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勇者パーティ!(2軍)  作者: 元祖ゆた
第1章 異世界番長
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第22話 いざ征かん、拳闘の道



王家の間を出て、長い廊下を歩く。



ボンタンズボンのポケットに手を入れ、胸を張り堂々と進む。


()()()()()()()()()()()()()の殺伐とした学校生活を送ってきた為、それが体の中まで染み込んでいる。


「――ちょっとアンタ!」


俺を追いかける形で、駆け足でやって来るのは第3王女のクルル。桃色のツインテドリルが振り子の様に風で揺れる。


その表情は――怒りと困惑の混じり合った、形容しがたい迷いの表情である。



()()()()()()()()()なんて……どういう了見なのかしら!?」



「……ああ」



――先程王妃から提案されたのは、ヴァルヴァラ騎士団に構成される『ヴァルヴァラ騎士』を育成する教育機関『ヴァルヴァラ学園』への入園であった。



異世界入りをしてしまった為、俺の最終学歴は高校1年。勉強も不十分である。


それを憂いてか、王妃からの学園入りの提案だったのだが――


「言っとくが、別に断った訳じゃない」


勇者パーティの時は断ったが、学園入りは保留にしてもらった。


「入学のタイミングは毎月あるようだしな。今月は保留にしてもらっただけだ」

「それはそうなのだけど……!」


余程俺に何か思う所があるのか、クルルはやたらと食って掛かる。狂犬に噛まれた気分だ。


「アンタの事だから、また”中途半端”だからとか、そう言う考えだからとは思うのだけど!」

「良く分かってるじゃないか」


御明察。俺は生半可な気持ちで、学園に通いたくはない。


「はぁ……何でそんなに拘ってるのか分からないけど……取り敢えず入ってみるって考えはないのかしら?」

「無い」

「清々しい程の断言ですわね」


再度、はぁーーーー、と頭を抱えるクルル。何故俺はコイツに悩まれなければならないのか。


「俺はこういう生き方なんだよ、分かるだろ? 何かに取り組むにしろ、信念を持って、軸の通りに歩みたい……変な事じゃないだろ?」

「それはそうだけど……アンタ極端なのですわ!」

「極端でいい。でないと、俺の目指す”硬派”にはなれないからな」

「そもそもアンタの言う硬派って何なのかしら?」

「……」


クルルの何気ない疑問に、俺は答えない。


――どうせ分かってもらえないからだ。


これは俺の『美学』だ。分かるのは自分だけでいい。俺はどこまでいっても、何をするにしても、”五常”と”硬派”を目指し、護る。


それだけだ。それだけでいい――。


「別に、アンタみたいな()()()()()の事なんてどうでもいいのだけれど、せっかくお母様がアンタの事を心配しておりますわ。悲しませる事だけは……するんじゃないですわよ?」


……クソガキが俺に突っかかるのは、そう言う事らしい。『王妃の好意を無下にするな』、そう言う事だ。


俺は髪をかき上げ、クソガキを睨む。



「俺は俺の道理を通す。無論、拾ってもらった王妃に対してもな。だけど、俺の道は俺が決める」



「……アンタには『界塵特効』という、何を変えるだけのポテンシャルがありますわ。そのポテンシャルを発揮せずに、自ら”()()”を閉ざす真似だけはするんじゃないですわよ!」

「選択次第だ」

「……ふん、だからアンタはクソニートなのですわ! 死ね!」

「あ゛?」

「ヤバ――」


俺に暴言を浴びせ、一目散に逃げ出そうとしたクソガキの頭を、右手で鷲掴みにしてアイアンクローをキメる。


「ぎゃああああああああ!! 痛い痛い痛いですわーーーー!!」

「年上に対する敬意がねェな……君ィ!?」

「ごめんなさいごめんなさいですわ!!」

「……フン」


俺が手を離すと、すかさず一定の距離を取り、安全を確保するクソガキ。警戒心がありありと見える。


「ぜぇ、ぜぇ……アンタこそ、年下の女の子にする行いじゃないですわよ……! ましてや第3王女ですのよ?」

「知るか。ムカついたらしばく、それだけだ」

「んなっ!? なんて野蛮な思考のクソニートなのかしら!」

「もう一度、()()()()()()()?」


驚く程の反射で、俺から更に距離を取るクソガキ。


「暴力に訴え始めたら人間終わりですわよ?」

「それなら大丈夫。俺は既に終わった人間だからな」

「! コイツ、()()()()ですわ!!」


脱兎の如く、俺から逃げて行ったクソガキ。恐るべき速さであった……。


「学園ねぇ……」


クルル去った後の静まり返った廊下で、独り言ちる。


正直、良い思い出はない。オタク時代はそこそこだが、それ以降は闘争の毎日だった。




「いっそ、学園の番長でも目指してみるか?」




――なんて、面白くもない冗談を呟いて、苦笑するしかなかった。





……。



…………。



………………。



――4月19日、日曜日。

あっという間に、世界一拳闘大会当日である。



快晴の空の下、外出するのは気分がいい。


「さ、助手席へどうぞ。マオさん!」

「お、おお……」


観戦券は2枚あったため、ティタを誘い、一緒に見に行くことになったのだが……。


「これ……ティタのか?」

「はいっ! 専属メイドは、ご主人様を如何なる場所にもお連れ出来る様、免許と()()は必需品なんです!」

「マジか……!」


開催場所は、ルザブルの南にある大会場『ブレイキ座』。

人気の少ない僻地に建てられているようで、城から距離があり、その上そこまで行く為の移動手段が限られている。


ならば、俺らは何で出発(でっぱつ)するかと言うと、長方形の浮いている車――()()()()()()だ。


城の格納庫に収められている沢山のファルセスタ。その中の一台に乗って、颯爽と俺の前に現れたティタ。


オレンジのボディで、見た目は角の丸い長方形である。車と言うか、動く長方形である。

窓が開いており、満面の笑みのティタである。


「乗って下さいっ!」


車っぽい乗り物を運転する獣人メイド……情報量が多すぎる。


「失礼」

「どうぞどうぞ! 狭いので気を付けてくださいっ」


恐る恐る助手席の扉を開け、助手席に座る。

中は案外普通である。ただ、女子らしくフローラルな匂いがする。


運転席に座るティタが、意外にも様になっている。


「窮屈かもしれないですけど、シートベルトを締めてくださいね」

「 !? え、シートベルトがあんの!?」

「? なきゃ危ないじゃないですか?」


そりゃそうだ……付けないと危ないからな。


「いや……異世界なら魔法の力で無いのかと」

「あはは、そこまで魔法は万能じゃないですよ」


そう言って、運転席下部にある()()()()()を引っ張り、右腕に付けていた、これまた()()()()()()()()()の穴に繋げるティタ。


「……それは?」

「『エンジンプラグ』です。こっちのリストバンドは『エンジンバンド』。プラグを繋ぎ、バンドから魔力を流し、起動させるんです」


次の瞬間には、ゴゴゴゴッ、とファルセスタが嘶き起動した。


「よし、出発しましょう!」

「……やっぱ便利じゃん」

「?」


不思議そうに首を傾げるティタ。これが当たり前なのだから、突っ込まれても困るか。


――侮りがたし、異世界。


「行きますよー!」

「おう、お願いします」


大会は9時から始まる。その為、午前8時、俺達は城から出発した。


腹の奥底にまで響く様な重低音と共に走り出す。


ティタの巧みな運転で、東門から出てスイスイ道路を進む。

正門の前は歩行者天国であるルザブル大通りが横切っている為、別の門から出なければならない。


「ん~~」


運転席のティタは鼻歌交じりで運転をする。見た所かなり慣れている。


「普段も運転してるのか?」

「専属の前までは良く運転してました。ピーちゃんとドライブによく行っていましたね」

「ほう」


それはとても楽しそうだ。

気の合う仲間と小旅行……テンションがアガる事だろう。


(もっとも、俺には気の許せる友はいなかったが……)


番長とは孤独なものなのである……多分。


「いいファルセスタだナ?」

「そう思ってもらえるのは嬉しいですっ! この『棺桶型(かんおけがた)』は人気車なんですよ!」

「棺桶型?」

「形が棺桶みたいなので、そう呼ばれています」


……随分と不吉な呼び名だな。


気にしない事にして、暫しドライブを楽しむ。


流れていく景色はどれも新鮮だ。様々なビル、見た事ない建物、人、物……。


「……良い所だな、この国は」

「! ですよね! 良い国ですよ!」


通り過ぎる背景は平穏そのもの。市は賑わい、盛り上がっている。


治安が良いという事だ。不良の跋扈する天花市とは天と地の差だろう。


「そう言えば! マオさんに是非食べてもらいたい店があるんです!」

「ほう?」

「すっごく美味しいオムライス屋さんなんですけど」

「オムライスか……いいな。俺はオムライスについては舌が肥えているからな」

「ふふっ、なら気に入ってもらえると思いますっ」


――時折ティタと雑談をしながら、ファルセスタは街を翔けて行く。


「――拳闘大会なら結構見ますね」

「そうなのか。なんかオススメの選手なんているのか?」

「オススメと言うか、今頭角を現しているのは『ライフ・アベーナ』選手ですね」

「強いのか?」

「今の所負け無しですね!」

「それは強いな」

「はい! ただ、まだ大会とかで優勝した事はないので、今日の大会が初のタイトルになりそうなんです!」

「俺はその試合に立ち会えるという事か……燃えるな」


無敗で勝ち進んでいる拳闘士ライフか……どんな男なのか、興味が湧いてくる。


「因みになんですけど、ライフは拳闘士の団体に所属してまして、そこで呼ばれているあだ名があるんです」

「フン、何て言うんだ?」



「『団体番長』」



「 !? 」

「……どうですか? ちょっと興味湧きました?」

「ちょっとどころか、超湧いた」


もしかしたら、団体番長であるライフの試合を見せたくて、ウルルはこの観戦チケットをくれたのかもしれない。


とすれば……かなりの漢である事が予想される。有難い事だ。


徐々に景色が長閑な景色に切り替わる。

畑や田んぼが多くなり、民家も少なくなっていく。


「田舎って感じだ」

「実際、この辺りは田舎ですね」


辛うじて道路が舗装されているからマシだが、なければただただ広い農村部になりそうだった。


俺の住んでいた辺りも田舎だったが、ここまでではない。ここは相当な田舎だ。


「見えてきました!」

「……アレか」


田舎の中に突如現れる近代的な巨大野外ステージ――ブレイキ座。


デカくて長い鉄の柵で囲われており、2段3段と階段状にギャラリーが戦場を囲う。


作りはヴァルサリル城の訓練塔に似ているかもしれない。

違う点をあげると、ブレイキ座の方が大きく、完全に野外だという事だ。雨が降ったら絶対に濡れるだろう。


「運転ありがとう」

「いえいえ! あたしこそ、誘ってくれてありがとうございます!」


隣接しているこれまた広い駐車場にファルセスタを止め、俺とティタは降り立った。


「結構混んでますねー」

「人気だったんだな」


駐車場には沢山のファルセスタが止められていた。そして、様々な人種が観戦にやって来ていた。入り口付近は人込みになっている。


「時間ギリギリに来たのは失敗だったかもな」

「そうかもですね。取り敢えず行きましょう!」

「ああ」


期待に胸と硬派を膨らませ、流れに沿って入口へと向かう。


――俺の決意の後押しになってくれることを、願っているぜ。団体番長!





………………。



…………。



……。



――ブレイキ座の選手控室の1つ。蠢く闇があった。



「どこで道草をしているのかと思えば――」


()()()、と影の様に()()()()()自然に現れたのは、グレーのスーツの老人である。


「こんな所で男漁りとは……貴方も隅に置けませぬな」


()()()()()()()()()()()()()、まるで()()()()()()()()()()()()()()()登場した老人であったが、相手は対して気にしていない。



「……あら、()()()がどこで何をしていようと、()()には関係ないのではないかのう?」


十二単を着た、妖艶な美女である。

まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()かの様な、立ち居振る舞い、出で立ちである。


「そうですな。貴方がどんな事をしていようと、私には関係がありませぬな」

「そうじゃろう。……安心せい。そちの策にはちゃあんと参加するでのう」


笑みを零す美女。しかしその笑みには、邪悪さが滲み出ていた。


「結構で御座います。それでは、こちらからの合図と共に、宜しく頼みますぞ」

「ハッ! そんな事、言われるまでもないわ!」


最早邪悪さを隠さず不気味に笑う。ケタケタと、笑う度に口から()()()()()


気付くと、老人はいなかった。夢幻の如く、消え去った。


「……相変わらず、気味の悪い爺よのう」


懐から扇子を取り出し、パタパタ扇ぐ。


「武器は既に手中。ならば、直前まで()()()()()を楽しんでも良いだろうに」


次の瞬間、




「……【色欲(しきよく)】」




()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()



――明らかな”異常”。



「食べるなら、やはり屈強な男に限るのう……!」



舌なめずりしたその先に、ライフの控室があった――。

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