あめの日と指輪
「今日も雨だわ」彼女に浮かれ声。「いよいよシーズンね」
「そんなに楽しみ?」彼の口調は沈みがち。「こいつは妬けるな」
「あら」彼女が口を尖らせる。「嫌いになったの?」
「まさか」彼が肩をすくめて一言、「ただ、裏の意味を考えるとね」
「裏って?」首を傾げて彼女。
「紫陽花だよ」彼が思い切る。「部屋で育ててるだろ。花言葉は『移り気』じゃないか」
目を見張り、彼女が次いで微笑む。「心配してるの?」
「もちろん」彼が懐から小箱。「だから、受け取ってくれないか?」
「私の紫陽花はね」彼女が差し出して左手。「白なの。花言葉は、もう分かるでしょ?」
「なるほど、『寛容』か」彼が開いた小箱にプラチナの指輪。「じゃ、これは薬指に填めてくれるね?」