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1回目 天地創造、なんて大袈裟なこと言えないよな。

作者の碧海ラントです。

メタ要素しかない内容になっておりますのでご注意を。

気の向くままに、行き当たりばったりで書いております。

それでは、舞台も整っていない本編をどうぞ!

   1

 まずは僕のことを紹介しようか。

 神田カンタベリーだ。外国系の日本人かな? と思われるかもしれないが特にそういう設定はない。登場人物のネーミングに理由はないのだ。すべては適当という一言で片付く。

 僕は見ての通りこの物語の主人公……

「待てやおらぁ!!」

 ぶごぉっ!!

 横からいきなり人の顔殴るなんてどういう了見だ。あ?

「それはこっちのセリフじゃ! ……いや、お前のセリフか。ってともかく! 勝手に! 主人公! 名乗んなって話だよ!」

「僕が最初に出てきたんだし、視点も僕にある。それならもう僕が主人公でいいだろ!」

「チッチッ、甘いわね」

 そう言うと、甘露寺みいかというその少女は腰に手を当てて仁王立ちした。

 みいかのポニーテールが風に揺れる。

主人公しゅじんこうとは、フィクション作品(小説・映画・ドラマ・漫画・アニメ・ゲームなど)のストーリーの中心となり物語を牽引していく登場人物。ちなみに日本語の主人公という語は坪内逍遥によるものとされるわ。だから、視点があっても私がストーリーをけん引していけば私が主人公なのよ! 分かった?」

「そんなwikipediaの『主人公』の記事を堂々とコピペしてくるような奴に主人公任せられるか!」

 ちなみにwikipediaの「主人公」の記事を閲覧したのは2020年12月26日です。内容はその時点のもの。

「何なのよ! 別に論文書いてんじゃないんだし! とーにーかーくー! 主人公は私がやる!」

 何でこう頑固なんだ!

「ま、まあまあ、別に民話とかそういう系の話でもないんだから、主人公とかあまり硬いこと言わなくてもいいんじゃないかな? かな?」

 横から僕たちの喧嘩を止めに入った人間がいた。

 名前は加藤……え? 何? 順番に登場人物の解説していく習慣やめたいからまだプロフ言うなだって? じゃあ加藤のことなんて呼べばいいんだよ。しょうがないから加藤でいい? OK。

 加藤というのは美少女だ。いやまあみいかも美少女なのだが、こちらはおっとり系。眼鏡っ娘で巨乳で……ととにかく癒しオーラ前回な僕の幼馴染なのだ。

「ありがとう。で、細かいこと言うようだが」

 こういうのははっきりしておかねばならない。でないといろいろな追及を受けた時に弁明のしようが無くなる。

「加藤、おまえ、語尾の『かな』を二回行ったのはなぜだ!?」

 他作品のネタの使用は慎重に。これ鉄則。

「どう考えても今期テレビアニメの新プロジェクトが放送されてて人気になっている同人ゲーム原作の某作品の主要キャラクターのしゃべり方だろ!」

「ひえええええ! ご、ごめんなさいごめんなさい! ちょっと真似してみただけなんですぅ!」

「そういうのはなるべく避けてくれ」

「はぁい」

 さて、とりあえず僕とみいか、加藤の三名がそろったが、これだけではどうしようもない。僕たちがいる場所がなければ話にならない。

 キャラクターがいて天地がないというのはずいぶんとおかしな状況だとは思うが、まあ形式なのでお付き合いを。


 はじめに(?)天と地が創造(想像)された。

 地はとりあえず平坦で、なぜか適度な明かりが地を覆っていた。ちなみに座標があったりなかったりする。

「とりあえず太陽を」と誰かが言った。すると太陽があった。

 それを見て僕はうなずいた。明確な光ができると必然的に闇もできる。

 光は昼、闇は夜(基本的に)。これ常識。夕方にするのは面倒臭いので、いずれ夕方になり、夜が訪れるだろうという感じでご勘弁を。で、第一日。ちなみに第一日なのになぜか日曜日だった。

 また誰かが言った。「じゃ、ま、自分都会人だから街中ってことで。ビルとビルの間に空が見えてる的な感じで」。するとその通りになった。

 この場合空を定義してなかったが、小説とは読者と作者の共通認識として存在する言語に頼らざるを得ないものだ。要するに空は空。水色の空。

 夕方となり、朝となるプロセスは時系列を引っ掻き回したくないので省略。


 しかし奇妙な話だ。天地が創造(想像)される前に僕たちキャラクターが存在しているだなんて。

 あと、ツッコミなんだが「みいかのポニーテールが風に揺れる」っていう描写あったけど、天地がなかったら風も吹かないよね。

 ともかく舞台が整ったところで改めて解説を。

 ここはA市という日本の政令指定都市の、B区という場所。現在地は繁華街で、いろんな店が軒を連ねている。高層ビルも多く、空にその灰色の体を伸ばしている。

 僕たちは、学校が休みになったということでここへShoppingに来ているわけだ。

「さあて、何買おうかしらね」

 みいかはこの設定が付け足されたことで機嫌を直し、鼻歌まで歌い始めた。加藤も何だかうれしそうだ。

「まずは映画ね。今日公開されたばかりの『クロスワード』っていうやつ。漫画原作なんだけどストーリーが凄いのよ。とにかく見てみたらわかる!」

 そんなにすごいストーリーなのか? この作品も見習いたいものだな。

「そんなこと言ったって、これはメタ要素の蠢くままにノリでストーリーを展開する予定だ、ってなってたじゃん。軽い伏線張りとかはあるかもしれないけど、基本行き当たりばったりよ」

 そうだったな……。失念していた。そんなことではなろうでもヒットしないと思うが。

「ま、それは作者の問題よ。逆に私たちにとってみれば、筋書きを気にせず自由気ままに好きなことができるんだから、ラッキーってもんよ」

 なるほど。確かにそうだ。僕たちは筋書きに縛られることなく、好きな時に好きなことをできるわけだ。

「学校はちゃんと行ってね」

 え?

 声とともに天から降ってきたのは六法全書。

 なんてこった。この世界にも「日本国」が存在し「教育を受ける権利」「教育を受けさせる義務」が存在するのだ。ここまで整うと実質的に現実世界と同じ、つまり僕たちは学校に行って勉強しなければならないのだ。

 はあああああああああああああ。

「まあまあ、嫌なことなんか忘れて、今は休日を楽しみましょう!」

 とご機嫌なみいか。

 まあ、それが最善だろうな。


 映画はまあまあな出来だった。

 原作ファンたるみいかは「ううん、大事なシーン無くなってたし、キャラ立ちもイマイチ……監督さん何考えてたのかな……」とぶつぶつ呟いているが、初見さんたる僕にとっては面白かったぞ。

 十二時きっかり。そろそろ空腹を覚える頃だ。

「ま、とりあえずご飯ね。レストランとか行きたいとこある?」

「あの、この『メタフィクション』っていうレストランがおいしいそうですよ。津ばリゴっていう口コミサイトに載ってました」

「そう? どれどれ……うわぁ! おいしそう! このトリストラムシャンディ? っていうハンバーグとか、もう見るだけでご飯三杯は行けるわ~! ここよ! ここに決定!」

 映画館から歩くこと五分。メタフィクションとやらは、ビルとビルの隙間に挟まって押しつぶされそうになっているような小さなレストランだった。

「ここ? ここで本当にあってるの?」

「はい、確かそのはずです。あ、コメントによるとこの店は奥に長いみたいですよ。いわゆる『ウナギの寝床』ってやつですね」

 埃っぽい木製らしきドアを押す。ハロウィンでもないのにカボチャの形をしたベルが「ぢりんぢりん」と鳴った。

「ちょっと、あんた『引く』って取っ手に書いてあるわよ」

「いやでも、押して開いたんならいいじゃないか」

 そしてドアの向こうに広がっていたのは――


 美女、美女、美女!

 しかもよく見ると全員の耳が尖っている。なろうとかのファンタジーでよく見るエルフだ。

 露出の多い服装。色んなところが際どく見えそうで見えない。

「あら、いらっしゃーい。ご飯にする? お酒だけ? それとも、あ・た・し?」

 大きな胸を強調するするような決めポーズ。胸のほくろがAccentになっていて、なんかもう、たまりません。なめまかしい姿勢に引かれてふらぁぁぁっと引き込まれそうになる。

「おい、引くって二回言ってんぞ」

 そんな作者の忠告も今の僕の耳には入らない。

 Ah。

 このまま、夢の世界でエルフさんたちと戯れて……

「見とれんなバカ!」

「ごぶぅ!」

 みいかにぶたれた。よろめいたところもう片方の頬がカウンターにぶつかって二連撃になった。

 右の頬を叩かれたら左の頬も出しなさい。

 そんな一節が頭をよぎる。

「で、何この店」

 そういやそうだった。ここは日本。ほかのどの国よりも早く超高齢化社会に突入した国だ。そんな場所にエルフなんかいるわけがない。コスプレか?

 考えるより行動。エルフお姉さんの。耳を引っ張ってみるが、外れるわけでもなく、どこまでも地肌だ。

 つまりリアルエルフと考えていいんだろうか。

 カウンターにパンフレットが乗っている。「OSU!」と書かれてある手作り感満載のパンフだ。リズムゲーム?

 隙を見てポケットにパンフを押し込む。

「とにかく、こんな怪しげな風俗店早く離れるわよ!」

「え? でも……」

「正気に戻れアホ!!!!!」

 首根っこ掴まれて強制的に引きずり出された。

 ドアがカランカランと音を立てて閉まった。

「シャキッとしろ! あんたね、何あんな十八禁な店入ってんのよ! この変態! 失望したわ! 視点人物失格ね! 今から視点を移してもらうよう作者と交渉してくる」

「待ってくれえええ! それだけは!」

 このBe able to commentのPositionは何としても僕のものだ!

 なぜなら。なぜならだ。

 ホームズとワトソンを思い出してほしい。ポアロとヘイスティングスでも、遡ってデュパンと「私」でも、あるいはもっと身近に涼宮ハルヒとキョンでもいい。

 視点は、行動する人物ではなく、その脇の人物にあるものだ。その人物を指すような用語があった気がするが忘れた。もちろんそうでない小説も数多あるが、この小説ではそういう視点を取ると決められているのだ。そしてこの場合、行動する人物とは間違いなくお前、みいかだ。だから視点はみいか以外の人物で、かつ冷静なコメントができる僕にあるべきなのだ。

「なら別に加藤さんでもいいじゃない」

「え? む、無理ですぅ! 私じゃ知識量でも神田くんに劣りますし……」

「構わないじゃん。上手いこと喋ればいいんだし」

「だめですよ! 私は、その、人見知りなんで、注目されるような立場だと緊張してしまって……」

「そう? ならいいわ。ま、今回は視点はあんたに預けておくけど」

 みいかはいきなり僕の襟をつかんで引き寄せた。


「次、変なことやったらもれなく視点は私に移るから」

「は、はひ……」


 そしてみいかは僕の襟から手を離すと、改めてドアを開けた。

 ドアを引いて開けた。

 すると、中には落ち着いた雰囲気のレストランがあったのである。壁にはタイムズの書体で「メタフィクション」と書かれている。

「……仮説だけど、このドアを『押した』から『押す』、つまり『オス』が入りそうな風俗店に時空がつながったんじゃないかしら」

「あ? ああ、そうかもな」

 僕たちは中に入って、四人席に座り、善良そうなウェイターに料理を注文した。三人とも「トリストラムシャンディ」をライスで注文した。飲み物はみいかがコーラ、僕と加藤がウーロン茶だ。




連載は不定期になると思います。

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