表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
960/1359

終極の戦いへ


「そうか。そうなったのか」


 ガーディア・ガルフ、すなわち人類史上最強の男の敗北と昏睡。その影響はこの戦場に存在していた全ての存在が理解できるほどのもので、その気配を感じ取ったメタルメテオが、直立不動で立ち腕を組みながら静かに呟く。


「その口ぶりからして貴方はこうなることも予期していたといったところかしら。いえむしろ、こうなった場合を予期して動いていたといったところかしら?」

「おっしゃる通りです。偉大なるあのお方は、自身の目的が阻止された場合の事も考えていた。そしてその時に万全の状態で立ち向かえる一員として貴方も選ばれた。ご同行をお願いできますか?」

「もちろん」


 ガーディア・ガルフの真意が鋼の兵の口から明かされ、拒む理由のないアイリーンが頷く。それを見届けると両者は色とりどりの花が敷き詰められた大地を駆け出し、目的地へ。


「そんな…………あのお方が、敗北など……」

「「!!」」


 ものの数秒で教会が視界に飛び込む距離まで移動するのだが、そこで心ここにあらずと言った様子の声が聞こえ視線を真下へ。

 すると生命の気配が感じられぬ灰色に染まった死の大地が彼らの目に飛び込んでくるのだが、その中心には見覚えのある姿が見て取れた。


「あら。貴方は教会まで行く手筈ではなかったの? それに彼は、確か地面の底に沈んだんじゃ」

「なんだが、どうしても避けられない用事があってな。ここで暴れてた。この馬鹿の経緯に関しては知らん。断言できるのは、今のこいつは役立たずのガラクタってことだ」

「ギャン・ガイア殿は知らされていませんでしたが、与えられた役割は私と同じ。つまり奥方様を止めるために、ここに設置されていたのです」

「だろうな。わかってるよ。そしてその誘惑を私は断てなかった」


 迷わず真下に降りた二人が目にしたのは、ほんの数分前まで見せていた本来の姿から元に戻ったエヴァ。そして焦点の合わない目で空を見上げ、うわ言のように言葉を吐き出すギャン・ガイアの姿で、メタルメテオの答えを聞き、彼女は表情を苦々しいものに変えた。


「ねぇエヴァ。彼は」


 するとギャン・ガイアの様子を不安に思ったアイリーンが尋ねかけ、その返答としてエヴァは首を左右に振る。


「言いたいことはわかる。が、見ての通りすぐには無理だ。しかし、だ。業腹ではあるがこいつの信仰心は本物だ。すぐに立ち上がって、私たちの元にやってくるさ」

「あら、意外ね」

「お妃殿ならば彼は絶対に認めないと思っていたのですが」

「思うところがあった、ということだ。いちいち突っ込むな」


 直後の言葉に対してはアイリーンとメタルメテオが目を丸くするのだが、彼らの反応に対しエヴァは投げやりな言葉を吐き出すと前へ。残る二人もその場で立ちすくんでいるわけにもいかず、目的地である教会へと向け進みだす。


 こうして彼らは決戦の舞台へと向かっていった。




「アルさん聞こえていますか。条件をクリアしました。至急各所に連絡を」

「シュバルツさん。こいつが」

「ああ。過去の記憶で見せた神殺しの獣。『ウェルダ』と呼ばれた存在に違いない!」


 時は僅かに遡りガーディア・ガルフ敗北直後。蒼野がそのような連絡を耳につけた機械にしている最中のこと。

 自分たちの目の前に広がる黒い靄が徐々に上へと上がっていく姿を見つめ康太が訪ね、シュバルツは断言する。


 自身の肌を突き刺す殺意に染まった気配。鼻から体内へともぐりこんでくる不快感。そのどちらもかつて取り返しのつかない失敗をした際に感じた嫌な感覚であり、それが再び自分たちの前に訪れた事実に全身の毛が逆立つ。


「あの時はガーディアの体内に戻すことしかできなかった。だが今回は違う。エヴァの奴がこいつをガーディアから引きずり出す研究をして、そのための秘儀を会得した。だから後はこいつをぶちのめすだけだ」


 あの日から今この瞬間まで、彼は鍛えに鍛えた。

 それはもちろん友であるガーディア・ガルフを超えるためでもあったが、同時に今日この瞬間を乗り越えるためでもあり、自然と神器を手にする両手に宿る力は強くなる。


「………………シュバルツ・シャークスこれは?」

「事前に聞いていた情報とは、違う感じがするんだけど?」


 ただそんな彼の前で予想だにしないことが起きた。

 黒い靄が、延々と昇り続けているのだ。ガーディア・ガルフの体にまとわりつかないのだ。

 それは忘れられない過去の事態とは大きく異なる点であり、上へ上へと昇っていく黒い靄の量を前に、彼の背筋に冷たい感触がやってくる。


 拭いきれない不吉な予感。

 『もしかしたら自分は大きな間違いをしていたのではないか』という根拠のない確信。


 そんな彼の気持ちに呼応するように黒い靄はなおもガーディア・ガルフの体から溢れ出すかと思えば突如止まり、桃色の空を遮る雲として漂っていた状態から瞬く間に一か所に集まっていき、


「原点回帰!」

「蒼野!?」

「ガーディアさんの体に纏われてないってことは、今の時点で潰してもいいって事ですよね! それなら今のうちに!」


 シュバルツだけでなく自身も不吉な予感を覚えていた蒼野が、真っ赤な破滅の光を宿した剣を頭上に留まる黒い塊へと向け、色とりどりの花が咲き乱れる大地の上で微動だにしない『果て越え』ガーディア・ガルフを一瞥した後に、あらゆるものを原始の零まで返す光の斬撃を黒い靄へと打ち込む。


 その直後


「え?」

「ふせ、がれた?」


 黒い塊から現れた右腕。それが触れたかと思えば破滅の光を易々とかき消し、その際に吹き荒れた風が黒い靄により形成された塊を吹き飛ばし、


「あれ、は?」


 彼らは見ることとなる。


 現れた影の正体。


 獣の痕跡など何一つ備えていない人型の姿。


 すなわちガーディア・ガルフと同じ姿として現れ、音一つなく色とりどりの花が咲き誇る地面に着地した存在。


「今攻撃したのは」

「!」

「お前か」


 彼は僅かに言葉を紡いだかと思えばその姿を消し去り、蒼野の背後を易々と奪ったかと思えば、頭部へと向け無造作に裏拳を撃ち込んだ。













 千年前、人類は『進化』した。


 たった一人、私が待ち望んでいた人類の限界を超えた存在。それが生まれた。


 彼の登場により時代は先に進むはずであった。しかしその思惑は外れた。


 その結果に私は落胆した。


 だが千年後の今、もう一度、待ち望んだ瞬間がやってくる。


 ゆえに今ここで告げよう。


 『人類よ。抗え。乗り超えよ』


 その先を私は望む。




ここまでご閲覧いただきありがとうございます

作者の宮田幸司です


遅くなってしまい申し訳ありません。体調を崩し少々長く休んでいました。文章も支離滅裂な部分があるかもしれませんが、本日に限って大目に見ていただければ幸いです。


そして戦いはついに最終決戦へ。


現れた最後の敵の姿はガーディア・ガルフと瓜二つ!


戦う前から苦戦が予期される、全章通して最大の戦いがついに幕を開きます!!


それではまた次回、ぜひご覧ください!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ