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魔法の国の魔法が使えない剣士  作者: 滋田英陽
第二章 ~第一王立学院二年度~
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第三話:入会試験

 午後の授業を終えた灯入とコハルを除く野外活動同好会のメンバーは一旦部室に集まって校舎裏の訓練場へと向かった。

 入会希望の新入生は既に訓練用のスーツに防具を装備して集まっていた。

 白いブレザータイプの制服を着たフィーナ王女が新入生の前へ出る。


「我々野外活動同好会への入会希望者諸君、今日はよく参集してくれた。今から入会試験を執り行う。前衛希望のものは向かって左側へ、後衛及び中衛希望のものは右側へ並べ」


 フィーナ王女の言葉を受けて新入生達が列を作る。

 フィーナ王女から向かって右側前衛希望が五人、左側に中衛及び後衛希望の一二人が並んだ。

 ここで、同好会のメンバーは違和感に気付く。

 昨日ドアの前に集まっていた者たちと明らかに顔ぶれが変わっている。

 昨日のフィーナ王女の言を受けて、軽い気持ちで入会しようと考えていた者たちは来なかったようだ。

 野外活動同好会の活動内容は、新入生の間に浸透したようである。

 ここで言う軽い気持ちとは、野外活動同好会をトレッキングやピクニックメインのアウトドアレジャー系同好会であると思い込みと、ただ単にフィーナ王女とお近づきになりたいと考えである。

 特に、フィーナ王女と友人関係にでもなることができれば、将来の人生に何かと有利に働くことは疑い無き事実である。

 が、野外活動同好会が魔獣などの狩をメインとした戦闘系の同好会であることを知ってから考えが変わったのであろう。

 その代わりに、武力に自信のあるものや、魔術が得意なものが集まっている。

 特にフィーナが欲しいと言った魔術系の中衛後衛希望者が多い。

 エリオは並んだ前衛希望者の人数を見て少しほっとしているようだ。


「エリオ、前衛希望者の選抜は任せるよって、その辺で適当にやっておれ。合格させるのは一人か二人でよい。場合によってはゼロでも構わん」


 フィーナ王女の投げやりな言葉に、エリオは並んだ前衛希望者を見て、こいつらも可哀想にと同情するのであった。


「中衛、後衛希望者は私について来るが良い。ティータも手伝ってたもれ」


 フィーナ王女はティータと入会希望者を連れて訓練場奥の魔術専用スペースへと行ってしまった。

 残された五名の前衛希望者に向かって、エリオは投げやりにならないように少しの緊張感を表情に漂わせた。


「えー、僕は野外活動同好会で後衛(・ ・)を担当している二年二組のエリオ・アヴィオールといいます」


 エリオの前に並ぶ前衛希望者達は「後衛」と言う言葉に反応してどよめいている。

 それも当然だろう、前衛希望者の入会試験を後衛担当者が受け持つと言うのだから。


「我こそはと思うものは名乗り出てください。一対一の模擬戦で実力を見ます」


 この発言を聞いて真っ先に手を上げるものがいた。

 そのオレンジ()かった赤い髪の少年にエリオは見覚えがあった。


「一年一組のルシオ・クレメンタルと申します。あの、本当に宜しいのでしょうか?」

「ああ、構わないさ。君は昨日フィーナ王女に話しかけてきた人だよね?」

「そ、その通りであります」

「それじゃ、武器は底の中から選んで、ルシオ君以外の人は下がって場所を空けるように」


 ルシオは木製の長剣を手に取り、五mほど離れて昆を持ったエリオと対峙している。


「準備が出来たらいつでも掛かってきていいよ」

「それでは遠慮なく行かせてもらいます。怪我をしても知りませんよ」


 ルシオはそういうと、いきなり袈裟掛けに切りかかってきた。

 その動きを見て、エリオは体を横に入れ替えるように余裕を持って(かわ)す。

 打ち込みを躱されたルシオは、つんのめる様にバランスを崩したがエリオは追撃を掛けなかった。

 なめて掛かってきた相手ではあるが、追撃を掛けて一撃で終わらせてしまえば、彼の本当の実力を見ることが出来ないと考えたからだ。


「そんな力みきった斬撃では当たるものも当たらないよ」

「クッ」


 エリオの指摘に一瞬カッとなったルシオであったが、これは入会試験だと言うことを思い出し、冷静さを取り戻した。

 それからというもの、冷静になったルシオの攻撃は、スピードと切れを取り戻したようであったが、エリオは痛感していた。

 一年生といえどルシオは選抜クラスだ。

 その実力がこんなものなのかと。

 この実力ではとても危険な狩には同行させられない。

 エリオ自身、今だ狩については未経験であるのだが、魔獣の素早さや恐ろしさは承知している。

 エリオはまだ一年間ではあるがここ第一王立学院で武闘系の技術を学んでいる。

 灯入やコハルとの特訓の成果も大きいが、基本的な体力やスピードを身につけたのは学院の授業からなのである。

 ハンター免許取得の条件に、最低一年間武闘系学校の就学を定めているのはこれが理由なのだ。


 五分くらいであろうか、エリオとルシオの模擬戦はルシオが一方的に攻め、エリオがルシオの攻撃を全て払い、躱して、最後に軽い突きを当てただけでルシオとの模擬戦は終了となった。

 

「これくらいで良いでしょう。貴方の実力は分かりました。次の希望者は名乗り出てください」


 ルシオは愕然としていた。野外活動同好会の会員はこれ程強いのかと、今対戦してもらったルシオが後衛に甘んじているのである。

 ならば、前衛を務めているほかのメンバーの実力はどれ程のものたろうかと。

 後衛に甘んじていると言う言葉には語弊があるが、ルシオが抱いた嘘偽りの無い感想であるのも事実である。

 正直言って甘く見ていた。

 でも、野外活動同好会に入って彼らと行動を共にしてみたい。

 共に戦ってみたい。

 と、強い願望が芽生えたルシオであった。


 ルシオ以外の入会希望者は、始め余裕の表情で模擬戦を見物していたが、あまりに一方的な試合展開に圧倒され、戦意を喪失してしまっていた。

 結局一人も名乗りを上げずに、すごすごと引き上げていってしまった。


「やれやれ、結局残ったのは一人ですか、ルシオ君と言いましたね。あなた、今でも入会の意思はありますか?」


 エリオの問いかけにルシオは間髪いれずに答えた。


「勿論です。そのためにここに来たのですから。私のような者でも入会できますか」

「会長に聞いてみないと何ともいえませんが、まぁ、善処はして見ましょう」

 

 一方、フィーナ王女と共に訓練場の魔術専用スペースに出向いた入会希望者達は、自慢の魔術を六対六のチーム戦でフィーナ王女とティータに見てもらっていた。

 彼女らが注目しているのは攻撃系に関して、魔力の大きさと発動までの時間、それに、術のコントロールであり、回復支援系に関してはその回復力と支援の的確さだ。


「姫様、めぼしい物はおりますでしょうか?」

「そうよのう、ほれ、あの桃色の少し長い髪をした炎熱系の魔術師と、モスグリーンのショートボブかのぅ」

「そうですわね。モスグリーンの方は少し物足りない感じもしますが、貴重な回復系のようですし、桃色髪の(むすめ)はなかなか良い攻撃をしていますわ」

「この二人で決まりのようだの」


 フィーナ王女の眼鏡にかなった入会希望者は、つり目が特徴的な桃色セミロングの髪をしたエリーネ・シルバーと、モスグリーンのショートボブヘアーが特徴的な、おっとりした感じのイヴェッタ・フロリアンの二人だけだった。

 イヴェッタは一年の女生徒であるがエリーネ・シルバーは二年生で、準選抜クラス入れ替え戦準決勝で灯入と対戦した女生徒だった。

 

 そのころ、灯入とコハルはリゲル邸に戻ってきていた。

 リゲル邸の門前には既に二人の王国軍兵士が護衛を開始しており、さらに、数名の王国軍兵士がリゲル邸の近辺を巡回しているとの事だった。

 麻薬密売組織の動向に関しては、専門家である王国軍に任せて、気になっていた野外活動同好会への入会希望者がどうなったのか二人は話していた。


「入会試験? だっけ、どうなったのかな?」

「分からないわね。フィーナ王女が取り仕切っていると思うから、もう決まっている感じがするんだけどね」

「そうかー、フィーナ王女だもんな」


 明日(みょうにち)、灯入は部室に行って驚くことになるのだが、この時は当然ながらそのような事は知る(よし)も無い。

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