第37話 冒険者会議 議事録 その三
【第七十三回 冒険者会議 議事録】
冒険者1
⇒王国の聖女奪還計画の現状について確認したい。
冒険者2
⇒勇者達の反発が強く、未だに派兵の目処が立っていないと聞く。
冒険者3
⇒先遣隊が盗賊王の森から逃げ帰ったのも大きい。今は冒険者ギルドにリザーズ調査依頼が高報酬で出されている。ただ、現在の森は非常に危険だ。奴等の拠点に近づくことさえ困難になっている。
冒険者4
⇒原因はアンデッドか……。
冒険者5
⇒そうだ。森に現れるようになった強力なアンデッドのせいで、王国をはじめ我々冒険者も中々情報を集められていない。
冒険者6
⇒何故、急にアンデッドが……。
冒険者7
⇒思い当たる節はないのか……?
冒険者8
⇒ある。
冒険者9
⇒あるなぁ。
冒険者10
⇒現在、行方不明のリリナナか……。
冒険者11
⇒S級冒険者に匹敵する力を持つコルウィルとリリナナが合流した可能性があるのか……
冒険者12
⇒おまけに聖女まで確保している。
冒険者13
⇒そして難攻不落の地下要塞を持ち、地下通路を通じて何処にでも侵入することが出来る。
冒険者14
⇒この大陸における、第四の勢力だな。
冒険者15
⇒侵略的な姿勢を考えると、リザーズ帝国。となるのか?
冒険者16
⇒盗帝コルウィル……。
冒険者17
⇒ん? トウテイ?
冒険者18
⇒盗賊で皇帝だから、盗帝だ。
冒険者19
⇒……採用する。
冒険者20
⇒アルマ神国は聖女奪還に動いていないのか?
冒険者21
⇒神国は無責任なほど、静かだ。
冒険者22
⇒法王に何かあった可能性があるな。
冒険者23
⇒法王は高齢だ。体調を崩していてもおかしくない。
冒険者24
⇒この状況。魔人達に有利なのでは? 魔大陸はどうなっている?
冒険者25
⇒魔王誕生のタイミングで魔大陸からほとんどの人族は引き上げた筈。情報がない。
冒険者26
⇒魔人達がこの大陸に攻め入って来る日も近いな……。
冒険者27
⇒魔人が現れれば討伐依頼が出されるだろう。我々冒険者にとっては稼ぎ時だな。
冒険者28
⇒魔王の誕生により、魔人達はその力を増している筈だ。簡単な話ではない。
冒険者29
⇒話を戻す。ザルツ帝国はリザーズの聖女強奪に対し、動きはあるのか?
冒険者30
⇒非難声明を出したキリだ。リザーズの拠点は王国内にあるので、帝国は手出しが出来ない。というスタンスだ。
冒険者31
⇒白々しいな。リザーズとザルツ帝国の協力関係は明白であろう。
冒険者32
⇒リザーズが聖女を得たことで、力関係が変わった可能性がある。現在、魔王討伐の鍵となるのは聖女だ。それを握るのはリザーズ。コルウィルはガドル王国とザルツ帝国を天秤に掛ける立場にある。
冒険者33
⇒もし、リザーズが聖女を擁したまま勇者パーティーを組み、魔王を討伐したら、どうなる?
冒険者34
⇒アルマ神からの祝福はリザーズ帝国にも与えられ、その領土は豊かになるだろう。今までガドル王国とアルマ神国がそうだったように。
冒険者35
⇒この状況をコルウィルは狙って作ったというのか……?
冒険者36
⇒もしそうだとすれば、コルウィルは戦略の天才でもあるな。
冒険者37
⇒盗帝コルウィルの誕生。我々は時代の節目に立ち会っているのかもしれない。





