修羅達の目覚め 4
「良くご存知で」
「同業者ですからね……」
吉田は訳あり気に笑う。西園寺もニンマリと笑みを浮かべた。
「そう聞くとどっちの陣営に付くつもりか聞きたくなりますな」
そんな西園寺の言葉に吉田は驚きの表情を浮かべた。
「カバラ派じゃないんですか?」
「あんたはわかっちゃいないな」
吉田の言葉に西園寺は再び訳有りげな笑みを浮かべる。
「正義はどちらにあるか……東宮ラスコー殿下にある」
「しかし負けますよ」
「ええ負けますとも」
突然の言葉に吉田は呆然としていた。
「たぶん俺が行っても結果は代わりはしない。姦雄ガルシア・ゴンザレス将軍は勝利して実権を握る……ですがね」
「ですが……どうしたんですか?」
吉田は理解に苦しみながら目の前の傭兵西園寺孝基を眺めていた。
「世に正義を示す必要はある。負けるとわかっていても戦わなければならないこともある」
「理解できませんね」
「ほう、そう言うあなたはカバラ派に付くつもりですか」
「金の払いがいいですからね。稼いでなんぼの傭兵ですよ」
吉田の言葉に西園寺は少しばかり眉をひそめた。
「それなら俺は最初から軍に入っちゃいませんよ。まして傭兵になんかならない」
「そうですか……価値観の違いですかね」
「あんたが俺を認めないように俺もあんたを認めない……良い悪いは別としてもそれだけは事実だ」
そう言うと放置されていたカクテルに手を伸ばす西園寺。
「ただこうして酒を飲むのは気分の悪いことじゃないな」
「確かに」
明日には敵味方に分かれる二人。決して交わらない二人はゆっくりと酒を煽った。