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偽・生命創造


「奴の使う能力の名は『偽・生命創造』。先程も伝えたが無機物に命を吹き込むというものだ。使用方法は掌に奴自身の特殊粒子を集め、対象に触れる。それだけで瓦礫や木々、それに摩天楼にそびえ立つビルなどを、大小様々な生物や、歩兵に変化させることができる。小石なら蝶や蜂。今目にしたような巨大なビルならば、巨人のようになどのように、ある程度の制限はあるがな」

「聞いている限りものすごく強力な能力に聞こえるんですが、何で身内にまで隠していたんですか?」

「奴自身から懇願された事に加え、お前たちが思っているほど強力な能力ではないからだ」


 パーティールームの端に詰まれていた椅子を持ちだすと各々好きなように座り、外で行われるビルや街灯、木々や看板が大移動を行うことで構築される大編成を、その場にいる者達の大半が見守る。

 その途中で蒼野がオリバーの能力に関し尋ね、唯一この場で詳細を知っているファルツが説明を行うのだが、淡々と語られた内容を聞き、蒼野だけでなく他の者も目を丸くしたり首を傾げた。


「どういう事ですか?」

「万能ではない、ということだ。産み出した生物は兵士としても扱えるが、どれほどのものを変化させようと、一戦力として考えた場合、大したことはない。『一騎当千』程度のランクの者にも容易く敗北し、小石や木々を変化させた程度ならば、複数体で挑もうとも『百鬼薙ぎ』にあしらわれる。しかし逆に諜報として使った場合、任意のタイミングで元の姿に戻る事も可能なため、情報収集には長けている」

「……ああ。それで僕たちの監視を行っていたわけね」


 豪華な装飾が施された椅子に背ではなく腹を預け、組んでいた腕の上に自身の頭を乗っけていたシロバが不服そうにそう言うが、ファルツは首を左右に振る。


「それは俺にルイ殿が禁止している。貴族衆内で不和の原因になるとな。もしも破った場合、そのペナルティはかなり重い。そして奴がこの約束を破っていない証拠がお前だシロバ」

「僕が証拠?」

「もし監視をしているというのなら、奴はお前がミレニアムに協力していたことを意気揚々と伝えるだろうよ」

「…………なるほど。納得した」


 苦い顔をしながらもこれ以上ないほど納得した様子を示すシロバは、それ以上は話す事はないという様子で立ち上がり、一面ガラス張りの窓の前で腕を組んでいたレオンに近づくと、何らかの会話をしながら動き続けている下僕の様子を眺め始めた。


「捕捉しておくと、この能力に掛かる特殊粒子の量は尋常ではない。どのようなサイズであれ一日五回が限度だ。今回のようなに使えるのは、ここが奴のホームだからという意味合いが大きい」

「そんな風に弱点を語ってもいいのかい?」

「土壇場になって頼られても、援軍は出せないという事ですよ壊鬼殿」

「はっ! 言うじゃないか!」

「なるほどなるほどぉ。能力を明かす場合、こういう風に弱点まで伝えないと、無意味に頼られる可能性があるのね。でも黙っていたら、諜報としては最高の働きができるし、こういう大一番で切り札として使う事もできる。お姉さんは納得しました!」

「息子の前でお姉さんとか言うなし。気持ち悪ぃ」

「ふん!」

「痛ぇ!」


 続けて行われた弱点の説明まで聞き、壊鬼は獰猛な笑みを返し、那須鉄子がまとめ、息子の言葉に対し拳骨で返答する。


「何にせよ、これで数の不利は覆された。エヴァ・フォーネスの使役する魔物の類は、数こそ多いものの強さはほどほどだ。この孤島の全てを兵力にできるとなれば、対処する事は可能だ。となれば後は、奴の采配に従って俺達が動くだけだ」


 そこまで説明したところで閉口すると目を閉じ、それを見て彼の周りにいた者はファルツの説明が終わった事を察し、各々が好きなように動き始める。


「っ!」

「どうした康太。苦い顔して?」

「下がれ蒼野! 来るぞ!」

「え? いやでも時間はまだ」


 一瞬ではあるが壁が室内へと向け膨らみ、次の瞬間には轟音を立てながら砕け散ったのはそれからすぐの事で、


「さて、やるか」


 それを仕出かしたシュバルツ・シャークスが、彼らしからぬ固い声色でそういった。






ここまでご閲覧いただきありがとうございます

作者の宮田幸司です。


申し訳ありません。調子を崩したため今回の話は短めです。

本来ならシュバルツたちがどうやって目的地まで辿り着いたかの説明が後半にある予定でした。

それを次回の話でやるため、次の話も少々短いです。そこで区切らないと、中途半端な話になってしまうので。


今回の話、本来の半分である前半部分はオリバーの能力説明。

一章の頃に彼がどうやってウォーグレンの様子を伺っていたのか、二年越しの説明です。

確か当時は説明していなかったはず。


まぁコストは重く、戦力としてはあまり役立ちませんが、本編で語られた通り諜報役としては完璧に近いです。

元の小石や木々に戻して状況を知り、それをオリバーは知る事ができるわけですからね。

貴族衆が情報面で強い、大きな理由の一つでもあります。


それではまた次回、ぜひご覧ください!



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