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週明けて。

いつもどおり、無難に何事もない土日を過ごし、月曜の朝に至る。

家から会社までは徒歩10分なので、朝は余裕がある。

大体、7時30分に起きて、パンと卵、ベーコンを焼き、インスタントコーヒーと牛乳でカフェオレをつくる。

顔を洗い、ひげを剃り、整えても乱れる髪の毛は水を付けて適当に寝ぐせを治す。

ご飯を食べながらネットニュースを覗き、ざっと朝の情報収集をする。いつもの習慣だ。


"大学入試センター試験廃止"


“日銀役員不正に受け渡しか"


"ソニーがかける新型ゲーム機"


"笑い飯両方の浮気が発覚"


"イチロー今季8度目マルチ"


ふと、あるトピックで目が留まった。


”重力子を確認、京都大学高杉教授ら”


重力を伝えるといわれている重力子グラビトンは、理論では存在しうると言われていたが、実際に観測されたことはなかった。

しかし今回、京都大学理学部宇宙物理学教室の高杉教授らと欧州素粒子原子核研究機構の研究チームは、重力子を発見したとの論文を米ネイチャー誌に発表した。

高杉教授らは、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)でヒッグス粒子を利用したブラックホールに関する実験中、偶然にも発見された。

重力子は我々が感じている重力を作っているものとされている。

宇宙物理学に詳しい北海道大学物理学科の山下准教授は、「もしこの論文が真実なら、物理学者の念願である力の統一理論の完成へ一歩近づくことになります。非常に大きな発見です。」と語っている。


僕はかなりの宇宙ファンだ。科学雑誌はは欠かさず読むし、ブルーバックスの宇宙系の本は沢山読んでいる。なぜこんなに惹かれるのかは分からないけど、いつも思う。

宇宙にはロマンがある。

こういう大きな発見があったときは、次号のニュートンや日経サイエンスが楽しみになる。


ふと時計をみると8時30分。ちょっと早いけど、服を着替えて、荷物を詰め、家を出た。


会社は四条烏丸の東側にある。烏丸御池にある自宅から、まっすぐ下がる。この時間の御池通りは通勤する人と観光する人が半々くらいで流れている。

黒いスーツを着て足早に先をゆく人、夏らしい白のスカートの女性、ジーンズに擦り切れたシャツと擦り切れたバックパックの大学生、制服に身を包んだ中学生の集団、登校中の小学生。それぞれのスピードで、それぞれの場所へ向かってゆく。朝の平和な光景だ。

僕はキャラメルブラウンの革靴、グレーのスラックス、襟がすこし高めの白いシャツに、濃紺のビジネストートバックという出で立ちで出勤した。


「おう、山形。おはよう。」

「あー、おはよう。」

三条通の手前まで歩いた所で同僚の田神に声を掛けられた。いわゆる生え抜き組というやつで、プログラムの腕が高いと評判なのだが、それがかえってアダになって昇進できないでいるらしい。世の中は理不尽だ。

「先週はやっちまったんだろぅ?」

「あぁ、更新ミスったことか。まぁ、いつものことだし気にしてないよ。」

「なんだ、からかってやろうと思ったのに。」

趣味があうわけでもなく、話が合うわけでもないのに、不思議と馬が合う奴だ。

「今日から新しいプロジェクト始まるらしいぞ。大口の案件がとれたらしい。」

「大口の案件?噂の百貨店の管理システムのことか?」

「そうそう、それ。コンペに勝ったらしい。」

先週から営業がザワザワしていたのは気がついていたが、社内の動きには全然興味がないので、気にも止めていなかった。

システムを作るときに、プロジェクトを回す方法は幾つかあるのだが、こういう大手の案件をする時はウォータフォールという方法でシステムを作る。その名の通り、滝が上から下へ流れ落ちるように作ってゆく。手戻りが無いことを前提に、どういうシステムにするか、どういう風に作るかを決めて、設計書を書き、プログラムを書き、テストをして、納品する。家を建てる時と大体おなじやり方だ。しかし、このやり方には面倒な問題がある。手戻りすることを前提にしていないので、作っている途中で「やはりこうしたほうがわかりやすい」「これは使いづらい」という問題が発生してしまうのだ。多くの場合、契約や仕様で決められているということで無視される事が多い。

「なんだか苦手なんだよ。あの決まりきった感じが凄く窮屈でさ。」

四条烏丸の交差点を渡り、アーケードの下を東へ向かって歩く。そういえば、会社の隣のビルには東急ハンズが出来るそうだ。意外なことに、京都には東急ハンズがなかったのだ。いつも大阪へ出かけていたが、これで帰りにブラっとよることができるようになる。文具好きにはありがたい。

東急ハンズのビルをすぎて会社の自動ドアをくぐる。ひんやりとした空気が心地よい。

「おはようございます。」

「おはようございます。」

受付の警備員に挨拶をしつつ、鞄から取り出したICカードを改札機にかざし、4階へ向かう。

「さて、今日も働きますかー。」


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