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3月22日 18時40分


「!」

「この感じは!」

「うし! 善の奴がシェンジェン・ノースパスを下したな!」


 シェンジェン・ノースパスの退場、それはすぐさま戦場全体に情報としてほうとして伝染し、それを察知したデュークが歓喜の声をあげる。

 それはこの戦場において最も広範囲で不可視ゆえに避けにくく、なおかつ遠距離攻撃を行える存在の脱落を意味し、メタルメテオ以上に戦況が大きく傾いた事を意味していた。


「ノア!」

「ああ。ここが勝負どころだ!」


 そして今この状況こそ、趨勢を自分達側に完全に傾ける好機であるとデュークとノアの二人は認識。

 デュークが巻物から亀の甲羅を重ねたようなヘッドを備えた鉄槌を取り出し、巻物を使った遠距離戦でエヴァ・フォーネスの相手をするのと同時にアイリーン・プリンセスの相手を受け持つと、後退したノアは懐から一枚の紙を取り出し、勢いよく虚空へと投げつけた。


「紙?」

「なにかはわからんがよからぬものなのは理解できる。アイリーン撃ち落とせ!」


 その正体が何であるのかは対峙する二人にはわからない。

 しかしその正体を探るよりも早く紙から無数のロケット花火が撃ちだされ、様々な方角へと向け勢いよく飛んで行った。


「これって!?」

「ちぃ!」


 その全てに幾つかの紙片が張り付いているのを確認した両者はロケット花火の意図をすぐに察し、アイリーン・プリンセスが無数の光の銃弾を、エヴァ・フォーネスが掌を広げ雷の放射を行いノアとデュークの目的阻止を狙うが、それを防ぐようにデュークが巻物から地属性粒子術を選び壁を敷き、ノアの側にいたレインも光弾で応戦。


「長々と戦う理由はない。ここで一気に勝負を決める!」


 結果目的の場所、すなわち均衡状態を保っている戦場へとロケット花火に担がれていた紙片は辿り着き、ノアが念じる事で折りたたまれていた状態が開き、


「行くぞ野郎共!」

「我ら鳥人族の誇りを示すのだ!」

「獣人こそ至高の種族である! 駆けまわれ!」


 その中に待機していた様々な種族の亜人が戦場へと投入された。

 そしてその効果は瞬く間に発揮される。


 普段は武器を持たぬ種族も含めギルドに所属している多くの者が貴族衆第三位クロムウェル家が作った高性能かつ軽量化された武器を持ち、戦場を駆けまわる。


 すると鬼人族が鳥人族が獣人族が、様々な種族が数多の怪物を沈め、氷の兵士を砕いていく。


「エヴァ、ゴロレムに指示を」

「もう送ってるが応答がないな。恐らくあっちはあっちで手こずってる」


 その勢いは津波の如く。

 シェンジェン・ノースパス退場から十五分後、戦闘開始から四十分経過した時点で連合軍側は一方的に敵を蹂躙し、彼らの思うように趨勢を傾けた。


「ま、こうなれば仕方がない。いや計画通りと言えば計画通りか」

「なに?」


 しかしそれでも彼らの余裕は崩れない。

 エヴァ・フォーネスはここまで一方的な趨勢を前にしても声を荒立てず、指を一度鳴らすだけで戦場にいる魔獣に土色の光が宿る。


「貴様たちが晒した手札に対する返礼だ。受け取るがいい。

 私が使役する眷属の強化。そして――――秘密兵器の投入だ」

「秘密兵器?」


 傷を瞬く間に癒し再び立ち上がる怪物達。その姿にデュークやノアはいらだちを覚えるのだが、それ以上の変化が戦場を轟かす。


「なんだ!?」

「この衝撃はっ!」


 それらは空気を震わせたかと思えば数多の兵士を蹴散らし意識を奪い、黄緑色の光が包み込み戦場から退却させていく。

 するとそれを行った者達の姿が顕わになり、


「は、はぁ!?」

「どういう事だねこれは。こんな事がありえるのか?」


 エヴァ・フォーネスとアイリーン・プリンセスの二人を押さえていたデュークとその援護をしていたレインが戸惑いの声をあげる。


 彼らの瞳に映った物。それは




「これはこれは」

「少々意外だな」


 一方その頃神の居城内部。

 ガーディア・ガルフとシュバルツ・シャークスが神の座イグドラシルが行った遅延戦法に真正面から乗っかり、三十分以上の時間が経過した現在。


 彼らは何度目か数えるのもわからなくなるほど階段の上り下りを繰り返した所で周りに何もないだだっ広い空間に辿り着き、そこで待っていた人物達を真正面から見据え静かではあるが驚きを感じる声をあげる。


「ようこそ。お待ちしていたわ世界を揺るがすクソ害虫共」

「ハッハッハ。ひどい言われようだな!」

「いや彼女の立場からすれば当たり前の発言だ」


 真後ろに先へと進む道へと控えた状態で立ち塞がるのは神教最強アイビス・フォーカス。そしてその隣で無言で控えているのは賢教最強シャロウズ・フォンデュで、彼らは既に臨戦態勢になった状態でやってきた最強の刺客に敵意を注いだ。


「ということはここが終着点一歩手前。大一番というわけか」

「残念ながらまだ六合目。この星で最も偉大な神の座への道はまだまだ終わらないわ」

「ほう。その段階で君達二人が現れるか」


 その二人を前にシュバルツ・シャークスはいつも通りの気楽な様子で探りを入れるのだが、アイビス・フォーカスはその問いに素直に答え、問うた男は目を丸くしながら声をあげる。


「ええそうよ。残念ながら私達二人は今回に限り前座。悔しいけどね。

 大一番は別の人に譲ってるわ。だからここで貴方達に一つ提案」

「お前達二人が前座だと?」

「提案とは何かね?」


 その後に彼女が口にした内容に対してはシュバルツ・シャークスがそれ以上の動揺を示しガーディア・ガルフが先を促し、そんな彼らの様子を見てアイビスが充実感を得た様子で満足気に頷いた。


「ガーディア・ガルフ、この空間にあんたは不要よ。さっさとこの上に昇りなさい」


 するとアイビス・フォーカスが別空間へと繋がる空間を親指で指し、それを聞きシュバルツ・シャークスとガーディア・ガルフの二人は更に動揺。そんな状態の彼らに対しシャロウズが会話を引き継ぐ。


「紙の居城に待機している我々を含んだ面々の目的はやってきた君達二人の殲滅で、この場所で行うのはシュバルツ・シャークスを対象にしたもの、というわ」

「逆に言えばこの上に待っているのは私を倒すための切り札ということか」

「…………ああそうだ」


 しかし説明の途中で口を挟まれたことで、不意を突かれ反応に遅れるシャロウズ。

 そんな様子の彼を目にしたところでガーディア・ガルフは押し黙り、


「いいじゃないか。この提案を受けよう友よ!」

「シュバルツ」


 友が何を察しているかを汲み、シュバルツ・シャークスは堂々と言いきった。





ここまでご閲覧していただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


次の戦いに向けた中継地点。各所の説明回となります。

今回の戦では次の戦いに向かうための話としてこのような話がいくらか挟まれると思います。

そしてガーディア・ガルフとシュバルツ・シャークスがアイビス・フォーカスとシャロウズ・フォンデュの元へ到達。


ただ彼らの戦いはもう少し後になり次回は別サイドとなります。

まあその前にもう一話挟むかもですが


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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