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ゴロレム・ヒュースベルトの選択


「そうか。それが裏切った理由か」

「あぁそうだ。迷惑をかけたな」

「…………オレは、いやオレだけじゃない。アビスちゃんや蒼野だって、こんな結末は望んじゃいなかった。ゴロレムさん、貴方は」


 神器を持っていた事により意識を失っても退場しなかったゴロレム・ヒュースベルト。

 彼は勝者である康太のなぜ裏切ったのかという問いに答える。

 すると仰向けに倒れたまま動かないゴロレムの横に腰かけていた康太は遠くを見つけ、


「疲れたのなら、休むべきだった。オレ達に相談すべきだった…………一人で背負い続けるべきじゃなかったんだ」

「そうだな。そうするべきだったのかもしれないな…………」


 彼の行動に対し、そのような判断を下し、ゴロレムは力なく笑いながら言葉を返す。


「さて、なら後は私に勝った君達に報酬を与えるだけだな」

「報酬?」


 実際のところ、銃弾を撃った時点で康太も一度意識を失ったため相打ちという方が正しいのだが、誰もゴロレムの言葉は訂正せず、時間をかけて体を持ちあげる彼をじっと見守る。

 先程まで戦っていた彼を、この場にいる者達はもはや敵であると思っていなかった。いや康太に至っては、最初から敵だとは思っていなかった。

 なぜなら彼と戦っている最中、一度たりとも優れた直感が危険を察知していなかったのだ。


「如何にガーディア・ガルフが完璧であろうと、私は彼の計画が絶対に成功するとまでは思っていなかった。だからこれは、そうなった場合の代打策。君達に向けた支援だ」


 そう告げる彼は手にしていた魔本を掲げ、周囲一帯に広がるほど強烈な光を放つ。

 それにより周囲にいた氷の彫像が再び動き出し、更に召喚された様子を見れば、流石に無警戒でいた者達も警戒の色を強めるのだが、


「待て!」

「康太?」

「この人にオレ達と戦う意志はもうない!」


 残っていた片腕で静止をする康太を見ると、此度の勝利に最も貢献した者の言葉という事で多くの者が動きを止め、そんな彼らの前で氷の彫像は明後日の方角へと向け動き出した。


「エヴァ殿は異星の怪物達を強化させているが、その中には単一の属性を用いたものだけでなく能力によるものも存在する。だから私は魔獣達とは離れて戦うように言われてたんだ。けど今その言いつけを破った」

「なら!」

「この戦場で暴れていた怪物達は著しく弱体化する」

 

 その行動の意味を言いきると彼らは顔を綻ばせ、士気が上がった事から勇み足で戦場へと向かおうとするのだが、


「おっとちょっと待ってくれ」

「ゴロレムさん?」


 そんな彼らに対しゴロレムは待ったをかけた。


「敵の幹部を倒したんだ。その前に言ってもいいことがあるんじゃないか?」

「…………なるほど。それが目的ですか」


 その意味を少々の時間をかけ察した康太。彼は自分の側にいるアビスの手を取ると、顔を赤くしている彼を自分の側に寄せ、形だけとなり、動かすだけでも激痛が奔る左腕を空へと掲げ、


「ゴロレム・ヒュースベルトは賢教と神教、いや四大勢力全てが協力して討ち取った!

 そして説得の末に彼の操る彫像を味方に付けた。今こそ勝負を決する時だ!」


 付近にいる者にはその姿を、遠方にいる者には勇ましい声を投げつけ、戦いが新たな段階、千年前最強の敵たちとの戦いへと移った事を説明。

 それにより起こった変化は顕著で、怪物達に掛かっている能力を剥奪したうえで無感情に蹂躙する美しい彫像を前に、状況は再び覆されていく。


「ゴロレム・ヒュースベルトが敗北し説得され」

「「!」」


 それを浮遊している状態で見て、神の居城正門前にいた少女は静かに呟く。


「シェンジェン・ノースパスは原口善に敗北し、ギャン・ガイアは好き勝手に自爆し」


 言葉が綴られる度に彼女の全身を纏う各属性の粒子の量は増えていき、


「愛する鋼の息子はレオン・マクドウェルに利用され、ヘルス・アラモードは勝手に撤退しやがった」


 そこまで口にした瞬間、幼い体を真っ黒な帯が包み込み、


「やはりだ、やはり奴らはいらなかった。この戦いには…………私達だけがいれば良かったのだ!」


 数秒経って出てきた時、彼女と戦っているノアにシロバ、そしてクロバが目にしたのは、体の至る所に蝶や鳥、それにコウモリなど空を舞う事ができる生物の真っ黒な刺繍を刻み込んだ夜の女王の姿。

 その姿を不審に思い、正体を知るために風の斬撃を飛ばしたシロバは、


「その言葉の意味をここで示そう」


 返す刀で、彼女の体から溢れた無数のコウモリに呑み込まれた。







ここまでご閲覧いただきありがとうございます

作者の宮田幸司です。


遅くなってしまい申し訳ありません。ギリギリまで新人賞への提出を粘っていました。

それも無事に終わり、こちらも更新!

今回の話で中盤部分に当たる場所は終わりを迎え、ここから終盤戦へ突入します!


真の力を発揮し始めるエヴァ・フォーネス。その相方たるアイリーン・プリンセス。

最強の剣士シュバルツ・シャークスに、『果て越え』皇帝ガーディア・ガルフ。


彼らを倒すための戦いの始まりです!


それではまた次回、ぜひご覧ください!



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