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修羅達の目覚め 2

「吉田少佐に連絡を取れるか」 


ゴンザレス将軍の言葉に下士官は顔色を変えて走り去った。


「あの守銭奴を使うのですか?」 


そう言うと浅野は気難しい顔をして笑みを浮かべているゴンザレス将軍を見つめた。


「ただ一撃で兼州は討たれなければならん。ただの一撃でだ。さもなければ南都や東海、東モスレムは言うことをきかんだろう?」 


「ただの一撃で兼州を?」


「そうだ一撃でだ。当然東宮殿下には退場していただく」


「吉田少佐に同情してきましたよ。皇帝の次は東宮……悪逆もここに極まれりですね」


「そう言うな。東宮……ラスコー様の首を所望しているのはカバラ様だ……」


「実の親が子の命を?」 


浅野はそう言うと相変わらず笑顔を浮かべているゴンザレス将軍を眺めた。


「そうだ。殿下はラスコー様を憎んでおられる」 


「子を憎む親ですか……東宮の位を奪われたからといって……」 


「それだけではないよ。そもそもカグラーヌバのライン様を妻に迎えた時から殿下はカグラーヌバの血を嫌っていらっしゃる。事実ライン様腹の弟君バスバ様ともお会いになることを避けていらっしゃる」 


「王侯貴族というものはわからないですな」 


「浅野……貴殿も胡州貴族の出ではないか」


ゴンザレス将軍に痛いところを突かれて浅野は苦笑いを浮かべた。


「うちは先々代が功績を立てて引き立てられた身ですから。まあ殿下を見ていると息子をそれ程憎むのも分からないでは無いですが。もうすでに子を三十人も作っておいて誰ともお会いになろうとしない」


「そういうお方なのだ。まあワシの言うことしか聞かないところが良いところではあるがな」


「将軍も人が悪い……」


ひどく悪い笑みを浮かべるゴンザレス将軍に浅野も引き込まれるようにして笑っていた。


「しかし吉田少佐は来てもらえるでしょうか?」 


「なあに来てくれるさ……この七年間あの御仁のハマるピース以外は全て埋めてきたワシだ。南都と東海を跪かせ、東モスレムを屈服させて、兼州を一撃で沈める。その間にラスコー様はお亡くなりになる」


「あまりに出来過ぎた話ですな……」 


「人生待つことも必要だということだ。得る利益を考えれば時間を有効に使うことができるようになる」 


「北天のアカを放置したのもそのためですかな……」


「兼州が遼北と結べば全てが水泡に帰すからな。北天の人民ゲリラに好きに動いてもらえば兼州はいやでも遼北と対立せざるを得ない」


ゴンザレス将軍の読みに浅野は感服していた。


「すべては仕組まれたこと……」


冷や汗を流しながら浅野はでっぷりと太った姦雄を見つめていた。

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