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勇者パーティ!(2軍)  作者: 元祖ゆた
第2章 ヴァルヴァラ学園
45/87

9時限目 宝石が招くは正義の炎



「ボクは『ベリル・キリコッテ』! 見れば分かると思うけど、ネコベースのワーグ族だよー!」



気さくな感じで自己紹介をする()()()こと――ベリル。



(……年下、か)


――俺は、その人の言動や立ち振る舞い、品格、()()から、大体の年齢を区別している。



俺の勘は()()()()()。”仁義礼智信”の不良街道を突き進む最中に得た、俺なりの()()と言えよう。



(年上か、年下か。大事なファクターだ)


年功序列を重んじる俺としては、無くてはならない特技である。これにより、弁える所は弁えている。

特に、今俺は良く分からない環境にいる訳だ。自分の芯だけは曲げぬ様、向き合っていかねばなるまい。


「そうか。宜しく」

「よろしくー。あ、ベリルでいいから」

「分かった」


スッと、さり気なく手を差し出してきた為、流れで握手する。

中々、友好的な奴の様だ。喋り口調も落ち着いている。


……手には肉球でも付いてあるのかとも思ったが、普通の手だった。


(何れ機会があれば触ってみたい……猫の肉球)


あれって柔らかいのだろうか? 案外固いのだろうか?

ううむ、気になる。何処かに野良猫はいないのだろうか……。


(いや……この世界の場合、『野良魔猫(のらまねこ)』か)


――日々の勉強で分かった事だった。この世界では動物自体が()()である。

言い方が違うだけであり、魔物を食べたり、ペットにしたり、討伐したり……扱いは動物と同じである。



ただ一つ……”魔力”と言う、()()()()()()()()()()()()()()()()()だけが異なる。



「キミは?」


……おっと、肉球から思考がズレてしまったな。


当たり前の事だが、名前を尋ねられる。


(名前……教えないといけないか……)


ここは流れに乗って、同じく自己紹介した方が良いだろう。先程の()()()とは訳が違う。


(と言うか、彼女が特殊過ぎたんだ)


――ここまで考える事は無いんだよ普通は。一発目で変な絡まれ方をしたから、後を引いているじゃないか。恨むぞ、ラリ子。


「俺は――」


俺も自己紹介をしようとしたところだったが、ベリルの背後から2人組がやって来た。



「おおおおおおおおおおい! ベリルゥ!! テメ、こんな所にいやがったのかよ!?」



( !? ……チッ! うるっせェな!)



静かな図書棟だと言うのに……工事現場で話すレベルの声量じゃねェか。ボリューム間違ってんぞコイツ。


慌ただしい登場人物に、周囲の目が一斉に向くが、コイツは気にしていない様だ。

鈍感なのか、敢えてやっているのか、詳細は不明だ。



頭の上に()()()()()()がある青年だ。多分年上。あと、ワーグ族。


長身の坊主頭で、赤と白のチェックシャツを……ジーパンに”イン”している。俗に言う『シャツイン』である。



(随分とまぁ、古風のヲタクファッションだな……)



最近見かけなかったから、逆にレア度が高いのかもしれない。純正異世界産だしな。


(にしても声デケェしテンション高ェわ)


耳を抑えながら、やって来た古風ヲタクを笑顔で迎え入れるベリル。


「ちょっと散策してただけだよ」

「はぁ? 何ですかはぁ? 何様なんですかテメェは!! んなら俺らに声かけてから行けよな!! ワンチャン帰ったかと思ったぞ!!」



――やっぱ声がデケェ!



激しく唾を飛ばしながら、大声でベリルに詰め寄る古風ヲタク。強い言葉とは裏腹に、その表情は楽しそうである。


「帰る訳ないでしょ、ここまで来て」

「はぁ? 誰が言ってんだテメ! 前回のライブの最中『萎えた……』とか言って帰ってる奴がよぉ!?」

「しょうがないじゃん。あん時腹痛かったし」

「足んねぇって気合がよォ! その点オレは全通(ぜんつう)してっから!」

「そんなんでマウント取るなって」

「そ・ん・な・ん~~~~???? かぁ~っ! ”お兄ちゃん”が聞いて呆れるな! そんなんだから”トップオタ”になれねぇんだよ! ランちゃんが可哀想だぜ!!」

「別に上を目指してはないよ? ランちゃんがいつも通りいてくれたら、それだけでボクは幸せさ……」

「出た出た”後方彼氏面(こうほうかれしづら)”野郎が。その点オレは『トレアちゃん』に毎回顔出してっから! ……最近オレにだけ”レス”くれてるんだよな~~!!」

「気のせいでしょ」

「は? え、はぁ? お前マジはぁ? トレアちゃんマジオレの事ワンチャン好きだから!!」

「リアコきっしょ」

「はぁ? お前はぁ? 殺すよ(暗黒微笑)?」



(……何語喋ってんだコイツら……!?)



ちゃんと聞いていても分からない単語がチラホラと……。駄目だ、俺には理解出来ん。


(つーか、2人共超早口で聞き取れねぇよ!)


多分、”ヲタク用語”と言うか、”アイドル用語”だろうけど。トップのオタクである”トップオタ”とか、リアルに恋してるの略語”リアコ”は聞いた事ある気がする。


見知らぬ外国語を聞かされている様な気分にさせられた。こここそが、()()()()()()()()



「――いたいた。んんwwwwベリル氏、急にいなくなったからビックリしましたぞ?」



……まーた癖の濃いキャラが出て来たナ?



突如ヲタクの影から、垂れた小さい耳のワーグ族が現れた。


低身長小太りでメガネをかけている。白のTシャツにジーパンとシンプルだが、暑がりなのか、タオルを首に巻いている。



(『ブタベース』のワーグ族ってとこか)



絶対そうだ。全体的なフォルムが()だ。

――これは別に蔑称的な意味ではなく、コイツがまんま豚っぽい姿形をしているからだ。



「『アントラー』氏と共に心配しておりましたぞ? ブヒッwww」



( !? )


今! ブヒッって言った! ブヒって言ったぞコイツ!

こんなん絶対ブタベースだろ! ……いやマジでバカにしている訳じゃない。 



「あー……。悪かったね。でもま、そのお陰で――」


――油断をしていた事は間違いない。この3人の独特な空気に、ついて行けて無かったからな。第三者視点で眺めていた。


急にベリルに腕を取られた。反応が送れ、取られてから気付く。不覚である。



「ここに、新たな”お兄ちゃん”を発見したんだよー!」

「 !? 」



――はぁ? 誰がお兄ちゃんだコラ!? しばくぞ!!


「ちょっと待て。俺は別にお兄ちゃんじゃ――」


俺が訂正しようとするが、それよりも周囲が盛り上がってしまう。


「おー! そうなんか! オレと()()が被んなくて良かったっつーの!」

「同担拒否、乙ですなwww」

「草生やすなバーーーーーーカ!! ぶち殺すぞクラァ!」

「ガチ恋勢www」

「マジ殴るかんなマジで」



……俺にも喋らせろや。



完全に俺を置き去りにして話が進んでいる。つーかブタ、草生やしてんじゃねェよ。


目の前で、卓球の超高速ラリーを見せられている気分を味わった。


若しくは、初期は主人公の敵として立ち塞がり、仲間になってからは解説役に回ってしまったキャラみたいだぜ。


「つーか何なん、君達……」


思わず口を突いて出た、心からの言葉だった。



「「「!」」」



すると、突如3人共が喋るのを止めて、俺の言葉に反応した。


(こ、これは……!)



「は~~~~~~い! 甘やかしてくれる幼馴染は……大好きでぇ~~~~す! トレアちゃんの心に、いつも寄り添う存在になりたい! トレアちゃんの幼馴染になりたい! 『アントラー・メイプル』で~~す!!」



「……はーーーーーーい。クールビューティ、足りないよ! 冷静なきみを思うと、誰よりも体が熱くなる。リップ(ねえ)の弟になりたい。『パール・ショーロ』……」



「はぁ~~~~~~い☆ あざとさはぁ、大・正・義! ぜんぶ、ぜぇ~んぶ、ランちゃんの虜になっちゃった~~☆ ランちゃんのお兄ちゃんになりたい☆ 『ベリル・キリコッテ』だよぉ~~☆」



「そう、オレ達!」「そう、オイラ達!」「そう、ボク達!」



目の前で、3人並んで其々可愛らしいポーズを決める。




「アクアマリン非公式ファンクラブ――『宝石箱(ほうせきばこ)』だ!!」




………………。



(何だコレは!?)



何なんだコレは?


え……マジで何なんだコレ。俺は今、何を見せられていた……?


「よーし、決まったねー」

「いや、まだキレが足んねぇな!」

「我ももうちょっと、クールっぽさを出さないとダメですなwwwブヒッwww」


放心している俺をよそに、内輪で盛り上がっている。


……久々だ、こんなに置いて行かれた感覚は。

重要な点は、()()()()()()()()()()()()()()()()()



「つー訳でよ、オレはアントラー・メイプル! トレアちゃんはオレの嫁! 宜しく!」



握手を求められたので、反射的に手を握った。大分熱が籠っている。



「我はパール・ショーロでありますwww。んんwww宜しくお願いしますぞwww」



古風ヲタク――アントラーの手を握ったかと思えば、隣のやけに草を生やす豚と手を握らされていた。


……ジトッと湿っている。


(なし崩し的に握手してしまった……)


あまり関わりたくないタイプのグループに名乗られてしまった。

昔の――ヲタク時代の記憶が蘇りかけ、前から後ろへ髪をかき上げる。


名乗られたからには、名乗らねばなるまい。それが礼儀というもの。


「俺は――――」


今度こそ名乗ろうとしたタイミングだった。いつだって、世界は丁度良い時に邪魔をする。




「ちょっと!」




声をかけられた。まさか、宝石箱の4人目のメンバーか?




「さっきから煩いんだけど!」




……絶対に違うな。



――少女だった。恐らく、同い年くらいだろう。


燃える様に真っ赤な赤い長髪の、ツインテール。髪留めは真っ黒いリング。


勝気なツリ目、髪の様に赤い瞳。しかし、充血していると言う訳ではない。美しい夕焼けの様な瞳だ。


鋭い爪のイヤーカフを耳に付け、尖った八重歯が顔を覗かせている。



そして何より――()()()()()()()()()()()()()()()()



全体的にドラゴンの様な特徴を持っている。爪は鋭く、爬虫類の尻尾。



(『ドラゴニュート族』……だ)



――ドラゴニュート族。旧名『竜人族(りゅうじんぞく)』。竜の如き鱗を持ち、二本角と尻尾が特徴。防御力が高い。


元々のツリ目を、より鋭くさせ、()()を睨みつけている。


「ここは図書棟。皆静かに勉強してるんだから、そういうのは外でやってよね!」


ごもっともな、至極当然な事を、()()を見渡し、注意してきた……。



(……………………は?)



俺も?



「あぁん!? 何ですか誰ですかテメェはよぉ!? 偽善者ぶって何正論ブチかましてんだクラァ!!」

「偽善も何も、迷惑してるから注意したんだけど?」

「め・い・わ・くぅぅぅぅぅぅぅぅ?? はぁ? てかはぁ? オレらに喧嘩売ってんのかクラァ!」


逆ギレしながら、少女へと突っかかって行くアントラー。支離滅裂で、()()()が悪者じゃねぇか。



(てか……は? 俺も、コイツらと同類だと思われている……?)



「いやいや、アントラー。流石に分が悪いって。完全にボクらの方が悪いし」

「そうですぞ。サイクル戦は退く事も大事ですぞ?」

「っせぇ!! 喧嘩売られて引き下がってられるか!」


お仲間に制されるも、前に前にと好戦的であるアントラー。

そんな様子を蔑視している少女は、ニヤリと笑った。


「……何? ウチと喧嘩したいの?」

「そうだ! オレはなぁ、正義感振りかざす偽善者が一番嫌いなんだよ!」

「だから、ボクらが一方的に悪いって」


ベリルの言葉も何のその。喧嘩のスイッチが入ってしまっているアントラーは、最早今すぐにでも殴り掛かる勢いだ。


正直、俺よりも好戦的だと思う。理性のある分、俺の方がマシだ……よな?


「いいね! 打ち負かして反省させるから!」


何故か乗り気な少女は、図書棟の裏を指差した。



()()()()()でかかってきな!」



(やっぱり俺も含まれてる!?)



「行くぞ! テメェら!」

「あー、もうー……」

「仕方ないですな。喧嘩する以外ありえないwwww」


血気盛んに出ていく宝石箱を見送ろうとするが……少女に腕を掴まれる。


「何ボーッとしてるの? アンタの性根も叩き直してあげるから!」

「え? え?」

「ほら、裏に来な!」

「いや、正直俺関係ない――」

「仲間を無視して逃げる気? ……アンタにはより多く、お灸をすえる必要がありそうね!」



(どうしてこうなる……!!)



巻き込まれる形で、俺は少女に引きずられながら図書棟を出た……。

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