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修羅達の目覚め 1

「いつになれば余は玉座に付けるのじゃ!」 


ムジャンタ・カバラはそう叫ぶと手にしていた扇子をでっぷりと太ったガルシア・ゴンザレス将軍に投げつけていた。


「殿下……お急ぎめさるな」 


「急ぐな急ぐなと言って……もう七年だぞ?七年」 


先帝ムジャンタ・ラスバの死から七年。カバラは未だ玉座につくことも無く王の間に入ることもできずにいた。


「簒奪と後ろ指差されるのはお嫌でしょう」


「一言言えば簒奪、簒奪と……母上を殺しておいてよく言うわい!」 


不摂生と運動不足から青ざめた顔に青筋を浮かべながらカバラが叫ぶ。その様子にゴンザレス将軍は脇に控えている文官に目をやった。


「殿下。もうこれ以上待てないと?」 


ひ弱そうな文官、浅野英次はそう言うと静かにカバラの前に進み、書類を手渡した。


「これは?」 


カバラの問いにゴンザレス将軍は満面の笑みを浮かべた。


「任命書の下書きでございます」


「任命書?」 


不思議そうにそうつぶやくとカバラは書類に目を通した。すぐにその額に汗が浮き、口元がワナワナと震え始めた。


「ゴンザレス……貴様を元帥にしろと?」 


カバラの表情には怒りが浮かんでいた。ゴンザレス将軍はカバラの表情などまるで構わないというように余裕すら感じられるような笑みを浮かべていた。


「あくまで下書きでございます。全てお任せいただければ……南都のブルゴーニュ家や東海の花山院を御前に跪かせてご覧に入れます。ただすぐにお決めになることはできないでしょうから……」 


「七年できなかったことが今できるとは……」


諦めたようにつぶやくとカバラは手を挙げる。背後に控えていた女官が肩を差し出す。まだ三十代だというのに自力で立ち上がることもできず、なんとか女官に抱えられるようにして席を立つ。


「殿下……」


「考えさせろ……しばらくはかかる」 


カバラは少しばかり口元を緩めるとそのまま王の間の控えの間から出て行った。


「子作り以外に能のない暗君を掲げるのはどうも」 


そう言うと浅野はカバラの去っていった戸を眺めているゴンザレス将軍に視線をやった。ゴンザレス将軍はゆっくりと立ち上がると口ひげに手をやった。


「なに、担ぐ神輿は軽い方がやりやすい。それにワシが実権を握るにはあの青瓢箪に帝位についてもらわんと困る。東宮がすんなりと即位すればカグラーヌバの爺の世になるし、他の庶子を担げば南都や東海がでかい顔をすることになる。なんとしてもカバラ様に帝位についてもらわねば……」 


ゴンザレス将軍はそう言うと入口に立っていた下士官を呼び止めた。

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