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魔法の国の魔法が使えない剣士  作者: 滋田英陽
第二章 ~第一王立学院二年度~
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最終話:成就

 作戦第二段階すなわち麻薬密売組織の壊滅が成って、コハルにより即座に開始された作戦第三段階は、インセクターを使ってのトリスティアンマフィア幹部の告発である。

 王国軍元帥ヘイゼルの元には、インセクターによって連日トリスタンマフィアの幹部に関する情報が届けられ続けた。

 王国軍は、キーノックを筆頭とする幹部の尋問によって麻薬密売組織構成員のあぶり出しを行い、また、トリスティアンマフィア幹部の拘束に取調べと大忙しの毎日を送っていた。

 当然ながら、王国軍中将であるカノープもその例に漏れないどころか、リゲルやリファ、近衛隊までもが駆り出されている。

 インセクターによる密告が終了して数日後、王国軍と近衛隊ほぼ総動員による連日連夜の摘発の結果、トリスティアンマフィアは壊滅した。

 灯入とコハルが仕掛けた殲滅戦は彼らの完勝に終わったのである。


 一方、麻薬密売組織壊滅作戦で負傷してしまった灯入は王立病院に入院させられていた。

 密売組織壊滅の功によりトリスティア国王の命で、灯入には一般人ではとても入れないような高級個室が割り当てられている。

 さらに、退院した後になるが、灯入とコハルにはトリスティア国王より褒章(ほうしょう)として高級住宅街の庭付き一戸建てが贈られることになっている。


 フィーナ王女ら同好会の面子は平常どおりの日常を過ごし、灯入とコハルが休んでいること意外、第一王立学院は平穏そのものである。

 コハルは看病のために学院を休んで灯入の面倒を()ていたが、同好会の面子も毎日とまではいかないまでも見舞いに訪れていた。

 ティータだけは毎日というより、学院での授業時間と深夜以外ずっと灯入のそばに張り付いている。

 今日もコハルはティータが訪れると気を使って静かに病室を出て行く。


「やあティータ、今日も来てくれたんだね」

「当然ですわ、トーイさまはわたくしが看ていないとすぐに無茶をなさりますから」


 ティータは灯入が負傷したとき以来吹っ切れたようで、堂々と灯入の事を様付けで呼び、灯入もそんなティータを受け入れていた。

 これは、フィーナ王女はじめ同好会のメンバー全員が知るところとなっている。

 エリーネに関しては初めのうちティータと張り合っていたが、灯入とティータ二人の作る雰囲気があまりにも自然で甘いことに自ら負けを認めて、最近では二人を応援し始めている。


「それはそうと、トーイさま。明日には退院できると聞きましたが」

「ああ、そうなんだ、やっと開放されるよ。同好会の新人歓迎キャンプはどうなったんだ?」

「ええ、次の休日に開催するそうよ。トーイさまの退院を聞いた姫様が今日の昼食時にメンバーを集めて宣言してましたわ」


 灯入の入院で延期になっていた新人歓迎キャンプは、当初の予定通り湖畔で行われることになった。

 長期間の活動制限に鬱憤(うっぷん)(つの)らせ続けていたフィーナ王女は、相当に気合が入っているようで、ここ最近は新人相手に毎日前回の狩りや料理の話をしているそうだ。


 灯入が退院して数日がたった休日の早朝、野外活動同好会のメンバーは学院前に集合していた。

 今回は同好会メンバーのほかにリゲルも参加するそうである。

 レグルスはカノープも誘ったそうだが、事件のごたごたがまだ終わっていない王国軍内部の事情により、今回は見合わせるそうだ。


 レグルスとリゲルの車に分乗した参加者達はちょうど日が昇るころ湖畔に到着し、早速テントの設営を行った。


「野外活動同好会会員諸君、それから飛び入り参加のリゲル近衛隊隊長。今日は予定していた全員が欠けることなく同好会新人歓迎キャンプに参加でき、会長として嬉しく思う。一泊二日のキャンプではあるが、存分に自然を学び親睦を深めて欲しい」


 恒例となったフィーナ王女の有り難いお話が終わり、早速狩へ行くメンバーと湖で釣りをするメンバーとに別れる。

 狩にはリゲルとレグルスが引率役となって、フィーナ王女にコハル、新人のエリーネ、ルシオが参加することとなった。

 灯入は病み上がりだということで狩には参加せず、湖でおとなしく釣りを行う。

 ティータは当然のように灯入と行動を共にし、エリオと新人のイヴェッタが湖畔に残った。

 エリオはコハルに付いて行きたがったが、調理などの準備にかかせない人材だということで、泣く泣く湖畔に残る形になった。

 湖畔残留組は前回と違って人数がいるため、早い時間で準備を終えて釣りを始めている。


「トーイさま、やっとゆっくり出来ますわね」

「うん、俺がトリスティアに来てから、こんなにのんびりできるのは初めてじゃないかな」

「そうですわね、わたくしもこうやって自然の中で、トーイさまと二人きりでお喋りできるなんて夢のようですわ」


 完全に二人だけの空間が出来上がっていることに、エリオとイヴェッタはご馳走様と距離をとっていた。

 灯入とティータは話に夢中になって釣りどころではなく、エリオとイヴェッタが頑張って釣果をあげている。

 それでも、昼食時には四人集まって食事を取り、狩組の帰りを待っていると、フィーナ王女が森の中から駆け出してきた。


「大物を仕留めた。釣りはいいから皆で運搬を手伝ってほしい」


 フィーナ王女にせかされて森へ入ると、巨大鹿シルドが既に解体されていた。

 全員で獲物を湖畔まで運ぶと、早速夕食の準備を始める。

 初めて狩を経験したルシオが、狩の様子を興奮気味に解説しながら調理が進み、陽が傾いてきたころに全員での夕食となった。


「いやぁ、今回の獲物は大きかった。しかも美味い」


 リゲルが肉にかぶり付きながら今日の成果を堪能している。

 皆もそれぞれ、肉や魚に舌鼓(したづつみ)をうち、キャンプの夕食をを堪能した。


 日もどっぷりと暮れて、疲れたのであろう、狩組みが寝静まる中、灯入は岸辺に一人座って星空を眺めていた。

 いつの間にかティータも灯入の横に来ており、二人はしばらく星を眺めていた。


「俺さ、最初は心配だったんだ。この国で暮らしていけるのか、友達や家族が出来るのか、でも今はこうやってみんなと一緒にいる」

「ええ、私たちはかけがえのない仲間だし、みんなで幸せにならなくちゃ」


 灯入はティータと向き合い、真剣な表情で話しかける。


「ティータ、学院を卒業したら俺と結婚してくれないか」


 予想もしていなかった突然のプロポーズに、感極まったティータの瞳からは涙が溢れている。


「喜んでお受けします」


 星明りがきらめく湖の(ほとり)で二人は唇を合わせ、お互いの気持ちを確かめあったのだった。


 完

これで「魔法の国の魔法が使えない剣士」は完結となります。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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