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修羅達の目覚め 6

「十四歳で一国を背負う……お父様、残酷すぎます」


「残酷?ワシは今後のことを考えてだな……」


バラダはそう言うと少しばかり遠慮がちに視線をラスコーに投げた。ラスコーは大きくため息をついた。


「叔母上。これは私の運命なんです」


「運命なんて言葉は十四歳の言葉じゃないわよ。亡命すれば兼州の民の安全は保証されます」


「兼州の民は東宮殿下の即位を望んでいる」


「本当にそうなんですのお父様。正統、清流。言葉は美しいけど結局は支配に違いはない」


「西園寺の家にお前を嫁に出したのは失敗だったかな……それよりキラーナ。お前ならガルシア・ゴンザレスの首を掻くこともできるのではないかな」


突然のバラダの言葉にラスコーは身を乗り出した。大柄でがさつに見える父バラダと違って細身で弱々しげに見える康子にラスコーは興味を持った。


「確かに私の力をもってすればそれくらいのことができるかもしれません」


「だったら頼む。父の頼みだ」


「お断りします」


凛とした調子で康子は否定してみせた。


「力を持つ者はそれを悪用してはならない。私の矜持です」


「軍事力で簒奪を行う相手に遠慮は無用なんじゃないのかね」


「お父様。私にも立場があるんです。西園寺家の次期当主の嫁が一国の有力者を殺害すればそれこそ戦争になります」


「西園寺家の胡州も名前の上だけは遼南帝を帝としているではないか」


「だったらなおの事です。反対勢力の火に油を注ぐようなものです」


「叔母上は一人でゴンザレスを倒せるのですか?


きっぱりと断る康子にラスコーは興味深そうに訪ねていた。


「力……人は法術と呼ぶ力があるのですよ。それを使えばあの程度の軍兵は数には入りません」 


強気な調子の康子はそのままラスコーに手を伸ばした。


「お姉様は嫌ってらしたけど……ラスコーちゃんにも同じ力があるのよ」


「余に……法術が?」 


「そうです……今は封印されていますが……時が来れば目覚めるでしょう……時が来ればね」 


「今がその時だと思うのですが」


ラスコーの問いに康子は微笑みを浮かべた。


「なら使えるはずでしょ?使えないということは今はその時ではないから使えないんです。人間必要な力しか出せないものですから」


康子の言葉に納得できずにラスコーは席に身を投げた。


「余は亡命はしない。それしか言えない」


「そうですか……でもまた来るわ。必ずこの離宮からあなたを連れ出してみせるから」


それだけ言うと康子は身を翻して去っていった。


「何しに来たんだアイツは」 


苦々しげにバラダはつぶやく。ラスコーはじっとしてそのまま康子の去っていった扉を眺めていた。

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