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第6話 自由過ぎるイケオジ、かつての親友。


そうして案内されたのは、騎士団本部にある一室だった。


「儂が騎士団を取りまとめているゲイリーだ。気軽にゲイリー長官と呼んでくれ。……にしても、今回の新人は随分と可愛らしいレディなんだな」


私たちを迎えたのは、執務机に座るスキンヘッドの男性だった。彼は顎のヒゲを弄りながら、私の顔を見て楽しそうに笑っている。


「あの、ニーヴェル様……」

「ごめん、事前に説明しておけば良かったな……」


 抱いていた長官のイメージからは、かなりかけ離れていた。なんというか、もっと厳格な人物だと想像していたのだ。新人である自分のことも、厳しくチェックされるとも思っていたんだけれど……。



「ゲイリー長官。そういう品のない発言は問題になりますよ」

「おっと、儂も若者の価値観に合わせねぇとな。ただでさえ最近は、飲み屋の姉ちゃんにウザがられ気味だしよぉ」


 長官はアルコール度数の高そうな琥珀色の酒をガラスのコップに注ぐと、氷も入れずにストレートでグイッと飲み干した。そして気分がよさそうにカカカと笑う。


 今って勤務時間中じゃないのかな……と思ったけれど、ニーヴェル様が注意する様子はない。ということは、長官はいつもこんな調子なのだろう。案外、緩い騎士団なのだろうか。



「ところで……そのパルマって嬢ちゃん、ただの神子じゃねぇんだろ?」

「えっ……」


 今度は高級そうな葉巻を手にしたゲイリー長官がニマニマと笑う。同時にニーヴェル様の表情から感情が消えた。


「今まで新人の加入を拒み続けてきたお前が、ただの神子を雇うと思うか?……それに嫌な空気を感じる。あぁ、悪い。そういう気配には敏感なんだ、儂は」

「……さすがは長官。貴方を(あざむ)くことはできませんね」


 できればニーヴェル様も言いたくはなかったのだろう。でも彼には騎士団長という立場があるし、上官に逆らうことはできない。できる限り気を使いながら、ことのあらましを説明してくれた。



「なるほどな。お前さんがそこまで気に掛ける理由も分かった。だがこの国で異端者は……」

「それは分かっています。万が一の時は俺が処理しますので」


 ゲイリー長官がニーヴェル様をひと睨みすると、ニーヴェル様も負けじと見つめ返す。

 私はどうしたらいいのか分からず、そのまま立ち尽くしていたが……やがてゲイリー長官が深い溜息を吐いた。



「分かったよ。お前がそこまで言うのなら、彼女のことは任せる」

「……ありがとうございます」


 ゲイリー長官の寛大な処置に感謝を込め、ニーヴェル様は礼儀正しく敬礼をした。その直後に彼はホッとした表情になり、優しい瞳で私を見つめてきた。


 無事に私は騎士団の一員として認められたってこと……?


 一度はヒヤリとした場面もあったが、執務室に再び緩やかな雰囲気が戻った。


 だがそんな部屋に、ノックも無く入る人たちがいた。



「長官、話が……なんだよ、いたのかニーヴェル」

「……オーランドか」

「貴様、儂の部屋に入るときはノックをしろと何度も言っているだろうが!」


 不躾にもズカズカと執務室へ入ってきたのは、真っ赤な騎士服を着た人物だった。身長は190cm近くもある大柄な男性で、燃えるような赤い髪色をしていた。そして彼のあとを追いかけるようにして、同じ騎士服を着た騎士団員がゾロゾロと入ってきた。私たちの騎士団よりも大所帯で……なんだか気性も荒そうだ。


「その女は神子か? ニーヴェルもようやく新人を入れる気になったのかよ」


 オーランドと呼ばれた彼は、赤い瞳で私を見下ろしてきた。ニーヴェル様を馬鹿にされているようで、なんだか嫌な感じがする。それはニーヴェル様も同じようで、ムッとした表情になっていた。


「別の騎士団である貴様には関係ないだろう。そもそも数だけ揃えたところで、指揮する者が無能なら何の意味もない」

「あぁ!? てめぇ、もういっぺん言ってみろやコラ」

「んん? どうしたオーランド。普段から大声でしゃべりすぎて、耳が遠くなったのか?」


 どうやら二人は犬猿の仲らしい。ニーヴェル様とオーランドさんはバチバチと殺気を込めた視線を交わす。


 上官の部屋だというのに、一触即発な雰囲気だ。

 だがそれ以上に、この空気をブチ壊す人物が現れた。



「あれ? パルマさんですか? どうして異端者である貴方がここに?」


 大柄なオーランドさんの影から、金髪の少女がヒョコっと顔を出した。



「貴方は……」


 どうしてここに? そんなのはこっちのセリフだ。

 自分と同じ頃に教会に拾われて、何年も共に暮らし――そして裏切って神父に私の秘密を告げ口をした神子。


 彼女はかつての友人、ソワレだった。


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