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【書籍化】クラス転移したけど性格がクズ過ぎて追放されました ~アンチ勇者は称号『侵略者』とスキル『穴』で地下から異世界を翻弄する~  作者: フーツラ
第一章

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第19話 異変

 王都でエミーリア達をコケにした後、俺は新しい拠点作りに忙しくしていた。


 あれだけのことをやらかしたのだ。今まで通りというわけにはいかない。リザーズも廃坑を完全に引き払い、俺が共同の拠点を作ることになった。


 場所は廃坑のあったところよりもさらに森の奥。王国と帝国を分ける山脈に程近い場所だ。


 現れる魔物は強力だが、拠点の周りを深い掘で囲むことにより安全を確保している。それに、俺達が移動するのは森の中ではなく、穴の中だ。暗いだけで危険はない。


「田川。マップを見せてくれ」

「はい、どうぞ」


 今、俺達が取り組んでいるのは帝国へと抜ける地下道の開拓だ。これはコルウィルから強く依頼された。


「完成すれば物流に革命が起きる!」と熱心に頭を下げるものだから、商人を俺に紹介すること条件に、作業を引き受けた。


「しかし、まだまだ遠いねぇ。番藤くん、疲れないの?」

「全く疲れないな。田川だって【マップ】を使っても疲れないだろ? それと同じだ」

「うーん……」


 レベルが上がったせいか、俺の【穴】は進化していた。今までは円い穴しかあけられなかったのに、正方形の穴もあけられるようになったのだ。そして、穴のサイズも最大五メートル四方まで拡大した。


 これは穴を通路として捉えると、素晴らしい進歩だった。


 何せ一瞬で馬車がすれ違える地下道を作ることが出来るのだ。コルウィルなんて「是非我が国に!」と口を滑らせた程。


 リザーズが帝国の関係者であることは、俺の中ではほぼ間違いない。コルウィル達もあまり隠そうとしていないフシすらある。


 何にせよ召喚者である俺達が生き抜くには現地人の協力は不可欠だ。自分達だけで暮らしていける基盤が出来るまで、リザーズとの関係は維持したい。


「よし。そろそろ拠点に戻ろう。夕食の時間だ」

「うん。お腹減ったもんね! 鮫島くん、オーク狩ったかな? お肉食べたいね!」


 食事の話で急に元気になった田川がオオトカゲに飛び乗り、「早く早く」と急かす。相変わらずの食い意地だ。


「田川、普通の人は環境が変わるとストレスで痩せるものだぞ?」

「僕は食べて発散するタイプだから!」


 そう言って田川はオオトカゲを走らせ始めた。この時はまだ、平和だった。



#



 夕食を終え、寝るまでのぼんやりとした時間。娯楽のないこの世界では、時の流れがゆったりだ。


 紅茶──高級品らしい──を飲みながら自作のリクライニングチェアに身を委ねる。


 拠点について考えよう。


 居住区は既に完成していて、今は拠点と帝国を繋ぐ地下道を施工中。既に王都までは地下道が伸びているので、帝国からすると一気にガドル王国まで迫れることになる。


 あれ……? 改めて考えると結構ヤバイな。俺の気分一つでいつでも穴は塞ぐことは出来るけれど、王国は喉元に帝国の鋭い刃を突きつけられていることになる。


 エミーリアや宰相はどこまで想定しているのだろうか? 俺とリザーズがズブズブなのは馬鹿でも分かる。リザーズと帝国の繋がりについては……? 討伐隊の証言から、ただの盗賊団でないことは認識している筈。


 余程の馬鹿でなければ、俺の命を狙ってくるのでは──


 カンカンカンカン……!! と、けたたましい音が拠点内に響いた。


 何事かと部屋から飛び出すと、田川と鮫島も通路にいた。


「どうした?」

「まだ分からないよ」

「王国の襲撃か……!?」


 と鮫島は既にメイスを握って臨戦態勢だ。


「バンドウさん! 森に異変です! 雷が移動してきています!」


 息を切らしながらチェケが報告に来た。雷が移動とはどういうことだ?


「鮫島、とりあえず入り口に向おう。田川は自室で待機だ」

「よしきた! 暴れるぜぇ……!」

「分かったよ。気を付けてね」


 勢いよく走り出した鮫島を追い、拠点の入り口に到着する。先に着いていたコルウィルが俺の顔を見た後、空を指差す。すると突然、暗闇から雷が発生しズドンと落ちた。


「あれはなんだ? あそこだけ天気が悪いのか?」

「……あれは雷魔法の一つだ。自分の身に雷を落とし、それを纏って力に変換する……」


 コルウィルは森の中を睨みつける。


「敵ってことでいいか? 堀を越えられるとは思えないが……?」

「……いや、舐めない方がいい。あれは多分、S級冒険者のベリンガム。雷神と呼ばれる男だ」

「ヤバイ奴なのか?」

「……ヤバイ」


 バリバリバリバリッ! と大気を破く音がして森が明るくなった。一帯の樹木が一瞬で打ち払われ、至る所で炎が上がる。


「来やがった……」


 堀の向こうに紫の光を纏った男がいた。

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