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アリス -Knight of fairy-  作者: 永 季節
序章
1/6

#0_憤怒


 鎧の音。

 私は飛ぶ。


「はぁっ…、くそっ…!!」


 剣の音。

 私は斬る。


「班長っ!!…っ、王女殿下あぁぁぁっ!!」


 私を呼ぶ声。

 私は、


「あぁっ!!がっ、あ…、やめっ」


 肉が潰れる音。

 私は、また、守れなかった。


「ぁ…、あぁあぁぁぁきいぃぃぃっ、さぁ、まあぁぁぁぁぁぁぁっ…!!」


 叫ぶ声。

 …あぁ、私か。


「…う、はぁっ、はぁっ…、なんで…。」


 風の音。

 私しかいない。気づけば皆死んでいた。ベヒモスも、班員(仲間)達も。


「…はっ、はっ、あぁ…、アル…。」


 ほとんど出ない声。

 枯れて、壊れた笛のような私の声。


「…ギーク、ローラ、ゼト、エルドラ、ルーク、サンドラゴ、ミーナ、シュシーク、ジョンジーク、ジーヌ、セシリア、フランク、ミケ、ハルトラン…。」


 枯れた私の声。

 死んだ班員(仲間)達。シュタロットの英雄達。守れなかった、人達。


「…ちゃんと、連れ帰ってやるからな。ちゃんと皆連れ帰って、ちゃんと葬儀して、ちゃんと墓立てて、ちゃんと…、ちゃんとっ…、謝るからっ…。」


 後ろから走ってくる音。

 …仲間じゃない。ベヒモスの生き残り。私は振り向きざまに左手の剣を振る。


「…いないっ…?…あっ……下っ!?」


 爪が、鎧ごと体を貫く音。

 超高速振動ちょうこうそくしんどう魔力子干渉(まりょくしかんしょう)による原子構成崩壊現象げんしこうせいほうかいげんしょう。そして、敵の3本の爪は私の左脇腹をいとも容易く切り裂いた。



 私は、憤怒ふんぬしていた。仲間を守れなかったことに。無茶な奪還作戦だっかんさくせんを決定した軍上部に。たかだかベヒモス一匹にやられる私の弱さに。そして、それと同時に私は気づいていた。この憤怒こそ、今の私には決して許されぬつみだということに。


 シュタロット王国第一王女アリシティリア・ロリーティ・ストゥレイル・クルベルトは、2531年10月10日、12歳の誕生日、初陣ういじんにて、死んだ。






 死んだ少女は夢を見た。


 暗い。何も無い真っ黒な世界で、誰かが少女に話しかける。その声は反響し、幾重いくえにも重なって頭の中に直接流れ込んでくる。


 ――女児、力を望むか。――


 欲しい。素直にそう思った。もう死んだのに。今更なのに。

 弱すぎた。だから敗けた。自分がもっと強ければ、賢ければ、それなら勝てた。死ぬことも無かった。だから、もっと強くなりたい。もっと…力が欲しい。今の少女にはそれしか無かった。


 ――そうか。ならば我と契約を交わそう。――


 少女の思考を理解したかのように、またあの声が響く。

 契約という単語に、いつもの少女なら嫌悪感を覚えたところだろうが、その声からは、なんの嫌悪感も感じない。


 ――…神罪しんざいちぎりをここに。――


 その瞬間、少女の手のひらに冷たく鋭い感触が走った。その傷から滴り落ちる血は炎のように明るく光り、流れていく。やがて、光る血は少女を中心にひとつの巨大な魔法陣を形成した。

 その魔法陣の光は、少女の目の前に立つ一人の男を照らした。そしてその男が声の正体であった。


 ――これに名を捧げる。女児、申せ。――


 「…アリス。アリシティリア・ロリーティ・ストゥレイル・クルベルト。それが、私の名前だ。」

 シュタロット王国第一王女である少女の名前。


 ――…いい声だな。我が名は、"サタン“――


 男は悪魔の王、憤怒の神を名乗った。そして契約は完成した。


 ――これで我は、アリス、貴様の所有物となった。――


 契約とは、そういう事か。そして男は消えた。しかし、声はまだ少女の頭の中に響いている。


 ――蘇生術式そせいじゅつしき展開。血液組織を収集、再生。再生完了。欠損箇所けっそんかしょを修復、再生。再生完了。質量不足しつりょうぶそくなどの理由で修復不可の箇所は魔力子を利用し原子構成げんしこうせい擬似再現ぎじさいげん一時修復いちじしゅうふく擬似再現ぎじさいげん成功。一時修復いちじしゅうふく完了。一時修復部いちじしゅうふくぶは時間経過による自己再生じこさいせいが可能。魔力子干渉まりょくしかんしょうによる自己再生促進じこさいせいそくしんを付与。付与成功。心肺の異常箇所いじょうかしょを検索。異常発見、修復。修復完了。心肺の再起動。再起動成功。脳髄のうずい異常箇所いじょうかしょを検索。異常発見、修復。修復完了。脳髄のうずいの再起動。再起動後、仮死状態かしじょうたいから睡眠状態へ移行。再起動成功。睡眠状態へ移行中。移行失敗。原因を検索、特定、修正して再試行。睡眠状態への移行成功。蘇生術式そせいじゅつしき終了。――


 蘇生技術。男は、化学、魔法学、その両方を持ってしても100年以内の実現は不可能と言われている技術を行使して少女を蘇らせた。


 ――…これは、我単体でも、アリス単体でもできぬわざ。2人が契約して力を共有してこそはじめて可能となる。…では、アリスの意識を一時遮断し身体へ再送信する。再送信が完了した瞬間、目が覚めるだろう。――


 少女の意識が揺らぐ。


 ――呼ばれればいつでも出てこよう。では、再送信を開始する。――


 薄れゆく意識の中、その声は異常なほどしっかりと聞こえた。



 どうもお久しぶりです。キセツカゼです。

 悩んだ結果、シナリオを見直し、最初から書き直す事にしました。毎回楽しみにしてくださっていた皆様、突然のことで申し訳ございません。しかし、前のシナリオよりもきっといいものにしていきますので、新生「アリス -Knight of fairy-」 を今後とも、

健二「よろしくおねがいしまあぁぁぁぁぁぁっす!!」

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