第八章 モミジ、襲われる
待遇:(たいぐう)職場での地位や給料などに関する取り扱い方。また、ある地位に准じた扱いの格式。
モミジは、ある業者との交渉が決裂した。
その業者は頭に来て、「俺達のバックにはやくざがついているのだぞ!今後精々気を付ける事だな。」と脅してモミジの顔色を窺っていた。
モミジは顔色ひとつ変えず、「お言葉通り私も気を付けますが、そのやくざとやらにも肉食生物に襲われないよう気を付けろと伝えておく事ね。」と相手が脅迫してきた為に交渉を諦めてその場を去った。
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その業者は、脅しが通用しなかったモミジの態度に腹を立てて、“思い知らせてやる!”とやくざに連絡していた。
「モミジが俺達の縄張りを荒らしています。」とモミジの説明をして、「みかじめ料の名目で用心棒代を払っているので、それだけの事をして頂かないと困ります。何とかしないと、今後みかじめ料は払いません。」と伝えて最後に、「モミジは肉食生物に襲われないように気を付けろと言っていたので念の為に伝えておきます。」とモミジの対応を依頼した。
そのやくざは兄貴分に相談した。
兄貴分は、「確かその女は、俺達に挨拶もなしに勝手に売春している女だな。再三の警告を無視して俺達の事を馬鹿にしやがって何が肉食生物だ。どうせ犬だろう。いずれ始末しようと考えていた所だ。良い機会だから皆でその女をぶっ殺すぞ。」と指示した。
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業者から聞いたモミジの携帯に電話した。警戒されないように紳士的な喋り方で港に呼び出した。
やくざは業者が隠し撮りしたモミジの写真を預かっていた為に、ベンツ三台に分乗して隠れてモミジが来るのを待っていた。
モミジが約束の日時に港へ行き、透視力で周囲の確認をすると、モミジの写真を持ったやくざが銃を持って隠れている事に気付いた。
モミジは、“矢張り、そういう事か。”と意思波で戦闘艦に浅田を乗せて、透明シールドを張り上空で待機させた。
その間、やくざはモミジに仲間がいないか周囲の確認をしていた。
しばらくするとモミジ一人だと確認したやくざに突然ベンツ三台で囲まれ銃を突きつけられた。
「おい!こら!なめてんじゃないぞ!このガキ!この船に乗れ!」と押し込まれて沖に連れ出された。
やくざは、「ここだと、泣こうが喚こうが誰も助けに来てくれないぜ。お前も、もう少し大人しくしていれば長生きできたものを。万が一、誰かに引き上げられても身元が判明しないように、素っ裸で怪我させて出血させた上で海へ落としてやる。サメは血の臭いに敏感なので直ぐ来るぞ。」と笑っていた。
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やくざはナイフをモミジに突き付けて、「着ている服を全て脱いで素っ裸になれ。ナイフで刺して海に落としてやる。」と詰め寄ると突然、船が宙に浮いた。
やくざは何が起こっているのか解らず、驚いて船の周囲を確認していた。
上空に透明シールドを張り待機させていた戦闘艦に牽引光線で吸い込まれた。
戦闘艦の中で船が横倒しになるとモミジは肉食のペットを呼んで、「肉食生物に気を付けるように警告した筈ですけれども?」と笑顔で確認した。
やくざは、二メートルほどあるナメクジの形をした生き物を見て、「な、な、なんだ、この化け物は?」と見たことのない生物に慌てていた。
モミジは、「私の可愛い肉食のペットです。あんた達、このやくざ美味しそうでしょう。食べても良いわよ。」とペットに指示した。
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やくざは、「化け物!」と銃やナイフで対抗したが、テレジア星の肉食ペットやモミジには全く通用しなかった。
やくざは抵抗したが敵わず、次々と食べられていった。
やくざは仲間がテレジア星のペットに襲われて、悲鳴とともに血が噴き出し手足をもぎとられる様子を見てパニックになり、「お、お、落ち着いて話合おう。話せば解る。」と慌てていた。
モミジは、「あれっ?話合い?先程、話合いもせずに私をサメの餌食にしようとした人は誰でしたっけ?それがあなた方の流儀らしいので、私はあなた方を尊敬して、その流儀に従って話合いをせずに、サメではありませんが、同じ肉食の私の可愛いペットの餌食にしてあげます。」とやくざとは対照的に冷静でした。
やくざは、「肉食生物をペットにしているお前は何者だ!」と腰を抜かして失禁した状態でモミジの正体を知ろうとしていた。
モミジは、「おしっこ、ちびっているわよ。あなた方も犬や猫をペットにしているでしょう?犬も猫も肉食よ。同じじゃないの。私はアンドロメダ星雲から来たテレジア星人だと説明しておきます。」と説明していると、肉食ペットが襲う事を辞めた。
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モミジは、「あれっ?どうしたの?不味かった?」と何故ペットが大人しくなったのか解らなかった。
ペットは、「満腹です。」と返答した為に、モミジは取り敢えず食べカスを太陽に投げ込んだ。
残ったやくざ三人は、「俺達を地球に帰してくれ!仲間にも、お前を襲わないように説明するから。」と真っ青で体も声も震えていた。
別の部屋からモニターを見ていた浅田がスピーカーで、「モミジ、駄目だ、帰すな。ペットがいつでも食べられるように、どこかに閉じ込めておけ!」と指示した。
モミジは、やくざをペットと同じ部屋に閉じ込めて、「ペットが空腹になるまでの命です。助かりたければ、それまでにペットの弱点を考えるのね。下手に襲えば、空腹でなくても噛み殺されるわよ。」と忠告してペットに、「お腹が空いたら食べて良いわよ。」と指示して部屋を出た。
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地球に戻ったモミジは、やくざが使っていたベンツ三台を回収して太陽に投げ込み、その後今迄通り仕事をしていた。
業者はモミジがいつまでも無事なのでやくざに確認した。
やくざは、「モミジを始末に行った組員とは携帯も繋がらず、組員が使っていたベンツ三台を捜していますが行方不明です。必ず捜し出しますのでもうしばらくお待ち下さい。」と現状説明した。
業者がモミジに確認すると、「あのやくざとは話が着きました。もうあなたの前には二度と現れないそうです。」と説明した。
業者は頭に来て、やくざに苦情を訴えた。
やくざの組長は、「何で俺が怒られるんだ!小娘一人の始末もできないのかと馬鹿にされたではないか。裏切り者の始末は後にしろ!モミジの奴、俺達に恥を掻かせやがって、楽に死なせたのでは腹の虫が治まらん。拉致してなぶり殺しにして苦しみながら死なせてやる。」と怒りながら組員に指示した。
組員は、モミジの行動パターンを調べて襲う計画を立てていた。
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その数日後、組員はモミジに用心棒などなく、一人である事を確認の上、車ではねて抵抗力を奪い拉致しようとしていた。
モミジは早朝売春が終わり、徒歩で帰宅途中、低速で車が後から来ている事を透視力で確認した。
チャンスを見て轢き殺そうとしているのだと判断して、人気のない工事現場へと向かった。
組員は、モミジが一人で人気のない場所に向かった為にチャンスだと判断した。
その車は急にスピードを上げてモミジに向かって来た為に、気付かない振りをして、そのまま角を曲がり鉄骨に変身した。
組員もスピードを上げた状態で角を曲がった瞬間、目の前に鉄骨があった為に、ブレーキを踏む間もなく鉄骨と正面衝突した。
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やくざが気絶している間に本物の鉄骨と入れ替えて組員に、「大丈夫ですか?今、救急車を呼びますので確りして下さい。警察にも通報しておきます。」と警察に通報しようとすれば、どんな反応するか様子を見ていた。
組員は警察へ通報されると顔も名前を知られていて目を付けられていて都合が悪い為に、「いや、単独事故なので警察への通報の必要はありません。」と慌てて止めた。
モミジは、「いえ、私が近道しようとしてこんな場所を歩いていた為に、私を避けようとされて事故を起こされたのですよね。申し訳ないわ。それにここの工事現場の責任者にも鉄骨をこんな場所へ置かないように警察から警告して頂かないといけないのでね。」と警察への通報は必要だと説明して様子を見ていた。
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組員は困り、「いや、本当はあなたを避けようとしていたのではなく、居眠り運転していた為に、急ブレーキの痕がない事からそれが警察にばれると都合悪いのが本音です。救急車だけお願いします。」と依頼した。
モミジは、「居眠り運転にしては、良くこの角を上手く曲がれましたね?」とどこまで嘘が続くか面白くて問い詰めた。
組員は、“くそ!五月蝿いガキだな!体を車に挟まれてなければ、こんなガキ、半殺しにしてやる所だ。”と思いながら、「居眠り運転と言っても、うとうとしていただけで、曲がろうとしていた角と勘違いしてスピードを落とさず慌てて急ハンドルしたので鉄骨と衝突しました。」と説明した。
モミジは、“苦しい説明やな。そろそろ勘弁してやるか。”と笑いを堪えながら、「解りました。救急隊員には、車に挟まれて動けないと連絡しておきます。」と返答して救急車を呼んだ。
警察ではないので車の衝突面と鉄骨を調べないだろうと考えていた。
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救急車が到着するまでの間に、「勤務先はどこですか?それと家族にも連絡しなければ心配していると思うので教えて下さい。」と依頼した。
組員は、“本当に五月蝿いガキだな!救急車さえ呼んでくれれば用はないから早くどこへでも行け!しかし俺がどこにも連絡しなければ心配して、矢張り警察に連絡すると言いだすと困るな。兎に角組事務所に連絡するか。”と困っていた。
組員は、「いや、連絡は私がするので心配せずに行って下さい。」と車に挟まれて不自由な体で、何とか携帯を取り出し連絡しようとしていた。
モミジは、“アドレス帳から電話されると電話番号が確認できないわ。”と携帯の電波を乱して連絡できないようにした。
モミジは、「今の事故で壊れたようですね。私の携帯を使って下さい。」と携帯を渡した。
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モミジの携帯には勿論、組事務所の電話番号は登録されてない為に、電話番号を直接入力した。
モミジが後向いている間に組員は、電話番号を隠しながら組事務所に連絡した。
テレジア星人は後も良く見え、しかも透視力もある為に、いくら電話番号を隠してもお見通しでした。
携帯の会話内容も確認可能な為に、組員が所属する組事務所である事が確認できた。
モミジは、電話番号とUFOからの逆探知とで組事務所を特定した。
組員は発信履歴を削除してモミジに携帯を返した。
平日で時間の合間を縫って組事務所へ行き、組員が所属する組事務所である事を確認の上、事務所にいた組員全員を戦闘艦に拉致してペットの餌として閉じ込めた。
そこで組員たちは裏切者だとばかり思っていた組員の変わり果てた姿を見てすべてを理解した。
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業者はやくざと電話連絡が取れなくなった。
業者が電話を切った後にモミジが業者に電話して、「肉食生物に気を付けろと忠告したでしょう。」と笑っていた。
業者はモミジに、「殺したのか!そんな事をしてただで済むと思うなよ!」と犬ではなく猛獣でも買っているのかなと感じていた。
業者はモミジに縄張りを荒らされている他の業者と連絡を取り対策を立てていた。
ある業者が、「その女社長には得体のしれない肉食生物が付いているのか?それだったら商売ができないように踊り子を襲え!踊り子を襲っていれば命が欲しいだろうから退職するだろう。踊り子がいなければ商売できないだろう。」と提案した。
話し合いの結果、実行する事になった。
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モミジは業者が踊り子を狙っていると知ると、ショーが終わると踊り子の姿で外出していた。
数日後、踊り子がモミジだと知らない業者は、「踊り子を襲ったチンピラも全員やられた。踊り子が辞めるどころか新顔が次々と入って来ている。うちの踊り子にも確認したが、踊り子のヘッドハンティングをしている様子もなく募集もしていない。うちの踊り子に中途入社の面接に行かせたが断られたらしい。どこから踊り子を連れて来ているのか不明だ。美人女優のようにスタイルも良く美人で若い踊り子を一体どこから?」と疑問に感じて他の業者とも色々と打合せしたが、その点は幾ら調査しても不明でした。
業者は、踊り子を高額で引き抜こうとした。
モミジは、引き抜きの商談は時間が掛かりそうでしたので、「待遇は今のほうが良いのでその件は断ります。」と相手にしなかった。
引き抜きに失敗した業者は、モミジは踊り子にいくら支払っているのだろうと引き抜きは諦めた。
放火など色々と手を尽くしたが、どれも上手く行かず、逆に放火しようとしたチンピラと連絡が取れなくなり、業者もモミジには敵わないと判断して諦めた。
次回更新予定日は4月30日です。