#2_入団試験《前編》
シュタロット王国は、直径423,8km、周辺の地形との高低差301mの広大なヘレン台地の上にスッポリと乗っかるように位置する。ヘレン台地は、ヨーロッパのど真ん中、旧世界地図のハンガリー、スロバキアに重なるように位置し、また、その地形故にベヒモスの一切の侵入を許さない。
そのシュタロットの首都、王権特区セレフェッタの中心には、白き2本の巨塔、アルハラ・ティラヤトゥーユ城がそびえている。東西に分かれる2本の塔は、それぞれ力と知性を意味し、アルハラ塔は主に軍事、警察組織の中心、ティラヤトゥーユ塔は政治、法律の中心である。略称として、アルティラ城と呼称する場合が多い。
2538年10月9日木曜日12時52分。そのアルティラ城の一室。
「遅すぎます、アリス名誉騎士。団総長権限でクビにしますよ。」
「べ…、弁明の余地を…」
全く呆れた姉だ。この人は。休暇を一日間違えるなんて。
僕はこの国の第一王子、そして現騎士団総長を務めるレイティア・ストゥレイル・クルベルト、15歳。名前が女っぽいとか、女子力が高いとかよく言われるが僕は男だ。男の娘とかいう趣味もない。
姉と同じく、瞳は碧、眉は太めで髪の毛先はオレンジのグラデーション。ただ、同じなのはそこだけで、髪はピンクではなくブロンド、目尻も父の血を引いたのか垂れ気味。姉弟にしてはあまり似てる方ではないと自分でも思う。
「なんで誕生日の前日が休日で、誕生日当日が出勤なんですか。大学が休みで僕が代わりに会議に出れたものの、これでは『名誉』という言葉の意味を疑いますね。」
アルティラ城アルハラ塔騎士団総長執務室。その扉の前に突っ立っているのは、シュタロット王国第一王女兼騎士団名誉騎士アリシティリア・ロリーティ・ストゥレイル・クルベルト。僕の姉だ。
この人は、自分の休日を一日勘違いしていたのである。確かに、今日は祝日で世間は休みだろうが、そういう日こそ騎士団の仕事が多くなる。しかも、姉には今日、南西国壁付近で観測された第4深度ベヒモスについての会議に出てもらう予定だったのだ。
「いやっ…、こういう仕事だからそういうもんなんだと…。」
目の前の姉はシュンとして答える。
姉は、自分で言うのもなんだがブラコンの気質がある。普段はクールで自信たっぷりの姉だが、こうしてたまに僕に怒られると目が潤むほど落ち込むのだ。
まあ、姉のその様子を見て若干の面白みを覚える僕の方にも若干のサディスト的気質がある事は否定しない。
「もう何回目ですかこういう遅刻は。」
「うぅっ…。」
世間の人は、姉のことを立派な人だと思っているらしいが、幼少の頃から姉のこういうガサツなところを散々見てきた僕にはあまりしっくり来ない。
「…明日、今日起きたベヒモス出現事件についても含めてもう一度会議をすることになりました。昼食後の1時です。あなたには休みを返上して参加してもらいますよ。よって後で、事件の報告書と、ついでに遅刻の始末書、明日正午までにお願いしますね。名誉騎士。」
「うん…、わかった…。」
「…あと、返事は『うん』ではなく『はい』で。僕らは仕事中は弟と姉ではなく上司と部下です。それに、返事は社会で生き抜く上でも最も基本的な事ですよ。」
「う…、ハイ…。」
こういう姉だが、なにも僕は尊敬していない訳じゃない。姉は強い。特に、姉の精神的な強さ、咄嗟の判断力は僕もたまに見習わなければならないと思うことがあるのだ。彼女は人類最強を自称しているが、精神面、肉体面を含めればあながち間違いでもないかもしれない。
「言いたいことはまだありますが…。まぁ、取り敢えずは帰っていいです。もう一度言いますが報告書と始末書は明日正午までですよ。」
「ハイ…。…ん?」
高い靴音。走っているのだろうか。それと一緒に、ガシャガシャと重厚な金属のすり合わさるような不思議な音も聞こえる。その音は部屋の外から聞こえ、だんだんと近づいて来ているようだ。
「アリスさんいるぅッ!?」
「ぐぼぉっ!?」
途端に、部屋左側にある右手前開きのドアが勢いよく開け放たれ、ドア近くにいた姉の顔面を叩きつける。同時に、ドアノブが姉の右肩にえぐりこみ、姉は回転しながら吹き飛ばされた。
「…天罰かな。」
「…あっ…。」
脳震盪を起こしたのか気を失った姉さんを見てそれぞれが一言。
ガシャガシャと体から音を出しながら部屋に入って来たのは、透き通るような白髪と虹色の瞳を持つ少女。身長は、姉より少し低いだろうか。茶色いフード付きの外套に包まれ、背中には少女の身長の倍はあるだろう布に包まれた棒状ものを背負っている。その先端は左右称に膨らんでおり、そこだけ包帯状の布が厚く巻かれている。
僕の攻撃(精神)で満身創痍な姉に無慈悲な一撃(物理)でトドメを刺したのは、この小さな女の子のようだ。
「あ、姉さ…、アリス名誉騎士ならそこに。」
この少女が姉の名前を呼びながら部屋に入ってきたことを思い出し、指をさして教える。
「…」
しかし、少女はこちらをじっと見つめて動かない。
…凄い瞳だ。
文字通り、虹色の鮮やかな輝きを一切の淀みなく放つ虹彩。その真ん中を縦に割る長い瞳孔はなんとも特徴的で、ずっと見ているとその崖のような深淵に吸い込まれそうな気がしてしまう。
なんとも無邪気で、それでいて強い。
「ぼ…、僕の顔になんかついてる…?」
瞳の存在感に気を取られて気づかなかったが、こう見ると、彼女の顔はかなり整っている。長い睫毛の房に囲まれたつり気味の目自体もかなり大きく、眉は細め、小さめの鼻は低すぎず高すぎずで、鮮やかなピンクの唇はそこそこの艶とハリを持ち合わせ、年相応に魅惑的である。蒼いリボンで高めに結ばれたツインテールは、彼女の肩甲骨辺りまでの長さまで伸び、それがまたよく似合っている。
姉のそれとはまた違った、人形のような美しさ。まさに王道の美少女である。
「……あの…、もしかしてレイティア王子?」
おそるおそるという様子で、少女はやっと口を開いた。
「え、ええ、そうですが…。」
「うわぁ~!!本物!?すごい!!やっぱりイケメンだなぁ!!」
僕が答えると、少女はローブの裾から覗く純白のフリルを揺らし、ガシャガシャと音を立てながらこちらに駆け寄って来た。
…イケメンだろうか。僕は。
「ええっと…、君は、どうしたの?」
「あ、ウチはね、ミカだよ!!ミカーニャ・ディーヌエント・フォースブルゲン!!」
少女は、弾けるような笑顔でそう言うと、こちらの手を握って握手をしてきた。おおよそ、質疑応答が成り立っていない。
「フォースブルゲン…?もしかして、最近取られたっていうフォースブルゲン卿の養子って君の事か…。でも、なんでセレフェッタに?」
フォースブルゲンとは、有力な魔術師の家系で、その家の当主が、現ルーグリフト領領知事、ガルバート・フォースブルゲンである。
しかし、ルーグリフト領は南西国岸に細長く張り付くように位置しており、ここ、王都セレフェッタからはかなり離れているのだ。小さい女の子が1人で移動する距離ではない。
「うん、そう!!ウチはね、アリスさんに弟子入りしに来たの!!」
「うぅっ…、私が、なんだって…?」
ミカがここに来た目的を話すと同時に、姉が目を覚ました。
「弟子入りだってさ。姉さん。」
「こんにちはアリスさん!!うちはミカーニャ・ディーヌエント・フォースブルゲン、ミカって呼んでね!!」
姉は口を開けてポカンとしている。
姉は確かに強い。道場を構えれば門下生が軽く300は超えるぐらいの実力はあるはずだが、しかし実際に弟子をとったことはない。おそらくは、その18という年齢と女という性別の問題だろう。シュタリアンの男どもはプライドが高く、志願者がいないのだ。
「それにしても、どうやってここに?警備とかいたはずなんだけど…」
このフロアに来るには、直通のエレベーターかテレポーターを使うしかないのだが、どっちにも24時間常に特殊訓練された警備員が2人付いている。
それ以前にも、城門や、エントランス前などには監視が複数人巡視している。
「えーっとね、このマント、魔法式光学迷彩なんだ。ちょっと見えなくなってパパッとね。」
そう言ってミカがフードを被ると、ミカは一瞬のうちに視界から消えた。
「おお。」
そしてまた一瞬で現れる。
「魔法式光学迷彩…!!」
魔法式光学迷彩とは、物質の光の屈折、歪曲、透過を自在に変化させることにより、使用者とその他任意の次元物質を不可視化する道具である。
「屋敷の蔵にあったから持ってきちゃった。音も小さくしてくれるからホントいろいろ助かっちゃったよ。」
そして、そう言ってわざとらしく舌をだしはにかんだ。
「いくら養子といえども、果たしてそれは勝手に持ってきていいものだったのか…?」
魔法式光学迷彩は、その複雑な構造や軍事方面への高い利用価値、また、流通数が少なくとてつもなく手に入りにくいことから、化学式と比べ相当な値がつく。蔑称、高額迷彩。普通に手に入れようと思ったら、50万ドルは下らない。しかし、性能は化学式をはるかに上回っており、その性能の高さ故に欲しがる金持ちが後を立たない。
「埃かぶってたし、あの人珍しいもの集めるだけ集めて全然使わないから一つくらい拝借しても大丈夫だと思って…。」
あの人とは、おそらくミカの養父、ガルバート・フォースブルゲンの事だろう。
「…とりあえず、ガルバートさんには連絡つけとくから。本来なら、ここは小さな女の子が1人で入れるような場所じゃないし、入っちゃ行けない場所だからね。アリス名誉騎士、案内を。」
ミカに、一旦帰るよう促す。姉さんが今どんな反応をしているかは知らない。
「…仕方ない。行くぞ、ミカ。」
「え、え〜…?」
そうして、姉が抵抗するミカを無理やり押し、部屋を後にしようとしたその時、ミカが思わぬことを口にした。
「あ…、ま、待って!!じゃあさ、ウチを騎士団に入れてくれない?こう見えてもウチ色々やってたからさ。」
14時24分、アルハラ塔地下3階。
僕の目の前には無数のモニターがあり、それぞれが黒い鉄の壁とも床とも分からぬものを映している。
しかし唯一、その一つだけは、画面の中心に透き通る白髪を捉え《とら》ていた。それは、右手にその身長の2倍はあろうかという長槍を携えている。
『凄い広いね。ここ…。』
ミカの籠った音声が、僕と姉のいる部屋に響く。
今ミカがいる場所は、僕と姉がいる部屋の真下、地下4階まるまるが一つの巨大な部屋…、と言うより空間で、その名を訓練室という。戦闘訓練を主な使用目的として建設された地下施設で、入団試験の会場としても用いられる。
1500m×1500m×高さ150mのその空間は、四方をありとあらゆる衝撃を吸収する特殊な緩衝璧に囲まれており、音、熱、衝撃、この空間で発生するあらゆる事象を外へ逃がすことは無い。また、仮想訓練用実体投影装置も完備し、仮想エネミーや照明、地形、天候までもを完璧に再現できる。
ちなみに、今僕らがいる地下3階はコントロールルームとなっており、ここで装置の操作や、訓練室のモニタリングなどを行うのだ。
「それじゃ、そろそろ始めるけど…。ホントにやる気?」
マイクに向かって話しかける。
あれから、姉さんからの謎の推薦もあり、なんだかんだ言ってミカの入団試験をやることになった。ある理由で年齢制限などは特に設けられてないが、普段ならば、10にも満たない少女が騎士団の入団試験を志願するなどありえない事である。姉さん以来、11年振りだ。
僕の声は、ミカの右耳に装着されたインカムを通して彼女の耳に届く。
『うん!!大丈夫!!ウチそこそこ強いから!!』
スピーカーからガシャンという音と共に聞こえるのはのミカの返事だ。長槍を右手で掲げる姿がモニターに映しだされている。
「どうだい?『I3』の調子は。」
『かなりいいよ。凄いねこれ…!!』
彼女が装着しているのは、騎士団で正規に採用している個別端末、マイクロマジック社製のレンズPC「enterEYE:3ed」の軍事仕様、通称《I3》である。
レンズPCとは、ソフトコンタクトレンズにコンピュータが直接埋め込まれた人体能力拡張端末で、専用の多機能インカムと併用するのが一般的である。これは騎士たちの一般兵装で、内部回線による通信や大隊規模の作戦サポートなど幅広く活用することが出来る。
「私達は別室でお前の様子をモニタリングしているから、思う存分動いていいぞ。」
姉がマイクを通して、部屋の中心にポツンと立つミカに話しかける。
『りょーかーい!!』
その音声と共に、モニターに映るミカは先ほどと同じよう槍をガシャっと掲げて合図した。
「…では、これより行われるミカーニャ・ディーヌエント・フォースブルゲンのシュタロット騎士団入団実技試験の内容を説明します。…もう一度確認しますが、子供だからといって実技試験のレベルを下げることは出来ません。よろしいですか?」
騎士団の入団試験には2種類の試験があり、1つは、体力測定と筆記試験による年2回定員制の試験で、こちらは一般的に多くの志望者が選択する試験である。
もう一つは、実戦を想定した実技試験で、こちらは定員が無く、申し出ればいつでも受けることが出来る。しかし、その代わりに難易度が高い。この試験の合格者が年に5人出ればいい方だと言われているほどである。
ミカは、半年後まで待てないということで、自ら後者の試験を選んだのだ。
『ハイっ!!』
「…分かりました。試験の内容ですが、20分以内に4体の仮想エネミーを撃破してください。なお、エネミーの出現場所、地形、天候は全てランダムで決定されます。どのような試験になるかは、こちらでも予測出来ません。命に関わるような事態になれば、強制的に試験は中断し、不合格とします。」
試験の内容を読み上げる。その間、ミカは真剣な眼差しで話を聞いていた。
『3分前、に、なりました。フィールド、形成します。』
ちょうど話をし終えたその時、女性の合成音声が両者のいる部屋にそれぞれ響く。
その瞬間、モニターの向こうに青い閃光が走った。青い半透明の質量ホログラムが形成され、それはだんだんと広がっていく。
『おお?おおお?』
何物にも形容し難いその珍しい光景に、ミカが感嘆の声を漏らす。
半透明のホログラムはやがて部屋全体を包むと、だんだんとその色は重みを増していき、その景色を完成させた。
それは、一切の秩序を失った街。
『フィールド設定は、旧、グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国、首都ロンドン、の、2536年、現在、です。』
合成音声が響く。
苔むした瓦礫の山、倒壊し地面に横たわる時計塔、アスファルトがめくれ剥き出しの地面に生える巨木。そのどれもが、風化し時の流れを失った文明の魂を忠実に再現した本物。街を分断する巨大な水の流れと、それを逆撫でる真っ直ぐな大気の胎動だけが、微かに時を感じさせている。
「…荒廃地区、か。」
姉が呟く。
すると、次の瞬間、画面の向こうの世界が暗転した。
『時間帯設定は、夜、です。天候設定は、快晴、です。』
雲一つ無い空に、幾千幾万もの星々と真円の満月が展開され、死した世界を弱々しく照らす。
『……凄い…、…綺麗。』
ミカのインカムが、息を漏らすように発せられた言葉を拾った。
「…暗いな。レイティア。」
「そうだね、コンディションが悪い。」
空が明るいと言えど、夜は夜。ミカのレンズに内蔵されたカメラがモニターに映し出す世界は、漆黒ばかりである。
『こんな暗くてそっちはちゃんと観れるの?』
「まあね。確かに通常カメラの映像を映すモニターは真っ暗だけど、一応暗視モードのモニターも出してるから。」
実際、僕らの目の前のモニター群は左半分が黒に塗りつぶされている。
『へぇ…。』
「ミカ、そろそろだ。構えとけ。」
姉がミカに声をかける。
「了解!!ウチは負けないよ!!」
ミカはそれに対し、満面の笑顔で返答した。
ミカのその絶対的な自信はどこから来るのだろうか。騎士団の「実戦を想定した試験」、つまりは、試験の討伐対象がベヒモスだという事くらい容易に想像がつく。普通の女の子では、どう足掻いてもその魔力に敵うことはないのだ。最初に姉を吹っ飛ばした時から普通ではない事は分かっていたが、やはりこう見ると彼女がベヒモスに勝利する画が思い浮かばない。そもそも、あんな大きい、柄まで鉄製の重い槍を片手でぶら下げていること自体が違和感しかない。それほどまでに、見た目だけでは普通の女の子なのだ。それなのに、なんだろうか、あの自信は。
「……。…羨ましいな…。」
あの子からは、姉と同じ匂いがする。似るところがある。
そんな事を考えている間に、時間になったらしい。
『開始、10秒前、です。仮想エネミー、を、展開、します。』
街に機械音が響く。
それはこの部屋の床に仕掛けられたギミックの発する音で、実体投影装置によってあらかじめ作られた仮想エネミーが街に放たれたのだ。
その場で投影するとなると、投影時のホログラムの発光で位置が分かってしまうし、かと言ってフィールドを形成する時一緒に作ると、フィールドの下見が許されている3分の間に見つかってしまう可能性がある。そのためどうしても、いったん別室でエネミーを作り、開始ギリギリに展開するという方法になってしまう。
「…いよいよだね。」
「ああ、ミカの実力がどれほどな物か。」
合成音声が5秒前のカウントダウンを始めた。
『これ…、邪魔かな。』
そういって、ミカはマントを捨てる。
「……蒼い。」
暗闇の中、高光感度カメラが映したミカのマントの下は、まさに蒼だった。
薄い水色を基調として、ところどころに濃い目の青で装飾があしらわれており、襟部分、袖口、ロングスカートの裾、その他諸々には純白のレースフリルが走っている。
そして何よりも目を引くのが、ミカがその身に纏っている胸当て、手甲、脚鎧である。それぞれの鎧は青く輝き、ところどころに金のレリーフが走っている。その細やかな装飾は、まさに高級品というのが素人目にも見て取れるだろう。
出会った時からガシャガシャと音を立てていた為にミカが鎧を装備しているのは薄々《うすうす》感づいてはいたが、まさかこれほどしっかりしたものとは。ドレスの上から着てサイズがぴったりなところからおそらくはオーダーメイドだろう。
大洋を彷彿とさせるその青い衣装はまさに、身体の強化ではなく、ミカの白い輝きをさらに際立たせるためだけの物だとさえ思える。
『3、2、…』
すると、ミカは手甲を鳴らしながら右手を真っ直ぐに突き上げ、その手に持つ槍を空に掲げた。
ミカは先ほどの顔とは打って変わり、それはまさに真剣その物である。
『時間、です。開始、してください。』
『魔力子加護《発光》!!』
カウントダウンが終わると同時に、ミカが叫ぶ。
その刹那、ミカの体から瞬間的に光の柱が立ち、彼女の全身を光の膜が包む。
目が眩むほどの輝き。
「ほお…、エネルギー変換か…。」
「なかなか高度な魔法のはずだけど…。」
魔力子加護は、自らを魔力子で包み強化する魔術だが、様々な魔法と組み合わせる事によってその効果を遺憾なく発揮することが出来る。
おそらくミカは、自らの放出する熱エネルギーを光エネルギーに変換する魔法を魔力子加護に練り込み自分の身体を強化するとともに、自分自身を漆黒の闇を照らすランプとしているのだ。
その強烈な光は、まさに太陽だと言わんばかりに輝き周囲を照らす。
『これでそっちも、普通のカメラでウチが見えるでしょ?』
その身体の輝きにも負けないほどの笑顔。
直後、ミカがすぐさま走り出すと、追跡カメラがそれに習って動き始めた。
「フッ…、憎たらしい奴だな…。」
試験中こちらのマイクは切るため、向こうにこちらの会話は聞こえていない。
「…しかし、あれではすぐにベヒモスに見つかってしまう。現にこのモニターのベヒモスはさっきミカのいた方向へ向かってるし。大丈夫かなぁ…。」
現在、このモニター郡にはミカと、ミカの視点、4体のターゲットとなるベヒモスが映し出されている。
そのうちの1体が、先ほどのミカの発光に反応して動き出したのだ。
「それが目的じゃないか?」
「ミカには、あえて闇討ちを狙わなくてもそれを倒せる自信があるっていう事か…。凄いな、あんな小さいのに。」
ミカは変わらず川に沿って走り続けている。自信に満ち溢れた笑顔で。
それは、普通の少女の無邪気な笑顔なのだが、僕はなぜだかその笑顔に恐怖を覚えてしまった。
一瞬の恐怖の後、気づいた。
普通じゃないのだ。彼女は普通すぎるが故に普通じゃない。僕はそこに恐怖した。
試験とはいえ、鎧と長槍という重武装で人類の脅威に遭遇するというこの状況で、違和感を感じさせない程の落ち着き。それこそが違和感だった。ここに笑顔の女の子がいるというイレギュラー。
「…レイティア。」
彼女には、一体何があるのか。
「……レイティア。」
彼女はなぜそこまでに恐怖を知らないのか。
「……レイティア!!」
そこでやっと、姉に名前を呼ばれていた事に気付いた。
「あ…、ごめん、何?」
うわの空だった意識を引き戻して返事をする。するとなぜだか、姉の口元が微かに微笑んだ。
「考え過ぎるなよ?自分と他人を比べるのはお前の悪い癖だ。」
「ああ…。ごめん。」
…その通りだ。完全に無意識だった。自分でも驚くほど卑屈だな。僕は。
「すぐ謝るな。日本人じゃあるまいし。…ほら、ミカがエネミーと接触する。」
モニターに視線を移す。その瞬間、走るミカの横の瓦礫から一体のベヒモスが飛び出てきた。
『おおっと…!!』
ミカは大きく反り返ってそれを躱す。そして、身を翻して相手を見据えながら距離を取る。
『やっと、お出ましか…!!』
ミカは、その笑顔を崩すことはなかった。いや、それはむしろ、もっと晴れやかな、それでいてなぜだかもっと残虐な笑顔へと昇華していた。
どうも、お久しぶりです。キセツカゼこと永季節です。
更新遅くなってしまい申し訳ありません…。
え?ここ数ヶ月でグラブル熱は冷めたかって?冷めたと思います?…冷めるわけねぇだろ!!グラブルは良イベばっかで全然飽きねぇ!!飽き用途しても飽きられないほど飽きないぜ!!!!むしろもっと愛が深まるばかりだ!!!!アアアアーーーーーー!!ジータちゃん可愛い!!可愛いよおぉぉぉぉぉおおアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
アアアアアアアアアアアアアアアアアアジータチャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(強制終了)