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勇者パーティ!(2軍)  作者: 元祖ゆた
第2章 ヴァルヴァラ学園
77/87

41時限目 虚弱者の休憩所<1日目>



――時刻は、9時30分とちょっと過ぎた。

ムペムペ砂漠に着いてから――1時間30分程度、経過した事になる。



長い様で短い、濃密な時間だった事は確かである。


ティタが発見した謎の”黒い塊”を目指し――俺ら『勇者パーティ2軍』は、散り付く灼熱の光線を全身で浴びながら、砂漠を邁進した。せざるを得なかった。



……その結果――



「……なァんか、見えてきたな!」

「あれって……そうよね?」

「そうだね~あれだね~」

「や、やりましたっ!!」




「「「「 オアシス !! 」」」」




――オアシス。砂漠の様な乾燥した地域における緑地。

泉や河川を形成しているものがあり、砂漠の観光における拠点として利用されるらしい。


また、落ち着く場所、安息の地――みたいな比喩として、”オアシス”という言葉が使われたりする。



(正味、情報として知っているだけだったが……)



――果てのない砂漠だと思っていた。ただひたすらに、足だけを動かした。



(期待感だけが、膨張を起こしている)



黒い塊へ近づくにつれ――俺にでも認識出来る距離に近づくにつれ――緑色の、村らしきものが露となった!



(――リアルなオアシスッッ!!)



「マジで……あるんだな、オアシスは……!」

「あれ絶対オアシスだよーー! わーい!」

「ティタ! お手柄よ!」

「えへっ!」


喜悦の声が沸き上がる。暗闇に沈んでいた心が、輝く空へと浮上する。


「……チラホラと学園生も見えますね」

「ティーちゃんみたいに()()()()()がいるんだろーねぇ」

「『ワーグ族』か」

「それか……空を飛べる『ハーピー族』、五感の優れた『ニンフ族』、状況分析の『ヒューマノイド族』ってところかしら」


(結構いンじゃねェか……)


本当に、只々だだっ広い砂漠だと思っていた。見渡す限りの砂の海。見通せてしまう絶望の世界。

しかしながら、砂山等の傾斜や蜃気楼、砂塵によって――遥か彼方まで見通せていなかったらしい。


「チェックポイントと捉えても良さそうね」


俺の背中におぶさっている保冷剤(エルル)が、そう呟く。

耳元でボソッと喋りやがった為、若干ASMRみを感じてしまった。


「何故そう思う?」

「ヒントが”強烈な熱源”しかないのよ? いくら学園が厳しい試練を課すとしても、何もない砂漠に私達を無責任に解き放ったりはしないと思うわ。そんなの『干からびてください』と言っている様なものだもの」

「つまり、学園側の用意した”手がかり”の1つって事か?」

「同時に『温情でお膳立てしてやったのだから、ここまでは来れるよね?』的なチェックポイントって事」

「あァ、そういう」


ピスカの魔法で何とか辿り着けそうだが、これがエルルの言う通りのチェックポイントだとしたら、初手でそれなりの脱落者が出るだろう。


(手厳しいねェ……)


油断は一切していないが、学園の課す『5つの試練』――中々、苦しい戦いになりそうだ。


「取り敢えず、飯食いてェなァ」

「情報収集も必要よ。この砂漠について色々知りたいし」

「わたしは休みた~い」

「シャワー浴びたいです……キンキンに冷えた水で」


各々が、欲望を素直に吐露していく。

変わらない景色を、キツい熱風を浴びつつ、時に不安定な砂にハマりながら、余計な体力を消費しつつ我慢の行進だ。不満が溜まらない訳がない。


何となく、足取りが軽くなった気がする。相変わらず、砂に足は取られてはいるが。



”ゴール”は分からないが、”セーブポイント”は見つけた。そんな心境。



「さ、あと少し気張るか!」

「ええ!」「はいっ!」「あいさー!」





……。



…………。



………………。



――そこは、()()()()()()()()()()()()()()()



――『ナッグルオアシス』。そう書かれた看板が、砂の大地へと突き刺さっている。



連なる様にして毒々しいサボテン……? が、”村”と”砂漠”を区分けする様に、境界線の如く、将又、国境として仕切る壁として生い茂っていた。


オアシスへ一歩踏み出すと……一面草の絨毯がお出迎え。

小さな小さな雑草で出来た床となっている。泥濘からの解放であった。


俺がナッグルオアシスを”村”と表現しているのには理由がある。それは――


「あ! 『宿屋』があるよー!」


大きな泉の他に、木製の家が立ち並んでいるからだ。


それも……『宿屋』、『飯屋』、『武器屋』、『薬屋』、『教会』と大きな看板を掲げている……まるでRPGに出てくるような建物が、規則正しく顔を揃えていたからである。


( !? ガチでゲームの世界だ! ドエレー!!)


内心、狂喜乱舞。まるで異世界みたいだぁ~(直喩)


「つーか涼しくね?」


村に入って気が付いた。とても涼しい。

真夏の直射日光の中、冷房の効いたコンビニに逃げ込んだ様な感覚だが。


「あれよ」


背中から声がして、エルルが指差している方向を見る。


(……サボテン? が煙吐いてる?)


村と砂漠を分かつ謎サボテンをよく見ると……体からうっすらと煙が排出されている。


「『クラウチーク』って植物ね。地中の水分を吸って、”雲”を吐き出す特性を持っているわ」

「あ、だから若干涼しいんですね!」


要は、熱風から村を守るようにして、目で見えるか見えないかレベルの雲を張っているお陰で、暑さが弱体化しているっつー事らしい。



――正に、オアシス。熱から守ってくれて、その上様々な店のある休憩ポイント。最初の村。



「意外といるね~」


キョロキョロと辺りを見渡すピスカ。


――確かに、ざっと見た感じでも20人、30人程度はいるだろうか。

勿論、皆学園生。そして、エルルの言っていた通り、ワーグ族やハーピー族がちょくちょく居る。


(遠くからこのオアシスを見つけたのが早かったんだな)



俺らも遅い方では無いと思うが……それでも、俺らより先にここを見つけられたという事実は、改めて身を引き締める理由となった。



「……て言うか、いつまでおんぶされてんだよ」


近くのベンチで休んでいた学園生達の視線を感じ、ようやくおんぶし続けている事に気が付いた。


……ちょっと恥ずかしい。”氷属性化”のせいでキラキラしているから尚目立つ。


「え? ずっとおぶってくれるんじゃないのかしら?」

「ほざけ保冷剤」


その場でしゃがみ、エルルを解放した。

すぐに両手いっぱいに伸びをしている。さぞ快適な旅だったろうよ。


「う~~~~ん。おんぶされているのも、案外疲れるのね」

()りゃその何倍も疲れてんだぞ?」

「ご苦労様。またよろしくね?」

「二度としません」


幾ら涼しかったとはいえ、腰にキている。こんな事はもう()()()()()だ。氷だけに。ふふっ。


「何ニヤニヤしているのよ」


おっと。ポーカーフェイスがウリであるこの俺が、どうも表情に出てしまっていたらしい。反省。


「……じゃあもう切っていいよね~?」

「何が?」

「魔法」

「ああ……」


すっかり忘れていた。直ぐに理解できず、曖昧に返事した所で――エルル自身が纏っていた氷の気配が一瞬で消え去った。


「ふーーーー……」


大分魔力を使ってしまった様だ。あのピスカが大人しく息を吐いた。


「お疲れ。ありがとな」

「とても助かったわ」

「ピーちゃん! ありがとうございます!」


「どーいたしましてー」


三者三様に感謝を述べ、ヒラヒラと手を振って受け止める。

ピスカの魔法が無ければ今頃……うわー、考えたくもねェな。


「取り敢えず、飯にしようぜ?」


一先ず……腹が減った。

暑さで体力を消費したためか、体がエネルギーを欲している。割とガッツリめでもイケそう。


それと、オアシスに到着してから、飯屋からいい匂いがしてきて我慢ならん。


(それもガーリック系なんだよなァ……あー、そそる)


自分の体に正直に。素直に前向きな意見を述べたが――


「まだ9時ですが……」

「食べれるうちに食べた方が良いとは思うけれど……早くない?」

「それより休みたいな~」


――女性陣から反対意見が噴出してしまった。


「じゃあどうするよ?」

「わたしは休みたいなー。魔力使ったからさー」

「そうだな。休憩は必要だな」


ピスカはずっと休息を主張している。

そりゃそうだ。あんだけのんびり屋なピスカがここまで頑張ったんだからな。尊重してやるべきだ。


「7時間くらい寝たいなー?」

「ざけんなー?」


今日が終わるわ。休みの日に夕方起床ぐらい絶望感あるわ。


「……ピスカの意見は分かった。エルルは?」

「私は少し休めば大丈夫よ。それから情報収集したいわ」

「言ってたな」


この村に情報を得られそうな店は無さそうだが……どっちかと言うと他の学園生との情報交換ってところか?


「ティタは?」


問いかけると、ティタは少し照れたようにして……


「……お風呂入りたいです///」

「よし! そうしよう!」

「「こらこら」」


その他(エルル・ピスカ)に止められた。

俺とした事が、ティタの可愛さにヤられて思考停止してしまった。ズルい子だわ。


「皆の意見は分かったが……」

「バラバラね」

「あ、あたしのお風呂は無しでいいので……!」

「まーまー。お風呂は大事じゃん? わたしも汗流したいし―」

「俺も飯食いたいしー」

「ちょっとー。真似しないでよー、マーくん。真似するならもっと可愛くやってよー」

「食いたいし☆」

「うわっ! キモッ!? 誰!?」

「は?(威圧)」

「ふふっ! マオさん、怒ってる真似上手いですね!」

「マジだが?(真顔)」

「……くぅーん」

「ティーちゃんイジメるなー!」

「君にキレてんだよこの野郎」

「混沌としてきたわね……」



……。


「じゃあ一旦自由行動にすっか?」

「……そうね」


全会一致で解散となった。取り敢えず11時オアシス入口集合。





……。



…………。



………………。



――ここは、”飯屋”『セーフミート』。

まず外観。木で作られたロッジの様な立ち姿である。


山奥でひっそりと佇む、知る人ぞ知る隠れ家的レストラン的な奥深さを感じる。

……とはいうものの、でかでかと『飯屋』と書かれた看板を掲げており、強烈な芳香の自己主張が激しい。


嗅ぐだけで法悦。鼻腔が幸せ。既に満たされているかも。


(まぁ、食うけど)


次に内装。何と言うか、俺の想像していた異世界の酒場と言った感じ。

木で作られているから当たり前だが、中もログハウス。木の温もりが、良い感じ。


「いらっしゃい!」


元気のいい店主に迎えられ、油でべた付く店内を歩く。


学園生は数人しかいなかった。ま、朝9時だしな。朝っぱらから重いモン食えるのは、俺ぐらいなモンですよ(自信過剰)


人も少ない事だし、折角だから店の奥の4人掛けテーブル席へどっかり座る。


(ふむ……)


テーブル上にあるメニューを手に取る。これもべた付く。

パラパラとページを捲るが……名前の通り、肉料理主体であった。よく分からない魔物の肉が使われている様だが……ウマそうだから、ヨシ!



……。



「はいよ! 『魔豚(まとん)の丸焼き』!」



(う、うおおおおおおおおおおお !? )



ま、まんま……豚の丸焼きだァ!! 漫画飯だァ!!



――思いっきり、かぶり付く!

瞬時、肉汁が、飛沫を上げる。弾力のある肉だが、簡単に噛み切れる。噛む度に、旨味と油が口いっぱいに広がり、脳が喜び震えている。


(”豚”なのに”(マトン)”とはこれ如何に)


――なんて、下らない事を考えるも、それ以上に……うンまい!


……気付けば無心で食っていた。只々飯を貪る。食へ向き合う原始の姿。

飯を食う時はこうあるべきだ。喰らう。命に感謝し、命を食らって、命を長引かせる。


(ごちそうさまでした)


十分程度で完食。誠に美味でした。



「ありがとうございましたー!」


店主へお金を支払い、店を出る。お釣りもべた付いていた。

中々考えさせられた。飯を食う、ただそれだけでこんなに幸せなんだってな。


「……さて」


無事、腹は満たされた。良い間食となった。内心、店を評価する――



(――☆、1つ)



全体的にべた付いていて嫌だった。

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