじっと俺たちを見ている。
「おいアルフォンシア!」
「あらノトス様。お久しぶりですね。再会を喜びたいですが……これについて説明していただけますか?」
金髪女神の名前はアルフォンシアというらしい。
アルフォンシアは霞を指さしてこれと言う。
丁寧な言葉使いをしているが、まるでゴミを見るような目で霞を見ている。
「彼女は……今の燈の家族で……恋人じゃよ……」
ノトスがそう言った瞬間今度はアルフォンシアから殺気が出てくる。
「もうあれから5年も経っておるのじゃ……。それにアカリはもう燈として生きておる。それより今はこの状況をどうにかせねばなるまい。話はその後じゃ」
「……」
アルフォンシアは一度俺を見て微笑み、そして隣の霞を見るとそのまま黙ってノトスの方に行く。
「あーそろそろいいかな?」
靄さんがニヤニヤしながら声を掛けてくる。
俺たちは握ったままだった手を離しお互いに顔を背ける。
「霞があんな情熱的だったなんて意外だったな」
「お母さん……やめて」
ここからだと霞の顔は見えないが多分真っ赤になっているだろう。
俺も真っ赤になっているだろうな。
「さて再会を喜びたいですが……今はそういう時ではないようですね」
アルフォンシアが先程のことは何もなかったかのようにこちらに来て言う。
「貴様が最後の石を持っているのか」
そんな声が聞こえるのと同時に俺はどこかのビルの壁に吹き飛んでいた。
身体が裂けるような痛みが襲ってくる。
一体何が起こったんだ……?
「貴様の石をよこせ」
見えない何かが俺に声をかけてくる。
「お前は……誰だ?」
見えない何かに向かって問いかける。
みんながどこにいるのかわからない。俺はどこまで吹き飛ばされたんだ……。
「私はスノサ。この宇宙を滅ぼす者だ」
多分ラスボスが姿を現した。
次で一部完結予定です!
正直ぶっ飛んできてますが頑張りたいと思っております!
よろしくおねがいします!




