プロローグ
「ただいま。」
そう言って戸を開け、玄関に入る俺、長谷川 卓夢
今まではそれに答えてくれる人はいなかった。
でも、今は違う。
「お帰りなさいにゃ!今日もスカイサンダーオンライン、いくにゃか?」
そう、足下にまとわりついてくる猫がいる。
猫が話すようになる?そんなことありえない。そう思う人もいるかもしれない。だけど、本当のことだ。
きっかけは、スカイサンダーオンラインだった。
スカイサンダーオンラインは、新発売のVRMMORPGだった。
俺もその会社のゲームは何度か買ったことがあり、どれも高性能だったから、信頼はしていた。
俺は、発売日にスカイサンダーオンラインを朝から並んで手に入れた。
「ん?これ、なんだ?」
そして、一つのゲーム機を見つけた。
「ペット専用、VRマシン?」
説明欄を見ると、ペットもゲームの中に一緒に入れるというゲーム機だそうだ。だが、それは対象ゲームだけらしい。
「俺のエミューも入れるのか?」
俺は家で飼っている猫、エミューのことを思い浮かべた。エミューが一緒にゲームの世界に入る、なんて、すごいことじゃないか!
だが、買ったばかりのスカイサンダーオンラインを見ると、ペット専用VRマシンは対象外だということだった。
でも、家に一つくらいは対象ゲームがあるだろう。
俺はそう思って、ペット専用VRマシンを買った。
家に着くといつものようにエミューが足下で鳴いた。
「よし。」
俺はスカイサンダーオンラインを始めるよりも先にペット専用VRマシンが使えるゲームを探した。
でも、だ。
「ない?」
かなりの量のゲームがあるのに。対象ゲームがない。
かなり時間をかけて探したので、俺はいらいらしてきた。
「これって?」
俺は、VRマシンにペット専用VRマシンをとりつけた。
「もしかして。」
そして、スカイサンダーオンラインを起動した。
俺の思ったとおり、足下にはエミューがいた。
「やった。」
対象ゲームではなくても、エミューを連れてくることができた。
俺は、嬉しくて、何も考えずにプレイを始めた。
そう、そのままプレイしなければ、エミューは話せはしなかった。
その時、異変に気づいていれば、エミューを危険な目に遭わせなくてもよかったのに。
俺は、その時は、これから起こることに気づかず、ゲームを始めてしまった。