第四章 松田長官、業務中に襲われる
呑気:(のんき)気が長いこと。気分や性格がのんびりしていること。物事に気をつかわないこと。
邪魔:(じゃま)さまたげること。さまたげとなること。また、そのさま。さわり。支障。
手榴弾:(しゅりゅうだん)手で投げつける小型の爆弾。
宥める:(なだめる)人の心・精神状態などを穏やかな状態にする。和らげる。静める。
流暢:(りゅうちょう)ことばがなめらかでよどみのないこと。
観光旅行の護衛ではサクラに振り回されて散々でしたので、業務中は馬鹿にされないように確り護衛しようと萩原リーダー率いる警備員達は意気込んでいた。
松田長官から、「護衛はサクラに依頼する。」と連絡があった。
萩原リーダーが確認すると、松田長官の近くには堅物秘書がいるだけで、サクラらしき人物は見当たらず、観光旅行の時に松田長官に同行していた女性も見当たらなかった為に、“あの女性がサクラではなかったのか。ではサクラは何処にいるのだろう?”と不信に感じて心配になり護衛する事にした。
堅物秘書と観光旅行の時に同行していた淫らな女性とは、体型や身長も異なる為に変装ではないと判断して、性格も異なる為に二人が同一人物だとは全く想像できず、ましてや彼女がサクラだとは萩原リーダーも夢にも思いませんでした。
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隣のビルに狙撃者が潜み松田長官を狙っていたが、サクラが間に立ち狙撃のチャンスがなかった。
狙撃者は、“あのブタ女、邪魔だな。”とライフルを構えて狙撃のチャンスを待っていた。
しばらくすると松田長官がカバンを持って席を離れた。
狙撃者は外出すると直感して、仲間に連絡し、狙撃ポイントを捜している時間もなかった為に、松田長官がビルから出て来た所を上から狙えば、周囲に人がいても狙撃可能だと判断した。
松田長官は、透視力で確認したサクラの忠告により、地下駐車場で公用車にサクラと共に乗った。
狙撃者は、松田長官が使用している公用車は、ベンツなどの外車に近く、鉄板で覆われていますが、窓ガラスなどは防弾ガラスでないとの情報を掴んでいた為に、逆に上からだと狙撃不可能でした。
狙撃者から連絡を受けた仲間が近くに車を停車させ待機していて、本部と連絡を取りながら尾行していた。
走行ルートの見当を付けて、ヘリで先回りして狙撃者を数ヶ所に待機させ、今迄何度も暗殺に失敗している為にヘリも数台準備していた。
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高架道路を走行する秘書と松田長官が乗車している車の後を、警備員達の覆面パトカーが周囲を警戒しながら走行していた。
サクラから無線が入り、「相変わらず呑気ね。ドライブしている場合じゃないでしょう?左前方、榎本ビルの屋上に狙撃者がいるわよ。」と警告した。
警備員達は、“えっ?榎本ビルはもう少し先じゃないか!何故そこまで解るのだ?”とサクラがどうやって確認したのか謎でした。
萩原リーダーの指示で、一台の覆面パトカーが松田長官の車の左前方に回り、狙撃を阻止し、別の覆面パトカーが榎本ビルへ向かい、銃撃戦の末に狙撃者を逮捕した。
萩原リーダーは警備員達に、「ご苦労さま。」と労をねぎらっていると、再びサクラから無線が入った。
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「本当に呑気ね。まだ終わってないわよ、何がご苦労さまよ!ヘリが接近している事に気付かないの?ヘリに乗っている人はマシンガンを所持しているわよ。」と警告した。
萩原リーダーは、現状では狙撃を阻止できないと判断して、赤色回転灯を点灯させてスピーカーで松田長官の車を幹線道路から脇道へと誘導した。
松田長官はサクラと相談して、その誘導に従った。
人が少なく、建物でヘリから狙撃困難な廃工場へと誘導した。
狙撃が困難だと判断した敵はヘリを着陸させて戦闘態勢になった。
警備員達も戦闘態勢になり、彼らと激しい銃撃戦を行っている間に、萩原リーダーは警視庁に応援依頼していた。
その間に、松田長官の車が別の通路から幹線道路に向かった為に、彼らの一部がヘリに乗り追跡しようとしていた。
その様子を確認した萩原リーダーが、“警視庁の応援が到着していない。離陸を阻止できず、松田長官の護衛ができない。”と慌てているとサクラから無線が入った。
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「慌てなくてもヘリはもう飛べませんから安心してね。ヘリの事までは余裕がないみたいでしたので、こちらで対処しておきました。あとの護衛は私に任せて、ゆっくりと銃撃戦でも楽しんでいてね。あなた方はいてもいなくても同じだから。」とまたサクラに馬鹿にされた。
無線を聞いた小百合は、先日から何度もサクラに馬鹿にされて、「一寸、それどう言う事よ!」とついにプッツンした。
サクラは、「私が手取り足取り教えないと何も解らないのね。情けない警備員ね。良く考えれば解るでしょう?何故、彼等は松田長官が外出すると気付いたの?」と小百合にヒントを与えた。
萩原リーダーは、“確かに私もその点は疑問でしたが、サクラさんは何か知っているのだろうか?”とサクラの情報に期待していた。
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小百合が、「それは何処からか情報が漏れたのでしょう?私達の護衛とは関係ないわよ!」と小百合達の護衛のミスのような表現をされたのでヒステリーを起こした。
サクラは、「小百合さん、ヒステリーを起こしている場合じゃないでしょう?もっと冷静になって下さい。先程職場で業務中、隣のビルに狙撃者がいて松田長官を狙っていた事は気付いていましたか?先日は犯人が焦れば一般人に被害が及ぶ恐れがあった為に、あなた方に知らせて早く逮捕させようとしましたが、まさか一般人を避難させずに銃撃戦を始めるとは思わなかったわ。今回職場に一般人はいなかった為に、先日のようなことにならないように、あなたがたに連絡せずに、しばらく様子を見ていました。その狙撃者は、狙撃のチャンスがなかったというか、私が作らせなかったのですが、狙撃できずにいると松田長官が外出する事に気付いて仲間に連絡したのよ。情報が漏れたのではなく、あなた方のご立派な護衛で狙撃者を見落とした事が原因なのに、それを他人の責任にするとはあなたもご立派な警備員ね。私がいなければ松田長官は外出する前に狙撃されていましたよ。それでよく、でかい顔して警備員だと言えるわね。」と笑われた。
小百合は、「席を離れたから外出すると気付いたとでも言うの?トイレかもしれないじゃないの!」と反論した。
サクラは、「小百合さんはトイレに行く時に、外出用カバンを持って行くのですか?トイレットペーパーなど必要な備品はトイレに設置されているでしょう?男性は女性のように化粧しない為に、何をトイレに持って行くのよ。小百合さんはトイレでピクニックでもするのですか?」と馬鹿にした。
萩原リーダーは、“そうか。そういう事だったのか。松田長官がカバンを持って席を離れた為に外出すると気付いたのか。”とサクラが優秀なので感心していた。
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彼等を確認していると、ヘリで飛び立とうとしていた彼等は、確かにエンジンが反応しないようでした。
萩原リーダーは、警備員達と無線で連絡を取り合いましたが、誰もサクラを確認していませんでした。
やがて警察の応援パトカーと機動隊が到着して、彼等全員を逮捕したが、彼等もサクラを確認していなかった。
萩原リーダーがヘリを確認した所、エンジンが跡形もなく、粉々に粉砕されていて、サクラがいつの間に、どうやって、ヘリのエンジンを粉砕したのか、ヘリの近くに人影はなく、そのチャンスもなかった筈なので解らず、サクラの正体も解らず、またサクラに出し抜かれた。
まさかサクラが植物の本領を発揮して、足の裏から木の根のような突起を出して地中をヘリまで伸ばしてヘリのエンジンを絶対零度にして粉砕したとは夢にも思わなかった。
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彼らを逮捕して本署に連行する為に護送車に乗せようとした時、彼らが薄笑いした事を萩原リーダーは見逃さずに問い詰めた。
彼らは、「ヘリはこれだけだと思ったら大間違いだぜ、狙撃者もな!俺達にとって、あの松田長官は邪魔なので始末しなければならないのでね。今頃は死体になっていると思うがな。」と時計を見て笑っていた。
萩原リーダーは驚いて、「何だと!」と慌てて松田長官の秘書に連絡していた。
サクラは、「何もないわよ。松田長官は無事です。詰まらない事で電話しないで下さい。」と電話を切った。
萩原リーダーは、“これから襲われる所かもしれない!”と判断して、慌てて再度連絡したが、秘書は携帯に出ませんでした。
萩原リーダーは、「あのコチコチ頭!何考えているのだ!くそったれ!」と焦っていた。
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パトカー警官の一人が、「すみません、これ関係あるかどうか解りませんが、先程ヘリが二台墜落して、一台の乗組員は手榴弾を所持していた為に、墜落の際にピンが抜けて爆発炎上して即死でした。もう一台の乗組員は、マシンガンを乱射しながら逃亡して、現在警察が付近を捜索するとともに、車を盗難して逃走した可能性もある為に非常線を張っています。それと、数箇所のビル屋上で、ライフルを持った男が数名気絶していたらしいです。サクラと名乗る女性からの通報で駆け付けた警察官からの報告によると、何故か彼等の体は冷たく冷え切っていて、凍死寸前だったそうです。携帯番号から通報者のサクラの身元を確認しようとしたのですが、契約者は特殊部隊の松田長官で使用者は極秘の為、教えて頂けませんでした。」と報告した。
それを聞いた萩原リーダーは驚いて、サクラは超一流のプロだと判断して、松田長官が特殊部隊の長官を兼任している為に、サクラはその隊員だと判断して警備員達に、「護衛は我々の専門なので、特殊部隊の隊員に馬鹿にされないように頑張ろう。」と葉っぱをかけていた。
まさかサクラが宇宙人で、指から熱線をヘリに照射してエンジンをオーバーヒートさせて墜落させ、ビルの屋上の狙撃者には指から冷凍光線を狙撃者が凍死しない程度に照射して気絶させたとは夢にも思わなかった。
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小百合は、「リーダー、サクラ一人で護衛しながら狙撃者の位置まで特定できるとは思えません。何か特殊な装置を使用しているのではないですか?先日、サクラの正体に気付いたような事を仰っていましたが、サクラは何処にいて、どのように確認したのですか?」とサクラの事を喋ろうとしないリーダーから聞き出そうとしていた。
萩原リーダーは、「あの時、私がサクラだと思った人物は特殊な装置どころか無線機も所持していなかった。だから確信が持てなかったのだが職場にはいなかった。私がサクラの変装に気付かなかったのか、サクラは私が考えている人物とは違うのか解らない。もう少し時間を下さい。」と断言を避けた。
小百合は、「恐らく何処かに隠れていたのだと思います。先日と今日とでは、松田長官の近くに同一の女性はいませんでした。」と興奮して引き下がろうとしなかった。
萩原リーダーは、「女性だと決め付けるのは危険です。私達はサクラの声しか確認していません。ボイスチェンジャーを使った可能性もあり、外観は変装して誤魔化す事も可能です。それで私も見落としたのかもしれません。兎に角、あれだけの事ができるのですから超一流のプロだと思われます。そう簡単には解らないと思います。」と興奮している小百合を宥めた。
小百合は、「特殊な装置を使用していないのでしたら何人か仲間がいるのではないですか?とても一人では不可能です。」と落着く様子がなかった。
萩原リーダーは、「先日も今日も、松田長官の近くにはそんな人物はいませんでした。付近には私達が護衛の為に潜んでいましたが、そんな人物は確認できませんでした。複数人数とも考えにくく、特殊な装置も確認できていません。サクラの事は私が調査するので皆さんは護衛に集中して下さい。」と小百合を護衛に集中させようとしていた。
萩原リーダーは、“小百合の奴、サクラの事が気になるようだな。小百合は女性警備員としてはトップクラスなので、サクラと張り合うつもりかな?悪いが、小百合とは力の差があり過ぎるな。これだけの事ができる人物は今迄聞いた事がない。流暢な日本語を喋っていた為にアメリカ軍でもなさそうだ。サクラは何者なのだろう。”と萩原リーダーもサクラの正体が解らなかった。
次回投稿予定日は4月17日です。