#1_妖精の騎士アリス
──西暦2538年10月9日木曜日午前9時──
シュタロット王国王権特区セレフェッタにそびえる白き2本の巨塔、アルハラ・ティラヤトゥーユ城の一室。
〜〜♪〜〜〜♬
「んん……。」
ベッドの枕側の壁にある、埋め込み型デジタル式目覚まし時計が鳴り響く。
「ん…、あと五分…だけ……。」
なんてうっかり言おうものなら…。
ーーー!!ーーー!!!!
音声認識で、目覚ましの音楽がたちまちガンガンデスボイスの大音量ヘビーメタルに変わる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!やめろおぉぉぉぉぉ!!」
さながらバネ式のネズミ捕りのように私は飛び起きた。デジタル時計の画面には起床確認の文字。カメラと音声認識で完全に起きたと判断したらしく、目覚ましが鳴り止む。
私はアリス。アリシティリア・ロリーティ・ストゥレイル・クルベルト。シュタロット王国王家クルベルトの第一王女であり、18才にしてシュタロット騎士団陸海空の名誉騎士なのだ。8才の時すでに剣の腕は成人男性以上にまで達し、10才で騎士団名誉騎士就任。学問では、9才で中高大一貫の名門アクフィクス国立士官学校に入学、10年間の教育を7年で卒業、当時16才。まさに奇跡のような才を持って生まれてきた神童なのだ。しかも、それでいて美人。薄いピンクのショートボブは毛先にいくにつれオレンジのグラデーションがかかり、大きな瞳はまるでオーストラリアのグレートバリアリーフのような輝きをたたえている。髪と同じ色の太めの眉は可愛らしくもどことなく強さを思わせ、程よい厚さの唇は儚さを醸し出す。私はこの世で最も才色兼備な人間なのだ。
だだし、そんな私にも欠点がある。恥ずかしながら、身長が、非常に低いのだ。141cm、小学校中学年女子の平均身長とほぼ一緒なのである。
「んぉ…、アリスたん起きた…?」
声の聞こえた方を振り向く。そこには、私に添い寝するような形でベッドに寝そべる爽やか系ガチムチ男。
「うわぁぁぁサタン貴様ぁぁぁぁぁッ!!死ねっ!!死ねえぇぇぇぇぇぇ!!」
再び絶叫。
「ロリの全力拒絶…、ゾクゾクするぜ…!!」
一方、顔を紅潮させ何とも言えない顔をしているサタン。
そう、サタン。この男こそ、7年前の第三次荒廃地区奪還作戦にて、一度死んだ私と契約し、蘇らせ、私の従神となった憤怒の神サタンである。
「貴様っ…!!いい加減勝手に出てくるのやめろ!!殺すぞ!!」
ベッドから立ち上がり洗面台に向かう。
「だって自分で出てこないとアリスたん全然喚んでくれないじゃん。」
付いてくるサタン。
「当たり前だロリコン。」
「その目ッ…!最高です…!!もっかいっ!!もっかいやって…!!」
足にしがみついて来るサタンの顔面を踏みつける。
「がっ…!!アリスた、っの生脚ぐぶっ!!あぁっ!!あぁあぁぁぁぁぁ♡」
サタンは謎の奇声をあげ悦んでいる。ちょっと魔界が心配になった。
「あっ!!ぐぼぁっ、今日はっ、黒パンっ!?なかなかアリスたんもむっつりでがはぁぁっ!!」
死ね。
顔面をこれ以上ないってくらいに強く踏みつける。18年間の生活で一番行動に気持ちを乗せた瞬間だった。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね犬のウ○コをゴリラに投げつけられながらながら死ね!!」
「ありがとうございますっ!!パジャマのズボンの裾からありがとうございますっ!!死ね死ね連続蹴りありがとうございますっ!!一生付いていきますっ!!」
一生地獄か。
「い、い、か、げ、ん、に…、」
床を強く蹴り飛び上がる。
「こ、これは…、まさか…!!」
前方に高速回転。
「しろおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
そして、絶妙なタイミングで右かかとをサタンの脳天めがけて振り下ろす。
「前方4回転かかと落としィぐぼげらああぁぁぁっ!!」
「アーメン。神よ、私がこの悪魔に天罰を下すことをゆるしたまえ。」
サタンは白目を剥きながら、ありがとうございますありがとうございますとうわ言のように繰り返している。
「帰還、強制執行。」
私がそう唱えると、サタンの身体は跡形もなく消える。
憤怒のサタン、これが、私の従神。ロリコンでドMなガチムチマッチョ。しかし顔は爽やか系でそこそこイケメンなのが、癪に障る。そして、最も目を引く特徴が頭の左右に生えた大きな角である。
従神とは、非物資生命体、いわゆる幽霊とか神だとかが個人と契約して個人の所有物となったものである。従神の所有者は、従神をいつでも喚び出したり帰らせたりする事ができ、また、その従神のもつ能力や力を所有者が行使できる。従神を持つことによるメリットは他にもあるが、わかってない事も多く、例えば、召喚時や帰還時、どこからどのように出てきて、どこへどのように消えるのかは、従神、もとい非物資生命体に関することの中でも最大の謎である。
「やっと騒がしいのが消えた…。」
そうつぶやいた後で、あの悪魔にパンツを見られたことを思い出し死にたくなる。自分でも顔が赤くなっているのが分かる。
「なんだってよりによって…!!…っ、はぁ…シャワーでも浴びるか…。」
今は思いっきり冷水を被りたい気分だ。
「そうだ、せっかくの休日だし、シャワー浴びたら城下にでも出るか。気分転換にもなるだろ。」
突き抜けるような青。
午前10時48分、アルティラ城城下、王特区セレフェッタは雲ひとつない晴天である。
「あ、姫様じゃねぇか!!」
肉屋の店主ジャック。
「アリスちゃんじゃない!!これあげるわ〜!」
ジョージの嫁ラン。
「おひめさまこんにちわ!!」
靴磨きの少女ミュー。
私が町を歩いていると様々な方向から声をかけられる。皆顔見知りだ。
「アリスも1回磨いてく?」
「いや、今日はスニーカーだから大丈夫。」
そう言って断ったが、ミューは自信ありげにサムズアップをした。
「大丈夫、私スニーカーも磨けるのよ!」
「ほぉ…、それは初耳だな。では頼む。」
私は、よく城下に来る。物心ついた頃からよく城を抜け出しては遊びに来ていた。城に閉じこもってるよりずっと楽しいのだ。そうしている内に、気づけば皆知り合いだった。メイド長のチェルシーにはよく怒られたものだが。
「アリスは今日はなにしに来たの?」
「大したことはない。気分転換だ。」
そんなたわいもない話をしている内にミューは靴磨きを終わらせる。
「へぇ…、凄いな…!もうピカピカだ。」
その出来栄えは見事なもので、新品同様、もしくはそれ以上かもしれない。もっとも、買った時のことを覚えてないのでなんとも言えないが。
「うふふっ!言ったでしょ?…あ、お金はいらないわ。アリス明日誕生日でしょ?ちょっと早いけど、私からの誕生日プレゼントよ!!」
ミューは、10代前半特有の若干のあどけなさの残る笑顔でそう言った。
「ふふ…、ありがたいが気持ちだけで充分だ。私も立場上子供にプレゼントさせるわけにはいかない。報酬として昼飯かなんか奢ってやるよ。」
「んー…、…じゃあお言葉に甘えて!!……身長は私のが高いけどね。」
とりあえず一発殴った。
午前11時12分。
城から南に40分程歩いたところにある、第3噴水広場。広場全体は五角形で、頂点それぞれから通りが伸びている。真ん中には直径5mほどの噴水があり、日中は常に人で活気に満ち溢れ、年中祭りのような場所だ。
「なんというか…、アリス凄いわね…。軽く引くわ…。」
「……いや…、私も引いてる…。」
今、私の両腕には色々な物がぶら下がっている。スーパーの袋、青果店の袋、お菓子の袋、花束や、化粧品ブランドの袋などなど…。このすべてが、街の住人達からのもらい物なのである。
「…私と会った時は手ぶらだったよね?お姫様の誕生日って恐ろしいわね…。」
「ハハハ…。まだ明日なんだけどな…。…あ、ほら見ろ。あそこの店だ。」
そう言って私は広場の西の大通りに繋がる頂点の、こちらから見て左側の角を指さす。そこは、5階建てビルの1階、小さな飲食店。
「Cafe…、mother…?」
「この距離でよく読めたな。そう、知り合いがマスターをやっている。が、客が全く来ない。…あ、いや、味が悪い訳ではないから安心しろ。」
店に近付くと、その雰囲気がよく分かる。広場に面する東側の壁上部には、赤いテントがかかっており、大きく白い文字で「Cafe mother」と書いてある。その下は壁一面ガラスで、店の大部分が見渡せるようになっている。手前にはテーブル席、奥にはカウンター席があるが、今は客どころか店主の姿も見えない。
「…アリス、休みなんじゃない?」
ミューはガラスに張り付きながら、こもった声で言った。
「いや、だいたいいつもこうだ。カトローナは奥にいる。」
そう言って西の大通りに面する北側に回る。こちら側の壁は白樺の木で統一され、広場から比較的離れた方にドアがある。ドアは、東側の面同様ガラスで出来ており、こちらにも私がちょうど見上げるくらいの位置に白い文字で「Cafe mother」と書いてある。
「入るぞ。」
「おじゃましまーす…。」
そこそこ重いドアを押して中に入ると、客の来店を知らせるベルが鳴った。
全体的に店内は若干暗く、また、人がいないせいか、まるで昨晩店主が夜逃げした後の空き家のようだ。天井の止まったプロペラがさらにそれらしい。カウンターの奥の棚には、安いものから高級な物まで様々な酒が並び、カフェというよりはバーのような雰囲気だ。
「ん〜、いらっしゃぁい!!」
すると、カウンター奥の扉が開き、バスの低音が響く。
「やぁカトローナ。この才色兼備なお姫様が久しぶりに来てやったぞ。」
「ああん!!アリスちゃんじゃなぁい。お久しぶりっ♡元気だったぁ?…あら?こちらの子はお初?」
扉から出てきたのは、男性というにはあまりに化粧が濃く服がフリフリで、女性というにはあまりに声が低く猛々しい体つきの、自称女性。
「あ…、こ、こここんにちはっ!!」
その異様な姿に、ミューは変に緊張してどもりまくっている。
「コイツは、平日の城門前でよく靴磨きしてるミュー。んでこっちは、前騎士団総長の元アントニオ・グレーグ、現カトローナだ。」
私は互いに少しでも打ち明けてもらおうと互いに互いを紹介する。
「うふふ♡ミューちゃん可愛いわねぇ〜!!いくつ?」
「じゅ、じゅ、う、13才でしゅっ!!」
「かんわいいぃ〜!!もう、抱きしめちゃう!!」
カトローナがミューを抱きしめる。いや、抱き締めあげる。私はこの技を、カトローナ・胸板プレスと呼ぶ。
「あぁぁぁぁっ!!」
ミューが叫ぶ。
気持ちは分かる。分かるぞミュー。だが耐えるしかないのだ。この技は私でも抜け出せなかったのだから…。
「アリスちゃん今日は何しにきたの?」
「昼飯を食いに来た。ミューにスニーカー磨いて貰ったから報酬替わりに奢ってやろうと思ってな。…その、そろそろ離してやったらどうだ?死にそうだぞ。」
「ん、ああ、ごめんなさい。うふふ♡」
笑顔のカトローナとは逆に、この世の終わりからやっとのことで生還してきたような顔をしているミュー。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!」
噴水広場に響く悲鳴。
その場の三人が反射的に東側のガラスを向く。
突然、砕け散るガラス。…いや、何者かが飛んできてガラスを突き破ったのだ。咄嗟にミューを後ろに引き寄せる。
「ミュー、大丈夫か?」
「あ…、う、うん。ありがとう…。」
ミューは尻餅をついていたが、別段、怪我などは見られない。
「…ベヒモスよ。」
すると、カトローナが口を開いた。その左手は人の首を掴んでいる。…否、人だった者の首を掴んでいた。
「ガァッ…!!ゥアッ…、ガッ…ァ…」
それは、カトローナの腕を掴んで抵抗しているが。カトローナはその手を全く離さない。
肌は黒くドロドロに変質し、服も、原子構成崩壊現象を引き起こしてボロボロ。その目は、全体が紅く鈍く光り、最早人の面影はない。
魔力子置換質量屍体。通称ベヒモス。
体内の魔力子が何らかの理由で暴走状態に陥り肉体と精神を侵食する症状を魔力子干渉症という。ベヒモスとは、それが第3深度まで進行し、心身の秩序を失った個体の総称である。
突如、カトローナの腕をつかむベヒモスの腕がブクブクと膨れ始めた。
「……これはっ!!…」
魔力膨張。
「カトローナ早く手を外せ!!そいつから離れろ!!」
カトローナが素早く腕を振りほどき、ベヒモスを飛んできた方向へ蹴り飛ばす。
直後、ベヒモスの両腕がまばゆい閃光を発した。
とてつもない爆音。衝撃。魔力拡散爆発である。
「……あ…、すまない。無事か?カトローナ。」
気づけば、カトローナが私とミューを破片から庇うように立っていた。
「えぇ…、まさか、自爆するなんて…。」
立ち込める砂埃。が、微かに揺れた。
「…いや…、自爆じゃない!!」
奴はまだ、生きている。それどころか、ダメージも無いだろう。
私はすぐさま駆け出した。
「アリスッ!?」
「状況、開始…。」
砂埃が酷く、前が見えない。
「うざったい…!!」
瞬間的に魔力を解き放ち、砂埃を吹き飛ばす。
正面にベヒモスを捉えた。
私は、空間に穴を開け剣を両手に1本ずつ取り出す。クルベルトの一族が最も得意とする魔法、空間魔法である。
空間魔法とは、私達のいる次元軸に自分だけの別空間を創り出し、また、その空間と今自分がいる空間を繋ぐトンネルを操る魔法である。
個人が作れる空間の広さや保持時間、また、出現可能なトンネルの範囲などは、個人の魔法力、すなわち魔法及び魔力子の処理能力に左右される。
私の場合は魔法力が常人の数倍はあるため、トンネルの発現範囲は半径60m以内で、創り出せる空間は縦50m×横70m×高さ30mの1万500㎥で、それを半永久的に維持できる。これは世間一般で言われている空間魔法の平均スペックの10数倍なのだ。ただ、この超人的な力もあのロリコンとの契約によるもので、純粋に自分の力ではないのが悔しい。
私は、この空間をいわゆる武具庫として使っており、中には様々な剣、槍、刀、そして鎧までもが保管されている。
状況開始から2秒後、目標との距離、1m。
両手の剣を敵の胸に突き立てる。貫通こそしたものの手応えは浅い。
「ギャアァァッ!!」
既に再生した敵の左腕が私の顔面目掛けて飛んでくる。それを、両手の剣を左右に薙ぐと同時に右脚を大きく後ろに開き体を落としてかわす。
「胸じゃない…。」
私が切り裂いた胸部の傷はすでに塞ぎかけている。
ベヒモスには、魔塊球という魔力子が次元固体化した球体が体内に1個存在する。それを壊さなければ、いくら攻撃しても再生してしまうのだ。いわゆる弱点である。魔塊球は基本的に胸部、その次に頭部に生成されやすい。
腰のバネを使い、左の剣を敵の右脇に入れる。肩から切断された右腕が宙を舞い、魔力子でドス黒く濁った血液を撒き散らした。
敵は怯み、半歩後ずさる。
「…のろいっ…!」
下げた右脚で地面を蹴る。そして、その勢いのまま体を時計回りに反転、右手に握った剣を完璧な角度で敵のがら空きの首に叩きつける。頭部と体を完全に切断した瞬間、体が魔力子拡散消滅し跡形もなく消え去った。
支えを失った頭部はそのまま引力に引かれて落下し始める。
「チェックメイトだ。」
間髪入れずに、左手を袈裟懸けに振り抜く。魔塊球の割れる音。
直後、先ほどのとは比べ物にならないほどの高濃度の魔力子拡散消滅。魔力子が消えゆく時の青い光が、まるで雪のように降り注ぐ。
「…目標の消滅を確認。状況終了。」
再び空間に穴を開け、両手の愛剣達を仕舞う。
「アリス!!大丈夫!?」
少し経って、ミューとカトローナが駆け寄ってきた。
「フフ…、私を誰だと思ってるんだ?ミュー。この通り無傷だぞ。」
私は、両腕を広げその場で一回転した。
「それにしても…、まさかベヒモスが半次元化して自らの爆発をかわすなんてねぇ…。」
カトローナの言葉に、ミューは口を開けぽかんとしている。
「つまりだな、ベヒモスは99,9%が次元化した魔力子で構成されてるだろ?で、そもそもの魔力子は半次元物質、この世にあって無いような物質で、こちらからの干渉は一切受け付けないのだ。そして、さっきの話だ。あのベヒモスは一時的に、次元化した魔力子を再半次元化したんだ。…ここまで言えばわかるだろ?」
「なるほど!!半次元化すれば、爆発の衝撃も一切受けないっていうことね!!」
ミューは理解したようで、胸の高さで両の手のひらを叩いてそう言った。
「そうだ。…まあ再半次元化には相当な魔力を消費するはずだし、そう連続して使えないと思うけどな。」
「…というか、アリスちゃん…?」
カトローナが、いきなり声のトーンを変えて話しかけてきた。
「服が血で汚れちゃってるじゃなぁい!!…いくら貴女が強いからって、貴女名誉騎士以前に一国のお姫様なんだから…。道場の頃から言ってるわよねぇ。少し、自重しなさい?…あっ、ほら!顔にもついちゃってるわよぉ!!」
カトローナは昔からこうだった。まるで小うるさい母親のようである。
「なんだそんな事か…。…ん…?」
何か、人の視線の様なものを感じ振り向く。
「アリスちゃん聞いてるの?」
しかし、後ろにはさっきの戦闘の残骸と、レンガやコンクリートの建物しかない。
「…いや、誰かの視線を感じたんだが…。…すまない、恐らく気のせいだ。」
今はもうその視線は感じない。
「カトローナ。」
「…なぁに?」
少し不満そうな返事をするカトローナ。
「昼飯作れるか?私もだが、ミューも腹が減ったろ?」
さっきの戦闘のせいもあり、今にもお腹がなりそうである。
「へ?いや…、あ、うん。言われてみれば…。」
「…はぁ、仕方が無いわねぇ…。店の片付け手伝ってもらえるかしら?」
そのカトローナの言葉に普通に頷くミュー。
「えぇっ!?」
「…アリスちゃん?」
カトローナの目が怖い。
「…あ、私確かやらなきゃいけない仕事がまだ…。」
「あっ!!アリス私のお昼奢るって話は!?」
財布から20$取り出してミューに渡す。
「これでなんか食え。じゃあな!!」
「あっ、こらアリスちゃん!!」
あんなでかいガラスの破片の掃除なんて、国のお姫様がするべき仕事ではないのだ。それに、帰ってレイティアに事件のことを報告しなければならないのだ。
「逃げるなアリスー!!」
ミューの叫び声を聞き流しながら城に向かって北に走る。
2538年10月9日木曜日、午前11時30分。
第3噴水広場東南のビルの屋上。
「あれが…、妖精の騎士、アリス…。」
アリスとベヒモスの戦闘の後で、少女は1人興奮していた。
「やっと…、やっと見つけた…!!」
屋上の淵を蹴る。
「魔力硬化。」
少女は、自らの脚に魔力を纏い着地にそなえ、6階分を落下し、着地した。
そして誰もいない第3噴水広場を見渡す。
「そろそろ警察と騎士団が来ちゃうかな。」
そう言って、少女は走る。アリスが走り去った北の大通りに、少女は彼女を追うように消えて行くのだった。
どうもキセツカゼです。…え?多すぎ?何が?(すっとぼけ)
…はい、まあ、分かっております。今回はもともとは5000文字目指して頑張ってたんですが、少し頑張り過ぎて、気付けば9600文字余り…、空白・改行合わせると約1万文字…。
まあそれはさておき、今回は挿絵にも時間がかかってしまいました。
前作のアリスKofでは挿絵は3DSのColors!というソフトで描いていたのですが、今回からはペンタブを使って描く事にしました。将来はイラストレーターを目指してるので、練習ついでのことですが(
それにしても、慣れないとやはり時間がかかってしまいますね。ええ。
後書きが長すぎてもあれなのでここら辺で終わりましょうか。次回は多くても8000文字に抑えられるよう頑張りたいと思います。
それではみなさんさようならー。