表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】クラス転移したけど性格がクズ過ぎて追放されました ~アンチ勇者は称号『侵略者』とスキル『穴』で地下から異世界を翻弄する~  作者: フーツラ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/85

第21話 S級

 平時、夜の森は賑やかだ。しかし今日は違う。雷神ベリンガムの脅威に怯えたのか、夜行性の魔物達の姿は見えない。


 お陰で拠点までの道程は順調だった。オオトカゲの進行を邪魔するものはおらず、あと十分も進めば拠点の入り口が見えてくるだろう。


「もう少しだ。頑張ってくれ」


 オオトカゲの体を撫でる。


「分かった。頑張る」


 何だ……? トカゲが喋ったのか? しかも若い女の声で……。


「いつから……人間の言葉を話せるんだ……?」

「ん。たぶん一歳」


 オオトカゲの寿命がどれくらいか知らないが、割と早いうちから人語を操るのか……。


「ところで、名前は?」

「リリナナ」


 随分と可愛い名前だ。名付けの親はコルウィルか? と考えたところで、声が背後からしていることに気が付いた。


 さっと振り返り、一瞥する。


 銀色の髪に赤い瞳、真っ白い肌。人間味のない人形のような見た目に、慌てて前を向いた。


 この女……何だ……? 一体、いつから俺の背後にいた?


 そもそも狙いは? 敵ならば、いつでも俺の命を奪えた筈……。


 刺激しないように、機嫌を損ねないように聞いてみるか。


 少しだけ振り返り、声を掛ける。


「リリナナはいつから俺の背後にいるんだ?」

「つい、さっき」


 ここでホッとする。リザーズや田川のことはバレていない。何かあっても、奴等に被害が及ぶことはなさそうだ。


「何か俺に用があるのか?」

「見に来た」


 見に来た? 何をだ? まさかこいつ、ベリンガムの仲間。いや、監視役か何かか?


「何を見に来たんだ」

「バンドウ」


 俺を……? 見に来た……?


「殺しに来たのではなく?」

「ん。見に来た」

「何故だ?」


 リリナナは俺の背後でゴソゴソと何かを漁っている。


「これ、見て」


 グイィーっと服が引っ張られ、無理矢理後ろを向かされる。慌ててオオトカゲに停止の合図を送った。


「黒い宝石の指輪。これは黒の腕輪。あとこれは……」


 リリナナは背負っていた黒いリュックから、自慢のグッズを取り出し、誇らしげに見せる。そういえば、身に付けているものは全て黒だ。


「……黒い物が好きなのか?」

「ん。大好き。だからバンドウ見に来た」

「黒目黒髪だから?」

「そう」


 さっと血の気が引いた。どう考えてもこの女、ヤバイ。


「王都には他にも黒目黒髪の勇者達が居ただろ?」

「あれは、王国の。手を出すと面倒」

「だから、俺なのか?」

「そう。気に入った」


 それまで無表情だったリリナナが少しだけ頬を緩ませた。


「それは良かった。ところでリリナナ。俺はこれから大事な用事があるんだ」

「一緒行く」

「とても危険なんだ」

「大丈夫。リリナナ、強い」


 黒いリュックを背負い、指輪を幾つも嵌めた手を握り、拳を作る。何を言っても聞きそうにない。


「分かった。行こう」

「ん」


 俺は再び、オオトカゲに前進の合図を送った。



#



 拠点の入り口は真っ暗だった。ベリンガムの紫電も、鮫島の赤光も見えない。


 オオトカゲから降り、【穴】を解除して堀に橋を掛ける。照明の魔道具で照らしながら、ゆっくりと渡った。そして、周囲を見渡す。


「鮫島……!」


 拠点の入り口に凭れ掛かるようにして、鮫島は座っていた。顔も何もかも焼け爛れている。


「大丈夫か……!?」


 駆け寄り肩を揺すると、僅かに反応があった。まだ何とかなる。慌てて腰のホルダーから上級ポーションを取り出し、鮫島にぶっ掛ける。


「これを飲め」


 もう一本は服用させよう。僅かに開いた口に無理矢理ポーションを突っ込む。


「がはっ……! ふぅふぅ……」


 なんとかなりそうだ。


「話せるか? 奴は何処へ行った?」


 鮫島は声を出す代わりに右手を上げて、拠点の奥を指差した。ベリンガムは想定通り、俺達を追ったようだ。


 つまり、いつ戻ってくるか分からない。ここは危険だ。


「鮫島。背負うぞ」


 鮫島の前に屈み、預けられた身体をグッと引き上げながら立ち上がる。


 堀を渡りオオトカゲのところに行くと、リリナナはまだ座ったままだった。本当について来るつもりらしい。


「リリナナ。すまないが一人乗客が増える。退いてくれないか?」

「……やだ。バンドウの後ろがいい」


 力の入った赤い瞳で拒否される。妙な迫力に鳥肌が立った。


「急いでいるんだ。実はヤバイ奴に追われてて、早急にここから立ち去らなければならない」

「……大丈夫。守ってあげる」


 思った通り、頑固だな。


「相手はS級冒険者らしいんだ。逃げるしか──」

「平気。リリナナもS級だから」


 その言葉と同時に、拠点の入り口から紫の光が溢れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] リリナナかわいいなあああああ! 好きですかわいい 最初トカゲと間違うところ何回見ても笑ってしまいますww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ