第二章 テレジア星人、サクラ現れる
兼任:(けんにん)二つ以上の職務を兼ねること。兼務。
征服:(せいふく)力の強い者が、相手を従わせること。
企む:(たくらむ)思いたつ。計画する。多く、良くないことを計画する場合にいう。
掴む:(つかむ)機会や重要な点などをしっかりととらえる。
うんざり:物事に満足しすぎたり、同じことが続いたりしてあきあきするさま。
撒く:(まく)同行者や仲間の目をくらまし、故意にはぐれる。
暫く:(しばらく)少しの間。一時。ちょっと。
突然:(とつぜん)にわかであるさま。物事が急におこるさま。
扮する:(ふんする)俳優がその役の人物の姿に装う。
割り込む:(わりこむ)割って中にはいりこむ。押し分けてはいる。無理に中にはいる。
刺客:(しきゃく)人を暗殺する人。殺し屋。
五月蠅い:(うるさい)ものが多くつきまといすぎて煩わしい。うっとうしい。
偶に:(たまに)めったにないさま。まれであること。
罰:(ばち)神仏が、人間の悪い行いを罰して、そのこらしめ、つぐないとして苦しみを与えること。また、その苦しみ。天罰。
プライベート:私的なさま。個人的。
偶々:(たまたま)その場合とか機会とかが偶然であるさまをいう。
踏む:(ふむ)前に進もうとして足で下のものを押さえるようにする。
勘弁:(かんべん)他人の誤りを許すこと。
敵意:(てきい)敵対しようとする心。害を加えようとする心。
危害:(きがい)生命、身体、物品などをそこなうような危険なこと。
呪縛:(じゅばく)まじないをかけて動けなくすること。
異様:(いよう)普通と違って様子が変なこと。特別に変わっているさま。
敵う:(かなう)匹敵する
証拠:(しょうこ)一定の根拠に基づいて、事実を証明すること。証明のよりどころとすること。
捕獲:(ほかく)とらえること。いけどること。とりおさえること。
収納:(しゅうのう)棚や押入れなどに、現在不要の物をしまいおさめること。
徹底的:(てっていてき)物のすみずみまでゆきとどくこと。残るところなくゆきわたること。
滑る:(すべる)足を空にとられる。足もとがつるつるする。
崖:(がけ)山や岸などが険しくそばだっている所。
兎に角:(とにかく)あれこれ。さまざま。とかく。とにもかくにも。
一寸:(ちょっと)時間、物事の量や程度がわずかであるさまを表す語。
裏腹:(うらはら)正反対なこと。また、そのさま。あべこべ。うらおもて。
相子:(あいこ)引き分け
都合:(つごう)ぐあいのよいさま。また、そういう場所。
誤魔化す:(ごまかす)人をあざむく
拘る:(こだわる)すらすらと行かないで、ひっかかったりつかえたりする。
他意:(たい)ほかの考え。他人には知らせないで隠している考え。
付き纏う:(つきまとう)いつもそばを離れないでつき従う。
翻訳:(ほんやく)ある国の言語・文章を同じ意味の他国の言語・文章にうつすこと。
恥:(はじ)面目を失うこと。名誉を傷つけられること。侮りを受けること。
掻く:(かく)(恥や、できものなどを)身に受ける。
認知症:(にんちしょう)いろんな事が認知できなくなる病気。ボケ。
解雇:(かいこ)使用者が労働者との雇用契約を一方的に解除してやめさせること。首切り。
遭遇:(そうぐう)思いがけず、めぐり合うこと。不意に出合うこと。であい。
虐め:(いじめ)弱い者に対して意識的に精神的または肉体的な苦痛を与える。苦しめる。
厄介:(やっかい)面倒なこと。手数のかかること。わずらわしいこと。
捏造:(ねつぞう)事実でないことを事実のようにこしらえていうこと。ないことをあるようにいつわってつくりあげること。
淫ら:(みだら)性的興味や性欲についてつつしみがなく、品位を欠いているさま。
匿う:(かくまう)人や物を見つからないように、こっそり隠して置く。人を、その人を捜している者に見つからないように保護してやる。
地球では政府高官で、総理大臣直属の特殊部隊の長官も兼任している松田長官が、国際問題の対応や世界征服を企む悪の組織と戦っていた。
特殊部隊の長官という立場から各種機密情報を掴んでいて、スパイ等に拉致されたり暗殺されたりする可能性がある為に、いつも警視庁が護衛していた。
休日も護衛の目があり気が休まらない為に、“たまの休日ぐらい一人でのんびりしたいよ。”とうんざりしていた。
松田長官は、“休日も自宅にまで護衛が来て落ち着かないな。次の休日は確か萩原リーダーの公休日だな。護衛を撒いて山登りにでも行くか。”と考えていた。
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当日、警視庁の護衛を休日の特殊隊員達の協力で撒く事にした。
松田長官は山登りだとは気付かれないように正装で、車のトランクに山登りの装備や登山服などを入れて外出した。
護衛は松田長官が車で外出した為に、覆面パトカーで護衛していた。
しばらく走行していると、突然松田長官と護衛車の間に、特殊隊員扮する数台の暴走族が割り込んできた。
護衛達は、「真っ昼間に何故暴走族なのだ?長官を狙った刺客の可能性がある。長官を守れ!」と慌てて暴走族から松田長官を守ろうとして、赤色回転灯を点灯させて暴走族の対応をしている間に松田長官の車を見失った。
公休日の萩原リーダーに緊急連絡して、松田長官の向かっていた方向を中心に捜したが発見できず、萩原リーダーの指示で、松田長官の自宅に護衛を一人待機させて引き上げた。
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松田長官は、“やっと五月蝿い護衛を撒いたか。私だってたまには一人で好きな山登りを楽しんでも罰は当らんだろう。”とプライベートで山登りを楽しんでいた。
その時に、たまたまテレジア星から事故で飛ばされて来たサクラを助けた。
テレジア星の重力は強大で、個体の生命体は存在できず、全てアメーバーのような流動体でした。
サクラは液体のように溶けていた為に、気付かずに松田長官が踏むと、その液体は人間の女性の姿に変化した。
松田長官はその様子に驚いて、“護衛の次は化け物か?勘弁してほしいよ。”と慌てて荷物を降ろして登山ナイフを取り出して身構えた。
松田長官のその様子を確認するとサクラは、「私はテレジア星から来たサクラです。あなたに敵意はなく、危害を加えるつもりもありません。」と松田長官の様子から警戒しているようでしたので、自己紹介してテレジア星人や呪縛について説明した。
サクラは重力が異様に小さく、動物や植物もテレジア星とは全く異なる為に、テレジア星でない事に気付いて、自己紹介の時に自分はテレジア星人だと付け加えてその説明もした。
サクラから説明を聞いた松田長官は、サクラは体の形状を変えられるようなので、一人で登山ナイフだけで戦うとサクラに敵いそうもなく、しかも他の天体から地球に来る科学力がある為に強力な武器を持っている可能性もあると判断して戦う事を避けた。
「何の証拠もない呪縛の事は信じられない。今の説明によると君は宇宙人ですね。今直ぐに地球から立ち去りなさい。さもないと自衛隊に連絡して君を捕獲する事になります。」と忠告して登山ナイフを収納してその場を去った。
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しばらく歩いて松田長官は、“この事を自衛隊に連絡して、私の特殊部隊と共同でこの付近を徹底的に調査してサクラを捕獲し、地球へ来た目的は説明通りなのか別の目的があるのかや、その科学力等を徹底的に調べよう。”と考えながら歩いていると、その事に気を取られて足元が不注意になり足を滑らせて、「ウワー」っと悲鳴と共に崖から転落した。
松田長官を近くで見守っていたサクラが、転落の途中で松田長官を受け止めた。
サクラは、まだ松田長官に信頼されてない為に、「受け止めました。大丈夫ですか?」と不安がらせないように笑顔で確認した。
「ありが・・・・ん?宙に浮いている!」と驚いて周囲を見渡し、何がどうなっているのか確認しようとしていた。
「そんなに驚いた顔をしなくても、先程説明したように私は空を飛べます。」と松田長官を落着かせようとしていた。
松田長官は、正体不明のサクラに捕まえられた為に身の危険を感じ、「解ったから兎に角離しなさい!」と焦っていた。
サクラは呪縛の為に逆らえず、「あっ、そう。」と松田長官を離した。
松田長官は、まさかこんなところで離されるとは思っていなかった為に、「えっ?」と目を丸くして驚いて、慌ててサクラの足に捕まった。
「うわっ!一寸待て!こんな所で離すな馬鹿者!何とかしろ!」とサクラの予想外の行動に焦っていた。
サクラは松田長官を再び抱えて、「先程説明したように私は呪縛の為に、“離しなさい!”の指示には逆らえませんでした。」と松田長官とは裏腹に冷静でした。
「解りました。取り敢えず地上に降ろして下さい。」と指示した。
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サクラは松田長官を地上に降ろすと一安心した松田長官から、「私は今、君に助けられたのだからこれでお相子です。命を助けて頂いた君を捕獲したくない。もう呪縛の事は忘れて地球を去りなさい。」と再度地球を去るように忠告された。
「私は地球を去るつもりはなく、いつもあなたの近くにいて、今のようにあなたがピンチの時にはいつでも助けます。」と地球を離れる意思がない様子でした。
“先程は私の指示に逆らえないと説明しておきながら、地球を去れという指示には逆らうのか。都合の良い呪縛だな。本当かどうか怪しいな。何か別の目的の為に誤魔化そうとしている可能性があり、サクラには油断できないな。いつ迄私の傍にいるのだろう?いつでも助けに来るとは、丸でアラジンの魔法のランプに出て来る怪人だな。”とサクラに気を許さなかった。
「私を助ける回数に限りがあるのか?例えば、三回助けたら君は地球を去るのか?」といつまで傍にいるのか確認した。
「何故回数に拘るのですか?回数に関係なく、あなたが生きている限りいつまでも傍にいて、あなたを援助します。」と一生松田長官の傍を離れる様子がなかった。
「いや、別に他意はない。ただ地球に似たような童話があった為に確認しただけです。」と困っていた。
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“まいったな、私に一生付き纏うのか。勘弁してほしいよ。”と今後職場や家庭にサクラが来れば、どうなる事かと悩んでいた。
「君は私に敵意はないと言っていたが、その保証はどこにもない。それに言葉が通じる事自体不自然だ。同じ地球人同士でも外国人とは言葉が通じない事が多いのに、何故、宇宙人の君と言葉が通じるのだ?先程も確認したように、君の説明は不自然で何の証拠もない。到底信用できない。このまま地球に滞在するのであれば、自衛隊に連絡して君を捕獲する事になります。安全が確認されるまで君は捕獲状態になります。」とサクラを、なんとか地球から追い出そうと説得していた。
「私は脳波に直接働きかける自動翻訳機を携帯している為に、言葉を持っている知的生命体とは言葉が通じます。テレパシーのようなものだとご理解下さい。それと自衛隊とは何ですか?軍隊の事ですか?警察の事ですか?どちらにしても、私は今見せたように体の形状や大きさを自由に変化させる事が可能です。私が地球の弱小動物に変身すれば、その自衛隊とやらに笑われて恥を掻くわよ。」と反論した。
松田長官は、“確かに、町中でよく見掛ける犬や猫を捕まえる為に、武装した自衛隊員を出動させると笑われるだけでは済まず認知症だと判断されて解雇されるな。”と自衛隊を出動させられない為に、どうすれば良いのかと悩んでいた。
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「捕獲しなければ、私達地球人は宇宙人と遭遇した事がない為に、君は世間の見世物になるか怖がられるか、あるいはその他予想もしない事が起こる可能性があります。君も困るだろうし私も困ります。」と説得を続けた。
「何故困るのですか?」とその理由が理解できない様子でした。
「私が宇宙人と一緒だと噂が広まれば、マスコミなどから職場や家庭に引っ切りなしに問い合わせの電話や訪問が相次ぎ、仕事に影響が出て子供も虐めに遭い家庭も崩壊するかもしれない。このまま君が地球を去れば、何も問題は発生しない。だから先程も説明したように、今直ぐに地球から出て行ってくれないか。」と再度依頼した。
「何度も言いますが、私は体の形状や大きさを自由に変化させられます。宇宙人だとばれないようにして、いつもあなたの傍にいます。」と説明した。
「迷惑なんだ。付いてくるな!」と怒り出して山登りを再開した。
「迷惑にならないように変身しますから安心して下さい。」と松田長官の傍から離れる様子がありませんでした。
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“厄介な事になったな。”と困り、仕方なくしばらく様子を見る事にした。
サクラは命の恩人になった松田長官に寄り添い、片時も離れなくなった
サクラから連日説明を聞いていた松田長官は、その内容が現実離れしていて、とても信じられなかった。
サクラが説明の為に、体の形状を恐竜や犬などに変化させる様子を目の当たりにして腰を抜かした。
更に、UFOで月や火星に着陸したが、大気圏を離脱した時に体が宙に浮き、月や火星では体重が軽く感じ、その重力を体験して驚いていた。
また、アメリカのホワイトハウスやロシアの赤の広場などに数秒で移動して、透明シールドを張れば、着陸しても誰も気付かなかった事にも驚いていた。
その後、タイムマシンで自分の子供の頃の動画を見せられて、その内容の一部には秘密にしていた動画もあった為に捏造できるものではなかった。
このような事があり、その科学力やサクラは肉体的に強靭である事を知り、このUFO一機で地球征服が可能だと判断して、もし彼女に敵意があれば、こんな事はしないだろうと考えて、“地球と全く異なった環境で生まれ育った宇宙人だから、地球人と全く異なっていても不思議ではない。逆に同じ方が不自然だ。”と呪縛も含めてサクラの事が信じられるようになってきた。
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最初、サクラは天井に貼り付いたり犬や猫に変身したりして近くにいたが、信じられるようになってからは人間の姿で近くにいた。
仕事中は、背の低い少し小太りな体系で融通の利かない堅物秘書として松田長官付き秘書として採用し、何処へ行く時も同行していた。
松田長官が現場に出る時には、鳥に化けたりUFOに透明シールドを張ったりして近くで見守っていた。
松田長官が危機の時には、何故か敵は晴天で雷雲がないにも関わらず、突然、雷の直撃を受けたり鷹や犬などに襲われたりしていた。
プライベートでは、若い美人の恋人だと、いつも一緒でも不自然ではないと判断して、細身で長身の淫らな美人の恋人に変身させていつも一緒にいた。
自宅には家族がいる為に、「極秘の為、詳しく説明できないが、事件に巻き込まれた幼子を匿います。仕事中は別の隊員に護衛させる為に一緒に通勤します。食事は職場の食堂で済ませて帰宅する為に不要です。朝食も夕食同様、不要です。」と説明した。
幼子にしたのは、寝室や風呂が一緒でも不自然ではなかったからでした。
極秘にしたのは、奥さんや子供達に口止めするのに便利だからでした。
食事は、サクラは肉食で、生野菜や生の果物を食べられない為に、家族に不信に思われる可能性があり、そのようにしたのでした。
(地球人からは、三人とも別人に見える。)
このようにして、サクラはいつも松田長官の傍に寄り添っていた。
松田長官は、“トイレも子供や男性に変身して入ってくるのか。護衛は何とか撒けたが、サクラには透視力がある為に撒けそうにないな。”と諦めた。
松田長官は、今後犯罪組織に特殊部隊が対応する事に困難な場合を想定して、サクラを松田長官直属の特殊隊員として登録し、そのような事態が発生した時にはサクラの力を借りても、他の隊員に不信に思われないようにした。