表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
418/1361

三狂 死王 デスピア・レオダ 二頁目


「遠距離部隊、迎え撃て!」


 クロバの指示に合わせ迫る『死王』を迎え撃つのは、ギルド『麒麟』の鬼人族数名を筆頭に『知恵の車輪』『アトラー』の面々も合わせた炎属性の遠距離攻撃を持つ四十一名だ。

 背後に控える残り百十三名を守るよう平行に広がった彼らは、デスピア・レオダだけでなくその周囲一面を燃やすように炎を吐き、彼の全身を焼くだけでなく逃げ場を奪う。


「あっちぃな玩具共が! おとなしくしてろや!」


 デスピア・レオダが飛び跳ね、退避する事を選ばず一気に距離を縮めていく。


「ひでぇ事しやがる!」

「おめぇがそれを言える立場かよ!」


 溶岩となった大地に続き一面が火の海と化したのを確認する怪物へと、追撃とばかりに炎の息や火炎放射が吐きだされるが、空中という広大な世界を埋めきることはできず、結果としてデスピア・レオダがある程度とはいえ自由に動けるだけの余裕ができた。


「喰らった奴らは全員呼吸困難になるぞ。玩具なら顔を青くして逃げ回って、俺様を楽しませろ!」


 余裕ができれば彼の思考に『撤退』の二文字はなく『攻撃』の選択肢以外には存在しない。

 光を通さぬ漆黒のウイルスを周囲から集めて作った翼を背後に装備し、無数の羽を地上にいる連合軍へと向け撃ちだす。


「壁!」

「「はっ!」」


 遠距離攻撃を行っていた面々が背後に周り、防御部隊三十五名が両手を広げ炎の障壁を全員を包みこむように展開。

 降り注ぐ災厄を一つ残らず燃やし尽した。


「ギャハハ! その程度で終わりと思ってんのかおい!」


 しかしそれらは小さな羽程度ならば全て焼き尽くすのだが、続けて行われた翼自体を巨大化させて行われた叩きつけまでは防ぐ事ができず、薄く広く伸ばされていた炎の障壁の一部を貫通。


「あらよっと!」

「あぁぁ?」


 しかし炎の障壁を破り対象に突き刺さろうとするいくつかの翼は、地面に溢れていた溶岩を壊鬼が操りその行く手を阻む。


「前線に出ずに援護くらいなら問題ないだろう?」

「ご協力感謝します」

「つっても、向こう側の光景は見れないけどね」

「ご安心を。既に近接戦闘の精鋭たちが死王の討伐に向かっています。壊鬼殿は今操っている溶岩から熱を取り除き、足場を作ってもらいたい」

「あいよ、ならまあ、期待しとくよ!」


 クロバの指示を耳にし、豪快に笑う壊鬼。

 そんな彼女の見えない位置、すなわち固められた溶岩の上を近接部隊のスペシャリスト――――『倭都』の精鋭十二名が走る。


「ははっ! 自分から近づいて来るとは。玩具志望者は大歓迎だぜ!」


 様々な色の着物を羽織り下駄を履いた刀を装備した剣士たちが、溶岩が固まったのを確認し空から降り地に足を付ける。

 すると空気感染を極力抑えるため最新鋭の防菌仕様を備えた鋼鉄製のマスクを起動させ守りを固め、得物である刀に手を置く。


「おらよ!」

「「!」」


 そのまま彼らが刀を抜くと、死王と彼らの戦いは始まった。

 放たれた無数の鎖付きの刃を全て手にした刀で次々と叩き落としながら、徐々にだが近づいていく『倭都』の兵。

 その足取りや体運びには一切の迷いなく、敵とみなした存在を囲うよう、熟練の動きを見せつけながら近づいていった。


「うざってぇ!」


 呼吸を合わせた十二人の動きがデスピア・レオダの逃げ道を塞ぎ、何の合図もなしに等間隔で近づく彼らを死王は気味悪がり苛立ちを募らせる。

 その感情に合わせるように彼の全身が不規則に揺れると、全身から中身の詰まった水袋が現れ、宙に浮かぶ。


「爆ぜろ病悔!」


 幾つかの水袋が弾け、中から真っ黒な長細い槍が現れる。


「燃やし尽くせ!」


 それがこの近接戦始まって以降初めて口にした『倭都』の一員の言葉であった。

 するとその指示に合わせる形で十二本の刀全てに炎が宿り、刀身が赤銅の放つ色と同じものに変貌。

 目前の脅威へと近づくにあたり邪魔であった障害を、瞬きほどの間に退けた。


「テメェが玩具山の大将か。見つけたぜぇ!」


 が、デスピア・レオダからすればそんなことはどうでもいい。

 槍に込められていた病の症状が不発に終わったこの結果に対し落胆はない。

 ただ一つ感じるのは、この十二人を指揮する大将が誰であるのか見つけた歓喜だけだ。


「俺様はよ~頭いいから知ってるんだぜぇ。こういう集団戦ってのにおいてはよ~、テメェら人間は一番偉い奴らが動けなくなるだけで全部終わりなんだろ。ならよぉ、ここでお前を潰しちまえば、残りの十一人も終わりだよなぁ!」


 デスピア・レオダが全身を泡立たせながら歩を進め、先程口を開き指示を出した剣士に接近。肉体を自身が思うがままに変化させ、刃や銃弾を作っては撃ちだし、十二人の内の一人へと攻撃を集中させた。


「!」


 『倭都』の精鋭とはいえ、狙われた男の力は人の範疇。並大抵の者よりは確かに強いが、それでも『万夫不当』の位には遥かに劣る。


「ギャハハハハ!」


 盾を錬成し目前まで迫っていた前方からの攻撃を防ぐが、全て防ぎきるころにはデスピア・レオダが真横へと移動しており、触れた者全てを穢す右腕を伸ばしていた。


「ムダだぁ!」


 デスピア・レオダの力はまさに『超越者』の領域。

 人の範疇にある存在がいかに足掻こうとも、一度も触れられることなく倒せるそん山ではない。


「せいっ!」


 そんな事は、彼ら自身承知の上だ。

 承知だからこそ、彼らはそれを補うための手段を得ていた。


「あぁ!?」


 伸ばされていた腕が瞬く間に斬り落とされ、触れた側から炎が勢いを増し、残っている肉体へと向け昇って行く。

 思わぬタイミングで行われた攻撃の方へと視線を向ければ、残る十一人の内の一人が彼の腕を手首の辺りで斬り裂いており、まっすぐかつ迷いのない瞳でデスピア・レオダの姿を眺めていた。


「邪魔しやがって……まずはテメェだ!」


 苛立ちを感じながらも自身の燃えている部分を放り捨て、残った右腕から無数の触手を生やし、対象を変更。 触れることを第一に考えた動きに移行し彼の者へと伸ばしていく。


「ふっ!」

「がっ!?」


 が、それが到達するよりも早く怪物は二本の刀に背後から貫かれ、振り向くよりも早く全身を十数個のパーツに斬り分けられ、首まで落とされる。



 単純な話なのだ。



 迫る人外の攻撃を人一人の手では捌ききれないというのならば、落とせるだけの手数をそろえればいい。

 殺すだけの火力や手段が足りないならば、それが可能になるだけの人数を増やせばいい。


 その考えに従い、世界一の連携を見せる強き『人』の集団。それが『倭都』の兵士たちなのである。


「なんだなんだなんだなんだ…………一体なんなんだよぉぉぉぉ!」

 勢いよく燃える部分全てを切り離し、世界中に散らせていたウイルスを集め体を再構成しなおすデスピア・レオダ。

 それからすぐに距離を取り十二人の方へと視線を移すのだが、その視線には隠すことのできないほどの苛立ちと驚き、そして僅かではあるが危機感を孕んでいた。


 彼の記憶に残る猛者と比べた場合、目の前に剣士たちは然程優れた実力を持っていない。

 十年ほど前に彼を封印した憎きアイビス・フォーカスやその仲間のような強さを彼ら十二人は持ちえていない。

 にもかかわらず彼らは死の王たる自らを前に恐れずに剣を握り、こちらの力を徐々にだが削るほどの活躍を見せている。



 数年前はただの玩具だった兵士たちが自分に手をかけている、その事実が恐ろしかったのだ。



 実情を知っていればそれは過去の戦闘データや彼の性格を元にした対策の結果であるというだけの話であるのだが、幼い子供同然の思考しかない彼にそこまで辿り着くだけの情報はなく脳もない。


 ゆえにその事実は彼の心を確実に蝕み、普段ならば相手を侮り慢心する心を消し去った。


ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


少々遅くなってしまい申し訳ないです。


さて、その理由も兼ねて少々重要な発表なのですが、

明日から三日間、筆者が諸事情でパソコンに触れません。


なので今夜中に予約投稿を三日分しておきますので、毎日投稿には支障がありません。


ただやはりいつもよりも確認したり校正する時間がないため、文章がめちゃくちゃだったりいつも以上に誤字があるかもしれません(正直今日の文も確認不足が目立つかと思います)。


そのあたりについてご了承いただければ幸いです。


本編については『倭都』の戦士活躍回。

個人的には結構好きです。

明日からは短いながらも色々な組織の面々を動かしていくので、楽しみにしていただければ幸いです


それではまた明日、ぜひご覧ください


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ