ゲームの始まり
VRゲーム発売初日の常識である街の混雑。
いつもなら簡単にその人混みをぬけてフィールドに向かっていたが、今は違う。
「ニャーオ。」
「ちょっと待てよエミュー。」
エミューがいるのだ。
エミューは猫だ、俺の存在なんか気にせずに塀の上に上ってひなたぼっこを始める。
しかし、このゲームチュートリアルはないのか?
そう思った瞬間、声をかけられた。
「お前、誰だ?」
声をかけてきたのは、黒髪の女性だった。
「お前、名前はなんていうんだ?」
そして、名前入力画面に目の前がきりかわった。
俺の名前、か。どうしよう?
と考えていると、女性は思いがけない一言を言った。
「そこの猫の名前は?かわいいな。」
さあ、思い出してみよう。
スターサンダーオンラインは確かにペット専用VRマシンの対象外だった、よな。
なのに、なぜだ?しかも猫だと分かっている。さらに、俺がその猫の飼い主だとも分かっている。
俺から離れて、塀の上にいるのに、だ。
だが、そう設定されているのであれば、きっとペット専用VRマシンが使えるゲームだったということか。
まあ、他の人で試すやつなんていないだろう。
こんなこと試すのは俺だけだ。
と、考えていると、黒い髪の女性は、あきらかにいらいらした様子でこう言った。
「名前は?早くしないと警察んとこつれてくよ?」
うわあ、アブねえ。
まあ、ゲームなんだけどな。
俺は、こう名乗った。
[スペード]と。