表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
734/1361

その因縁に決着を 一頁目


「!」

「あれは!」

「これでレオン・マクドウェルとクロバ・H・ガンクは脱落…………いい活躍だった」


 強烈な炎が世界を揺らし、戦場にいる多くの者の意識が大なり小なりそちらに注がれる。

 その大勢の中にはデュークやレインも存在していたのだが、空に浮かび多くを成している吸血姫エヴァ・フォーネスは微塵も動じずそう口にした。


「…………アイリーン時間を稼げ」

「あら。何かするの?」

「機械の身とはいえ奴は私とガーディアの初めての子だ。パーツの一片でも残っているのであれば回収してやらねばな」

「なるほどね。承ったわ」

「おいおい!」

「我々全員を食い止めるか!」


 ただ彼女もその結末に対し何の感情も抱いていないというわけではなく、親愛を込めた様子でそう語り、アイリーン・プリンセスがデュークやレイン。それにノアの足止めをする中で手元に黄緑色の魔法陣を展開。

 残った破片を手にしようとその中に手を突っ込み、


「「!」」


 その時彼女だけでなくアイリーン・プリンセスや他の者も手を止め、ラスタリア内部へと視線を向ける事態が起きた。

 



「ふっ!」

「おいおいおいおい、ガキが習得できる練度じゃねぇだろこりゃ!」


 時は十分と少し前にまで遡り、ラスタリア内部で対峙した原口善とシェンジェン・ノースパスの戦いに視点を映す。

 そこでは最初の対峙が行われてすぐ二人の戦士が戦いを始めていたのだが、駆ける善は空を縦横無尽に舞い自身へと攻撃を行い続ける少年に対し息を巻く。


「そこだぁ!」

「ちぃ!」


 繁華街を模した彼らの戦場は、夜という視界が悪い状況もあり全力で駆けるには適していない空間であったのだが、シェンジェン・ノースパスからしても障害物が多いためエアボムで攻撃しようにも場所の確認がしにくく当てずらいはずであった。

 だがヒュンレイの息子であるこの少年は確実に善の姿を捉え、多くの者が賞賛を送る彼の『後の先』をもってしても完璧には避けられないだけの範囲と速度でもって彼に攻撃していた。


「ここを戦場にしたならエアボムも防ぎきれると思ったんだけどな。末恐ろしいガキだなおい!」


 何度目かも数えきれない爆発が彼の身を襲い、軽度の火傷が刻まれる。


「おらぁ!」


 無論そのような状況が続いたとなれば善とてそれを甘んじて受けるような事はない。

 強化されているコンクリートの地面を跳ね、店名が書いてある看板を二度三度と踏み、繁華街から飛び出て一本の矢として、音を置き去りにしてシェンジェンの元に飛来する。


「君は馬鹿だね原口善。そんな力任せの攻撃が決着を付けるつもりの今回で通用するわけないだろ?」

「はぁ!?」


 ただの蹴りといえど善が撃つならばそれは、万物を砕き敵対者を沈める一撃必殺というにふさわしい威力になる。

 それが分かっているならば無論シェンジェン・ノースパスも対策をしており、善の鋭い蹴りは彼の体に近づくにつれ緩慢になり、体から一メートル近い位置に辿り着いた時点で凄まじい勢いではじき返された。


「こいつぁっ!」

「そこだ!」

「っっっっ!!」


 そのままならば頭から地面にぶつかるため空中で体勢を整えた彼は建物の壁に着地するのだが、動揺する彼の体に、それまでと比べ一際強力な風の爆発が襲い掛かり、その威力に歯を食いしばり、そのまま足を止めているのは危険と考えすぐさま疾走。

 その様子を理解しシェンジェン・ノースパスは嘲笑う。


「エアバックってあるだろ。大量の風で衝撃を和らげるあれ。僕が今やったのもそれと同じ原理だ。大量の風を圧縮して、壁としてではなくクッションとして利用したんだ」

「そーかい。わざわざ説明してくれてありがとよ!」


 襲い掛かる爆発のダメージを押さえながら、する必要のない説明をした少年をまだ幼いと判断する善であるが、同時にその腕前には感嘆の念を覚えていた。

 能力を使い概念的な、または強固な防御を敷くことで防ぐならばまだわかるのだ。

 しかしヒュンレイの息子である目の前の幼子は防御に向かないはずの風属性単体を使いこなし、大量の風を用いた力技で攻撃を防いだ。

 それは回避に徹するであろうと考えていた彼にとって完全に想定外であり、なおかつ見事な腕前だったのだ。


(けどまあ褒め称えていられるだけの余裕はねぇわな)


 ゆえに善がその顔に苦笑を浮かべながらも足に力を込め壁を砕き、屋内に隠れた状態で普段ならば使わない水属性粒子を使用。


「お前さんの父親も苦手としてた手段だ。さてどうする?」


 唯一得意とする水分身を行うとそこから更に気を練り、真逆の方角へと向け分身と本物は駆けていく。


 こうして数分続いた膠着状態が動くことになる。

 


ここまでご閲覧していただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


遅くなってしまい申し訳ありません。

本日少々忙しく、分量と校正も少々甘いのですが見逃していただければ幸いです。


というわけで始まりました善VSシェンジェン。

この大戦争における回避不可能な因縁の戦い。

二転三転する二人の勝負を見守っていただければ嬉しいです。

その最初の一手はいきなり善の切り札水分身。

ヒュンレイを下した奥の手がその息子に襲い掛かります


それではまた次回、ぜひご覧ください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ