雫
誰かが言った「これ」じゃなくって
あの子が言った「それ」じゃなくって
自分の「これ」を感じて
手に入れて
ぶれることなく
この正面に向かって進みたかっただけ
進むスピードはなんだっていい
あくびを垂れるほどのスピードでも
思わず目をつむりたくなるほどのスピードでも
前へ前へと
自分の「これ」を握って進みたいんだ
そう
すっかり忘れてた
そう
すっかり奥深く
湿っぽいところへ片付けてた
引っぱり出せ
周囲が散らかったって
大きな音を立てたって
構わない
今だ
今引っぱり出せ
少しばかり湿気っているかもしれないけれど
風が乾かしてくれる
カラカラになるほどに
怖気づくなよ
わかってたことだろう
自分の「これ」をもうずっと前から持ってるんだ
見失って
無かったことにしてるのは自分だ
出せ
出せ
今だ
今だ
急げ
今しかない
きっと1秒後には
過去になる
きっと2秒後には
遠い過去だ
急げ
今しかない
もう嫌だろう
じゅくじゅくと湿っていく「これ」を置いておくなんて
もうごめんなはず
今しかない
急げ
誰かとか
あの子とか
関係ない
わかるだろ