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混沌の戦場 1

「それで兼州軍は州境を超えたんだな」


ガルシア・ゴンザレス将軍は言葉を選んでいるというようにゆっくりと呟いた。作戦司令室のテーブルに一人チャーチルサイズの葉巻を燻らせながら辺りを睨みつけるように眺めている。


「はい、現在3つの街を占拠。さらにそのまま南下する国道を制圧していますがそれ以上の行動は控えているようでして……」


参謀室長の言葉にゴンザレス将軍は破顔したように笑った。


「そりゃそうだろう。恐らくは部隊長が部下を抑えられなくて起こした暴発的な戦闘だ。兼州本軍からの援助が無いを分かればそれまで踊っていた兵士達も落ち着きを取り戻して状況を再確認するはずだ。兼州軍には南下する実力などない……初めからわかっていたことだ」


全てを説明し尽くされて参謀室長はぼんやりと参謀室の中央のモニターに目を移す。


「それで南都と東海はどう言っている」


「はい、オーギュスト・ブルゴーニュ将軍は二個師団を増援に当てると……東海は西部州境の兵力増強と北天の治安部隊の増派を申し出ています」


「南都は二個師団……指揮官はアンリでは無いな」


「はい、オーギュスト・ブルゴーニュ将軍が直々に指揮を執られるとか……」


「あそこも苦労をしているな」


葉巻を咥えながら背後に立つ浅野英次首相に冗談を飛ばすゴンザレス将軍。その姿を物陰で一人眺めている士官がいた。


「吉田少佐!貴公はどう思おうかね?」


「はい、南都の部隊の移送方法ですが……」


「陸路を取ります。央都までは鉄道で、そこからは国道沿いに展開しつつ北上する予定です」


「いいんじゃないですか?とりあえず東和対策は取られているようですし」


「随分と他人事みたいな言い方じゃないか」


ゴンザレス将軍の言葉に吉田俊平は頭を掻きながら静かにそのまま通路沿いのパイプ椅子に腰を下ろした。


「それに初戦では私の出番はありませんよ」


吐き捨てるような吉田の言葉にゴンザレス将軍は合点がいったと言うように頷きながら灰皿に葉巻を押し付けた。


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