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青春なんてそんなもの  作者: にわとり
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■はじまり

27歳の私は来月実家を出て行く。

引っ越し先は婚約者と借りた1LDKの小さなアパート。

「立つ鳥跡を濁さずでしょ。ちゃんと自分の部屋を整理してから出ていきなさい。」と母に言われ、日曜日の朝っぱらから蝉の鳴き声と共に整理整頓を始めた。

引越し先のアパートに持っていくもの、持っていかないもの、捨てるもの、何処にも仕分けられず保留のもの。思い出の品に度々手が止まる。

昼休憩を挟み、おやつ休憩を挟み、遅々としながらも作業は部屋を網羅していった。

最後に残ったのは、うっすらとほこりの積もった低めの本棚だった。本棚には学生時代の愛読書とアルバムが隙間なく押し込められている。

背表紙が一番手前に飛び出しているアルバムを無造作に引き抜き、床に座る。大学生時代の懐かしい写真が並んでいた。一枚一枚見入ってしまう。友達とのスナップショットの笑顔がまぶしい。夢中になって、次々とアルバムを手に取る。ざっと十以上のアルバムを取り出した後であろうか、本段の奥の壁と化していた一冊の薄いアルバムを見つけた。キャラクターが描かれているプラスチック製の薄いアルバムだった。

いつのアルバムだろうか。キャラクター的に高校生時代か中学生時代であろうか。忘れてしまった思い出との再会に期待しながら、表紙をめくる。


そして、思考が止まる。

感情が堰を切ったように湧き上がるのを感じた。


アルバムの一ページ目を飾っていたのは、中学二年生の終業式間際に撮影したクラス写真だった。全く同じクラス写真がアルバムの二段のポケットに並んで入っている。

ただし、下の段のポケットの写真には、カラフルな手書き文字が入っている。

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2年1組、最高の1年をありがとお!!(^U^)

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この手書き文字は、実月の文字だ。クラス全員に配られたクラス写真に、実月は落書きを入れ、私にくれたのだった。

十年以上も前の記憶が幾つもの断片となり、様々な角度から押し寄せてくる。

夏の西日に背中をチクチクと刺されながら、一つ一つの記憶を反芻する。

実月に対する憧れ、そして実月の言動による一喜一憂。私の中学二年生の毎日は、実月から成り立っていた。


あの頃の感情が恋だったのか、憧れだったのか、はたまた独占欲だったのか、今でも分からない。

ただ、あの頃の私は実月のことが好きだった。大好きだった。

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