始まりの頁
砂嵐が舞い、目を開けていることさえ困難な砂漠のオアシス。
その一角に集まる人々が目を向ける先に十五、六歳の少女がいた。
「あーもう、ほんっと厄介なことこの上ないわ!」
少女――――尾羽優が砂漠のど真ん中に存在しているこの場所を訪れたのは、所属しているギルドに『砂嵐による水源の断絶を何とかしてほしい』という依頼が入ったためだ。
砂漠地帯において水がなくなることは命に関わる事態で早急に解決するべきだと考えたギルドは、彼女に対し急いで現場に移動するよう指示を出し、彼女はこの町にやって来た。
町を覆うのは、水分を奪い取ろうと照り続ける太陽に、建物を吹き飛ばす勢いの砂嵐。
それらから身を守るために彼女や町の人々は茶色の布を全身に巻き、照り付ける日差しを防いでいた。
「でもまあ、これで終わりね」
そんな中彼女が地面に手を置き力を込める。
すると水分が抜けた大地に青白い線が奔り、しばらくすると巨大な水柱が空へと昇っていった。
「よかった。うまくいった!」
「おお! 聖女よ!」
「聖女様!」
「うわわ!」
ほっと一息つく少女の傍らに人々が集まり、ある者は頭を垂れ手を合わせ、ある者は感謝の言葉を投げかけ、ある者は彼女に縋りつき涙を流す。
次第に恥ずかしくなってきた少女は人の波をかき分け、逃げ去るように建物の陰に身を隠し息を吐いた。
「こんな環境で追いかけっことかやめてほしいわ……でもまあ、もう一仕事やらなきゃね」
水源の回復は行ったが、もう二度と同じような事が起こらないよう補強工事をしなければいけない。
そう思った少女が周囲に誰もいない事を確認し、肩を回し筋肉をほぐし伸びをしながら歩き出すと、
「一つ訪ねたい。この町を訪れたギルドの一員というのはあなたか?」
少女の耳に凛とした男の声が入ってくる。
「……そうだけど?」
いつ現れたのかわからなかった、それが彼女が男に対し最初に抱いた感想であった。
男の姿は彼女と同じく全身を茶色い布で覆ったもので、着慣れてないダボダボな見た目からこの町の人々ではないと判断。
顔が見えず、なおかつどうやって現れたのかもわからないため不審に思い、いつでも殴りかかれるよう彼女は拳を握る。
「突然ですまない。だが頼む、私たちを助けてくれ!!」
が、そう口にして突如土下座する男の姿を見て彼女は目を丸くし、思わず警戒を解いてしまった。
「ちょ……ちょっと、どういう事よ。いきなりすぎて事情が全然わからないんだけど!」
突如地面に頭をこすりつけた男の頭を上げようと体に触れるが男は抵抗し、そのままの体勢で言葉を吐き出した。
「私は砂漠を超えた先にあるジコンという町の者です。ほんの数十分前まで普段通り過ごしていたのですが、いきなり聖戦と叫ぶ輩がやってきて町を……お願いです! 私たちを助けて下さい!」
「聖戦……」
なだれ込むような勢いで話をする男に対し、少女の表情が真剣味を帯びる。
その言葉が出るということはすぐさま動かねばならない出来事が起こっており、彼女は必要な情報を得るために矢継ぎ早に質問をする。
「数十分前っていう話だけど正確な時間は?」
「わ、分かりません。ですが一時間は経っていません」
「そう。じゃあ敵の数は?」
「明確な数は……で、ですが! 百人以上はいるかと」
「……ありがと。地元民の抵抗に期待ね…………もしもし、アタシだけど。善さん?」
質問を終えた少女が慣れた手つきで腰に掛けていた皮袋から携帯電話を取り出し、履歴の一番上の番号に電話。
二度三度とコールが続き、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『お疲れさん。仕事は無事に終わったか?』
「水源の確保までは。あとは補強工事だけ。ただ近くの町に賢教が攻めてきたらしくて、そっちの対応に移りたいんだけど、善さんかヒュンレイさんに引き継ぎをお願いできる?」
「賢教の侵略行為か」
告げられる内容を聞き、電話越しの声が返事を返し、少女が固められた砂で作られた建物に背を預け、小さく頷いた。
『…………情報を頼む』
「場所は今アタシの居る町の隣町ジコン。攻めてきた人数は百人は超えてる。けど、話しを聞く限り千人は超えてなさそう。一時間程前の出来事らしいわ」
『ジコン、か。『中央』から離れてて援軍はいないが、自治団がある程度は戦えるらしい場所だな。……わかった。そっちには俺が行く。お前はジコンに向かえ。
集合場所についてはそっちの面倒ごとが終わったら連絡をくれ。その時に指示する』
男が質問を投げかけ、優が最低限の情報を伝える。
それからほんの僅かに時間を置き、少女が望んだ通りの答えが返され、彼女の顔に笑みが浮かぶ。
「待たせちゃったわね。今上に確認させてもらったんだけど、貴方の依頼を受けさせてもらうわ」
「突然の事で申し訳ない。本当に」
電話を切り振り返った少女に向けられるのは、申し訳なさそうに謝る男の声。少女はそんな様子の男の肩を叩き、軽快に笑いかけた。
「そんな謝らなくてもいいって。後はアタシに任せて!」
その答えに男は何も返せない。ただ無力な自身の身を呪うように嗚咽を繰り返す。
「隣町っていうと確かここから三十キロ程ね。こっからあそこまでの地形ならおそらく十五分かかるかどうかってところかしら。急がなくちゃ!」
「――――――――!」
それから彼女が急いで走りだし、町が米粒程の大きさになった頃、声が聞こえる。
「なにー?」
「気を付けてくれ!」
聞き返すと男が声を張り上げそう短く口にし、その言葉を耳にした彼女は柔らかな笑みを浮かべ、広大な砂漠をその身一つで走っていく。
「さーて急ぎますか!」
これはとある星の物語。
世界は粒子と呼ばれる物質で形成され、人々はそれを扱い暮らしていた。
木も水も大地でさえも粒子を使い自由に作りだせる彼らは、世界を支配していると言っても過言ではなく、やがて人々はその力を用い文明を作りだし、同時にその力を誇示するようになる。
多くの者達がその力で自らの願いや欲望、信念を叶えるために戦いだしたのだ。
ゆえに、この世界は財力でも科学、権力でもなく、力こそが正義とされ続けてきた。
この物語は、そんな星で生きる人々の生き様を描いた物語だ。
とある店の前で、一人の少年が胡坐を掻いている。
少年は濃い目の青のジーパンに桃色のカッターシャツを着込んだ十五、六歳程度の見た目で、少し長めに伸ばした髪の毛を後ろで一纏めにして縛り上げているのが特徴的だ。
「毎度のことながら、派手にやるよ」
視線の先に広がる、嵐が過ぎ去った後のような有様の八百屋を前にため息が漏れる。
商品棚は無残に倒れ、レジは半壊、食材などは全て地面に打ち付けられ原形を留めていない有様だ。
「時間回帰」
その光景を視界に収めた彼がそう口にすると、掌に彼の顔程の大きさの半透明の丸時計が現れる。
それは白い文字盤に黒い秒針・分針・時針の三本の針を備えており、すっぽりと納まる大きさの半透明の縁で形成されており、少年と店の間で静止。
同時に三本の針が逆時計回りで動き出し、一時間分ほど遡ったところでその動きを止め姿を消す。
「終わりましたよー」
すると嵐が過ぎたような惨状であった店内は様変わりし、商品棚は綺麗に整頓され、レジは正常に動く状態に変化。
加えて粉々になっていた食材は真新しい形を取り戻し、店頭に綺麗に陳列されている状態になっていた。
「いや悪いね蒼野君!」
「ほんと、次から気を付けるよ!」
「それ何度も聞いたセリフですよ」
申し訳なさそうに頭を掻く店主にその後ろで申し訳なさそうに手を合わせている妻の方を向き、少年――――古賀蒼野は苦笑する。
「さて、これから店を閉じてた分を取り返さなくちゃね!」
蒼野の言葉を聞いた夫婦が同じような笑顔で彼の言葉に応え、勝気な性格の女性が腕をまくりながら店の中へと戻っていき、その場に残された彼は大きく伸びをして空を仰いだ。
「お疲れさん、相変わらず便利な能力だな」
そうしながらぼーっと考え事をしていると、少し離れた場所から声が聞こえてきた。
「康太か。森の方から来るってことは狩りの帰りか」
ベージュのチノパンに灰色のTシャツ。一際目立つライトイエローの鉢巻を付けた蒼野の義兄弟――――古賀康太が、身の丈を遥かに超える網を引きずりながら蒼野の側にまで近づいていく。
「ああ。見ろよ蒼野。今日はでかい奴を狩れたんだ」
得意げに語る康太が右手で銃を弄びながら、蒼野に白い麻袋の中を覗くよう促す。
「スノークランチか!」
中を覗くと全身から冷気を放つ、頭の先から尻尾までで三メートルほどの大きさがある猪が横たわっており、近づくだけで肌が凍る寒さに蒼野はすぐに一歩引き、その様子を面白がった康太が楽しそうに笑った。
「しっかし、よくこんな冷たい奴を背負えるな!」
「袋が冷気を遮断する特別製でな。こいつを入れる時に使ったのも手袋も同系統のものだ。それはそうとこいつをどう食う? 生のまま醤油をつけるのは一番いいんと思うんだが」
「んー。じゃあそれで」
康太の言葉に相槌をうちながらもう一度中身を見る。猪は前脚二本と脳にあたる部分に銃痕があり、おびただしい量の血の跡が残っている頭部の一発が致命傷である。
「俺は今から八百屋の件が終わった事を報告するつもりなんだが,お前はどうすんだ康太?」
そこまで確認する路視線を袋の中から外し蒼野がそう尋ねる。すると康太はさして迷った様子もなく商店街の奥へと視線を向け、目的地を見定め指を指した。
「精肉屋でこいつを捌いてもらって、貰える分もらって行くよ。なんならその後一緒にシスターのとこに行こうぜ」
「わかった。なら俺はそこらでアイスでも食って待ってるとするよ」
「ああ。できるだけ急いで行ってくるから待ってな」
そう言うと康太は夏の日差しが照り付ける中持っていた網を引きずりながら精肉屋へと向かっていく。
一人になった蒼野は蜃気楼で歪む彼の姿を見送った後、近くにあった駄菓子屋に入り、アイスキャンディーを買いベンチに座ると、パッケージを破り中に入っていたエッグタルト味のアイスを食べながら空を見上げた。
「相変わらず……高いな」
降り注ぐ日光を手で防ぎながら空の向こうへと伸びて行く真っ白な壁を見上げる。
それはこの世界に住む多くの人々が『境界』と呼ぶ代物だ。
千年前、この世界で大きな戦争があった。
その結果、それまで広大な世界の運営を行っていた宗教『賢教』は敗北し、分派した者達の長が『神教』という新たな宗教を設立した。
その後、戦争を再び起こさないために建てられたこの世界を二分する分厚い壁、それが彼の視界に入っている『境界』と呼ばれる巨大な壁だ。
それは空や、地中、海中にまで張り巡らされており、数百年にわたり世界を平和へと導いてきた。
「………………………………」
この境界の先にはどんな世界が広がっているのだろう、資料でしか見たことがない境界の向こう側の世界に対し蒼野がそんな風に考えているところで、康太が近くまでやってきた。
「ああ……来たか」
「またいつもの考え事か。よそ事考えすぎて、事故にあったりしないでくれよ」
「大丈夫だって。それより早くシスターの元に向かおう」
合流した二人が向かう場所は、この町で最も大きな施設。
二人が育った孤児院である。
「お前……、だいぶ貰って帰ったな」
時刻は午前十一時三十分。夏の日差しを避けるため日陰から出ないよう二人が慎重に動いている最中の事だ。康太が背に抱える袋に視線を映し、蒼野の口からそんな感想が出た。
「まあ……半分くらいだな」
「貰いすぎじゃないか。捌いてもらったわけだし、お礼にもっと渡しとけよ」
「狩ったのは俺だ。半分貰うくらい、当然の権利だろ」
少々引いた様子で口を開く蒼野に当然の権利と出張する康太。
「……むぅ。あ、ちなみに買ったとしたらいくらくらいなんだそれ?」
「今日の奴は結構な値で買い取られてな。キロ五千円くらいだ」
「それを何キロ分だ」
「百キロは超えてたな…………っておい、道のど真ん中で気絶すんな!」
ふと気になった様子で質問する蒼野に答える康太であるが、少し待っても答えが帰って来ない事を不審に思い、視線を前から真横、そして背後に移した。
すると蒼野は十歩ほど後方で白目をむき気絶しており、それを見た康太が慌てて戻り、蒼野の肩をゆすって意識を現世に呼び戻した。
「たくっ、勘弁してくれよ」
古賀蒼野という人間は昔から気が弱い人間だ。
町でも有名なノミの心臓の持ち主で、恐ろしい事態に出くわせば心臓を抑え恐怖し、予想外の驚きには大げさすぎる反応をすることも多々あるような少年なのだ。
「悪い悪い……その金があれば色んな場所にいけると考えるとつい」
「んなことで気絶すんな。お前そのままだといつか心臓麻痺とかで死にそうだぞ」
「流石にそれはない、と思う。うん思うだけね」
康太のため息混じりの言葉に対し、しかし蒼野は否定しきれず、それを聞いた康太がゲンナリとした表情を見せた。
「おいおい、そこは力強く否定しろよ。お前の死因が驚きのあまりショック死とか、かなり嫌だぞ」
「どうかな。例えばだけど、絶滅種の竜なんかが現れて、頭を下げてコンニチワとかしてきたらショック死するかもしれないぞ」
「あ、頭の中で鮮明に想像できる!」
そんな風に二人が日常の雑多な話を続けると、黄緑色の壁に囲まれた建物に辿り着く。
蒼野と康太が赤ちゃんの頃に拾われ、長い年月を過ごした孤児院だ。
「これからどうする?」
「まずはシスターに挨拶でいいだろ」
身長百七十を超える二人の数倍の高さを誇る黄緑色の壁の中には、向かって左側に孤児院に暮らしている者だけでなく一般の人たちも利用する小中一貫の学校があり、右手側には教会や宿舎が一緒になった、真っ白なコンクリート造りの大きな建物があり、蒼野と康太は境界へと向かって行った。
「おーいシスター、旨い肉もって帰ってきたぜー。今日の晩飯に使ってくれ」
「ただいまシスター。仕事は無事終わったよ」
厚さ十五ミリはある重厚な木の扉を康太が明け、教会の中を覗き見る。
「……どこにいるんだあの人は?」
「お、あそこにいるぞ」
扉からまっすく向かって中央には木で作られた祭壇があり、簡素な造りの木の机があった。
底に辿り着くまでのまっすぐな道には灰色の敷物が敷かれている、左右には木製のベンチがいくつも並べられていた。
そんな建物の中に入った二人が視線を周囲全体に向けると木の幹に持ちあげられ、巨大なステンドグラスを磨いている女性の姿を発見した。
「あら! 二人ともお帰り!」
真っ白な髪に張りのある健康な肌をした、瞳がルビーのように赤い彼女が二人を確認すると、木の幹に持ちあげられ数メートル上まで持ちあげられた状態から降りて近づいてきた。
それから黒い修道服を身に纏っている彼女の視線は康太が肩に引っかけている冷気を放つ肉塊に移動し、康太が説明をすると、満足げに頷いた。
「今夜はそれを生のまま醤油に付けて食べよう。康太のおすすめだ」
「そうなの。ありがとう康太、助かるわ」
「そう言ってもらえるとありがたい。で、この肉どうする? 肉自体が冷気を放っているから、冷蔵庫とかに入れておかなくてもいいが」
「まあ、なんとエコロジーな肉でしょう。では、子供たちの目の届かないよう場所に置いておきましょう。勝手に食べる子も中にはいますしね」
頭に浮かんだ悪ガキ数人を思い彼女の口からため息が漏れる。
その後康太が持っていた物をシスターが手にしようとすると康太は腕を上げ、彼女の手が届かない場所まで持ちあげた。
「手伝うぞシスター、流石にあなたに力仕事をさせるのは気が引ける」
「あらあらまあまあ。康太康太」
「なんだその変な掛け声は。って、ちょい!」
康太の言葉を聞いたシスターが嬉しそうに笑い、服の袖から数えきれないほどの蔦や蔓、花を出し、王冠を作り康太に被せようとする。
「俺はもうそんな年じゃない!」
対する康太は体を後ろに引き王冠を手で受け取ろうとするが、蒼野に首を抑えられ、強引に頭に被せられた。
「好意は素直に受け取っておけよ。なあシスター」
「ええ、私からしたら二人はいつまで経っても子供なんだから」
見る人を落ち着かせる、慈愛に満ちた笑みをシスターが浮かべると、康太の視線が照れが理由で横に逸れ、文句を言う気が自然と薄れる。それから花の王冠を外そうと頭に触れた時、ふと違和感に襲われる。
「なあシスター。この王冠なぜか取れないんだが…………どうなってんだこれ?」
「着けてみたらとても似合ってたから髪の毛に接着させたの。まるでお花の妖精ね」
「え?」
それだけ言うと彼女はやるべきことは終えたというような様子で、康太が反論する間もなくフヨフヨと浮かびながら礼拝堂の奥へと戻っていく。
「…………妖精というより妖怪じゃないか」
「お前の評価はいい。早く取ってくれ。恥ずかしすぎる」
「黄色い鉢巻よりは似合ってると思うんだがな。花の冠」
「余計なお世話だ!」
康太が失礼なとばかりに叫んだのと同時に蒼野が時間を戻す能力を使い、花の王冠が取れる。そうして地面に落ちる寸前だったそれを蒼野が掴んだ。
「ところでお前はシスターの手伝いをした後はどうする。何か予定でもあるか?」
「銃の調子がイマイチなんでな、バラして中身を覗いてみる」
持っていた花の王冠をなだらかな軌道で投げつけると、康太がそれを難なくキャッチし手に取り、懐にある黒光りする鉄の塊に腕を置いた。
「時間戻してやろうか? 五日前までなら時間を戻せるが」
康太のぼやき声に反応した蒼野が腕を掲げそれを渡すように促すが、康太はそれに対し渋い表情を見せた。
蒼野の能力『時間回帰』には時間制限があり、生物ならば五分前まで、それ以外ならば全ての物を五日前までの状態に戻せる能力だ。
「いや、時折違和感を感じ始めたのが一週間前なんだよな。その時点で直しておけばよかったんだが、サボッたツケが今来たな」
「なるほど。ちと前すぎるな」
「ああ。だからあんま意味がねぇんじゃねぇかと思うんだよ。まぁ、勘なんだけどな」
対する康太は蒼野のような特別な能力を持っていないが、鋭い勘を持っている。
当たり付きのアイスクリームを買えば半分の確率でアタリを引き、道に迷ったとしても七割近くの可能性で目的の場所にたどり着ける。
この勘が最もすさまじくなるのは戦闘時の危険察知能力であり、死の危険に近づくほど勘は鋭くなり、命の危機が迫ったとなればほぼ百パーセント反応する。
ゆえに必殺の攻撃を古賀康太という人間に当てるのは至難の業となっている。
「それでも一応」
確認のためやっておくか、程度の気持ちで蒼野が康太から銃を受け取り能力を発動。半透明の丸時計が現れると、五日前まで銃の状態を戻す。
能力の行使が終わり受け取った康太が銃を空へ向け引き金を引くと銃声が聖堂内に鳴り響く。
「……大分調子が良くなったな!」
「康太!」
「やべ!」
銃声を聞いたシスターが周囲に蔓を従え険しい顔をしながら近づいてくるのを見て、それを見た二人が急いで教会から出ると、彼女もそれ以上追うような事はせず花の手入れに戻った。
「いや助かったぞ蒼野。後で自分でも調べてみるが、これなら問題なさそうだ」
町の中央にある噴水広場まで逃げたところで康太がそう言うと、銃の出し入れを何度も繰り返し、最後に腰のホルダーにストンとはめ込んだ。
「もう一回戻せれば一週間以上前に戻れたから完璧だったんだろうけどな」
「さすがにそれはな」
蒼野の能力『時間回帰』は同じ対象に二度三度と連続で能力を使い、生物の時間を五分以上前、非生物の時間を五日分以上前に戻す事はできないという制限がある。
そのため何度使おうとも、一度目に戻した時より前には戻せない。
「まあマジでありがとな。後でどこかおかしな場所がないか確認させてもらうぜ」
町に向かって歩いて行く蒼野に対し、康太が声を張り上げ礼を言う。
それを聞き手を振ると、蒼野は図書館へと向かって歩き始めた。
十年前、その日は雨が降っていた。
数メートル先の景色さえ見えない視界に、隣にいる人の声さえ聞こえない程の轟音。
建物の多くは半壊し、体の至る所に包帯を巻いた人々が集まり、轟音を掻き消す程の勢いで人々が声を張り上げていた。
それは久方ぶりとなる、賢教の大規模侵攻の際の出来事であった。
二大宗教を分かつ境界から近かったため、田舎町にも関わらずジコンにも敵が送られたのだが、ジコンの人々は自警団と一人の青年を中心に抵抗。最低限の被害で危機的状況を乗り越えることができた。
がしかし、予想外の事態はそこで起きた。
「――――さん! ――――さん!?」
ほんの一瞬の事であった。戦いが終わり、全員が弛緩した空気を纏い始めたところで、全身を黒い靄で覆った正体不明の存在が現れた。
その存在は油断している住人に襲い掛かるが青年はそれを阻み、正体不明の存在を撤退させる事に成功させたが代償は大きかった。
致命傷に近い傷を負った青年は両手と両足を不可解な方向へ捩じ曲げ、腹部には抉られたかのような大きな傷を負い、加えて傷からは豪雨をもってしても洗い流せない程の血が溢れ続け、辺り一面を濁った赤で染めていた。
「回復術だ。今動ける回復術の使い手を全員連れて来い!」
「我々の町を助けてくれた恩人を絶対に助けるぞ!」
このままでは彼は死ぬ、その場にいる全員がそう考える中、二人の少年がいた。
一人は青年の前で立ちすくんだように動かない少年。あまりの事態に呆然自失、という様子ではなく、ピクリとも動かず意識を集中させているようだった。
もう一人の少年は死体の側で叫んでいたかと思えば視線を突然別の方角へと飛ばし、明後日の方向を見続けていた。まるでその先に、何かがあると知っているような面持ちだった。
「時間回帰」
立ちすくんだまま動かない少年が青年に手を伸ばし呪文を唱えた瞬間、半透明の丸時計が現れる。
そしてそれが青年に触れると同時に、傷口から流れていた血は急速に体内に戻り、顔色も幾分よくなる。
「お、おおぉ!?」
「これは!」
人々はその光景を奇跡だと喜び、傷の治療にとりかかり一命を取り留めることに成功。町中のあらゆる場所で、歓声が上がった。
だがこの時彼らは彼方を眺めるもう一人の少年・古賀康太が、その場から離れていくことに気が付かなかった。
「あつい」
時刻は正午。全身を突き刺すような夏の日差しに蒼野の口から言葉が漏れる。
額からは汗が滴り落ち、服が肌に張りつく不快感に襲われるも、足を止めてはならぬと思いながら彼は歩き続けた。
「ふう、着いた」
嫌な感覚に耐えながら向かった先はジコンが有する巨大図書館『リブラ』だ。
会員証を提示しクーラーが利いた中に入ると、常日頃と同じ動作で『世界の絶景百選』と書いてある本を手に取る。
それから常日頃と同じ長机の同じ席に座り、机に備え付けてあるボタンを押す。
「あー生き返る」
机の下から蒼野の名が書かれた専用のマグカップが現れ、アイスコーヒーが注がれる。それにシュガーシロップを二つ程加え口にして誰に聞かれるまでもなく感想を呟くと、彼は本を開いた。
「幻の渓谷ベルラテスか。ここに行くのは難易度的に恐らく後半だな。この環境はちょっと厳しすぎる。いやでもやっぱ早めに行きたい場所だが……ううむ」
ジーパンの横に付けている巾着に手を突っ込み、明らかにポケットに収まらないサイズのノートを取り出し赤い付箋の貼ってあるページを開く。
そこに書かれているのは世界の様々な地名や名所の名前だ。
「えーとこの場所はできれば最後に行きたいから……やっぱベルラテスはこの辺りか」
ノートの名前欄には『世界一周計画書』と書かれており、本のページをめくっては気になった地名を書きこみ、修正が必要な場所があれば消して、新しく書きこんでいく。
「うお、もう時間か。帰るか」
そんな作業を繰り返している内にカップに注がれていたコーヒーが尽き、視線を時計に向ければ、早くも二時間が過ぎようとしていた。
「時間回帰」
能力で時間を戻し本を元の場所へ返し、早足で図書館を出ようとする蒼野。
「ウワァァァァ――――!!」
耳をつんざくような悲鳴が静謐な図書館に響きわたったのはそんな時の事であった。
「どうした!」
出口へと向けていた足を声のした方向へと向け全力で走り、人だかりのできているスペースに辿り着く。そこで蒼野が目にしたのは、血を流す二人の老人に傷を塞ごうと回復を試みている人々の姿だ。
「どいてくれ、俺ならすぐ治せる!」
蒼野が人だかりをかき分け二人の位置にまで辿り着き能力を発動。
まるでDVDの映像を逆再生しているかのように床に流れていた血が体に向かい戻っていき、全ての血が戻ったかと思えば傷口が瞬時に塞がる。
「これでもう大丈夫だ」
それからすぐに2人の老人が規則正しい呼吸を繰り返すのを見て、蒼野を含む一同が胸をなでおろす。
「おのれ……おのれ邪教の信徒が!」
その時であった。蒼野の耳に、か細いながら強い憎しみを込められた声が聞こえてくる。
振り向けば下半身全体にやけどを負った女性が、息も絶え絶えと言うような様子で壁に寄り掛かっていた。
女性は蒼野より一回り大人びている容姿で、左手には三十センチほどの金の棒を握り、重傷を負っているにもかからず、親の仇でも見るような目で蒼野達を睨みつけていた。
「……見ない顔ですね」
「二人に突然襲い掛かってきた相手じゃ。取り押さえようとしたところで自分の体を燃やしおった」
「うっ!?」
「っ!」
倒れている女性の痛みに満ちた声を聞き、蒼野が然程意識せず反射的に能力を発動させ丸時計を当てる。
すると女性の火傷はみるみるうちに消え去り、痛みから解放され緊張が解けたのか、何か聞くよりも早く意識を手放した。
「蒼野君、彼女の怪我を治してどうするというのだ」
その時背後から聞こえてくる質問を聞き、蒼野は返事に詰まる。
話を聞くに目の前の女性が今回の事件を起こした犯人だ。
そんな相手を無償で治したとすれば文句の一つも出てくるのは当然なのだが、残念ながら蒼野には周りの人たちを納得させるような答えを持ち合わせていなかった。
「こいつは……」
この場を穏便に済ますためにどう答えるべきかと考えをまとめようとしている中、外から耳に響く轟音が聞こえ、続く悲鳴を聞き考えるよりも先に走り出す。
「蒼野君!」
「そいつからは後で事情を聞くんで、武器を奪って縛り付けといてください!」
状況が勢いよく悪化しているのを理解した蒼野がそれだけ伝え、わき目もふらずに先へと進む。
「これは!」
窓の外を眺めると彼の住む町のあらゆる場所から火と煙が昇り目に見える景色全てを真っ赤に染めている。それはまさに現世に現れた地獄だ。
「くそ、一体どうなってやがる。電話もかからねぇ!」
町が襲われている、事態の全貌を理解できずともそれだけは認識した蒼野がポケットから携帯電話を取りだしコールするが、砂嵐のような音が響くだけで、電話先である神教にはつながらない。
「なんにせよ、やれる事をやるしかないか!」
窓を破り勢いよく飛び降りながら風を操り、空を飛んで先へと進み始めて数十秒後、先程の女性が持っていた金の棒を右手に持った老人の姿を確認。
同じように老人も蒼野の姿を確認する。
「邪教の手先め! このわしが相手になってくれようぞ!」
「うるせぇ! お仲間と一緒に町から出てけ!」
老人が金の棒を蒼野へと向け、蒼野が腰から武器である竹刀を抜く。
神教の片田舎ジコンを舞台に、戦いが始まった。
この世界に存在する全ての物質は目に見えない程小さな粒子で作られている。
遥か昔、とある人物が発見した十の属性粒子と一種類の特殊な粒子が世界を構築しているという事実。
環境問題、資源問題、各国の対立etc、それらにより行き詰まっていた世界がその状況から脱却するきっかけとなった歴史上最大の発見。
発見者の男はそれから様々な利用法を見つけては世界中に伝えたことで崇められ、今では世界を支配する二大宗教の一角『賢教』の象徴『大賢者』として語り継がれている。
そんな粒子はその存在が広く認知された現在では、全ての人がそれを使いこなし生活を送っている。
粒子を使わなければ何年もかかる工事が、粒子を使えば一日で終わるのは当たり前の光景だ。
食料を自分で作り出すことができる者もいれば、空気中に混ざる粒子を食料として食べ生きていく者もいる。
過去には錬金術と呼ばれていた事も、今の時代では平然と行える。
「風刃……」
蒼野が扱いに長けている粒子は十属性の一つ風の属性粒子と例外である特殊粒子の二種類だ。
属性に関わらず空を飛ぶことが当たり前となっている現代だが、十の属性の中で最も空中での移動が長けている属性はこの風属性だ。
加えて圧縮すればするほど、薄くすればするほど、鋭さを増すという特徴を持っており、斬撃としても多用されることが多々ある。
「一閃!」
腰から抜いた竹刀に風を纏い、目に見えない程の早さで振り抜くと、風を固めた不可視の刃となり老人に迫る。
「む!」
目には見えずとも何かしてきた事だけは理解した老人が、腰に付けている茶色のベルトに付いているボタンを押す。
それだけで風の刃は耳をつんざくような音を鳴らしながら明後日の方向へと飛んで行き、同時に老人を覆うように張りだされた、全方位を守る雷の膜が蒼野の目に映る。
「雷属性の電磁シールドか!」
「死ね!」
老人が右手に持つ黄金の棒を蒼野に向け、親指の辺りに付いているスイッチを押す。
「?」
その動作を不審に思った蒼野がその場から離れると、光を固めた銃弾が撃ちだされ、蒼野が先程までいた場所に円状の穴が開く。
「あれは風属性じゃ防げないな」
蒼野の体の倍程の厚さのある木の幹。それを貫通した様子を見て嫌な汗が流れる。
風属性の最大の短所はその脆さだ。
全ての属性は粒子を固めることによって固体としてある程度の硬度を持たす事ができるが、元が気体として存在している風の属性粒子は、鋼属性や氷属性と違い固めたとしてもかなり脆い。
そのため盾として使用することは不可能に近く、攻撃を全て避ける事を要求されることもザラだ。
しかしそれは風属性単体の場合の弱点だ。蒼野に限って言えば補う事はそう難しくない。
「ちょこまかと……」
「安心しろ。もう逃げないよ!」
苛立ちをそのまま口にする老人に向け半透明の丸時計を作成し、盾のように構え突撃する。
すると盾に触れた黄金の弾丸が接触、その後間を置かず通ってきた道を逆走。
その様子を見て老人が目を丸くし動きが硬直した隙を逃さずに蒼野が接近。
竹刀が届く距離まで肉薄し足ばらいで老人を横転させ、刺突を老人の腹部に向け撃ちだす。
「おのれ!」
が、老人は体を捻りそれを回避。蒼野の顔面を蹴り上げるながら体勢を立て直す。
「決められなかったか!」
蹴り飛ばされた蒼野が威力を殺しきるために空中で一回転してアスファルトの地面に着地。追い打ちとばかりに放たれる光の弾丸を避けながら、老人を中心とする形で飛び回る。
「おのれちょこまかと! 貴様ら邪教の手先はさっさと死ね!」
「さっきから聞いてりゃ邪教邪教。こっちにいるってことはあんただって神教所属だろ?」
攻撃を躱しながら口にする蒼野の言葉を受け、老人が精神的苦痛を受けたとばかりに顔を歪ませる。
「愚か者! 世界を作りし主を信仰せし我らと、邪悪な神を崇めし貴様ら蛮族を同列に語るとは何事か!」
「え?」
その時、老人の言葉を聞きハンマーで殴られたかのような衝撃が蒼野の脳裏に響く。
老人の言葉が事実ならば、この町を襲っている彼らは賢教から来たのだろう。
つまりそれは二大宗教を分かつ境界に異常があったという事だ。
境界が崩壊した時、再び世界を巻きこむ戦争が起こる。そんな話をどこかで見たのを思い出し、動揺で彼の足が止まる。
そうでなくとも、数年前に起きた凄惨な光景を思い浮かべてしまい、顔が青くなった。
「賢教の奴らがこっちにいるってことは、結界に穴が開いたって言うのか!」
「貴様らに! 語ることは! ない!」
「聞く耳持たずかこの野郎! だったら力づくで聞かせてもらうぞ!」
老人の反応に毒突く蒼野が老人へと向け手をかざし、
「縛術・風縄!」
その名を唱えると同時に、老人の周囲の景色が揺れる。
「こ、これは!?」
辺りを揺らす謎の正体は蒼野が逃げ回りながら張っていた風で作った不可視の縄だ。
縄は老人を囲うよう、しかし相手に気づかれぬよう指先から地面へと垂らされ、主である蒼野の合図に呼応し空に浮き敵を縛る。
「むぐぅ!?」
「よし! 捕えた!」
ほんの一瞬の出来事であった。老人は咄嗟の出来事に驚き硬直し、その隙に武器を払い落とし竹刀を突きつける。
「さあ教えてくれ。なんでこんなことをしたんだ」
「言わぬ、絶対に言わぬ!」
「この状況で言わないとかすごいな。けど、事と場合によってはきつい拷問が待ってると思えば、さっさと吐いた方がよくないか?」
無論、多少の驚きで心臓発作を起こす蒼野には拷問など無理な話であり、そもそも辺境の片田舎がそんな凄惨な事をできる権利などなく、ただの脅しでしかない。
「それでも喋らんぞ!」
だが真相を見抜いた様子もなく返ってきた答えに蒼野が胸中で驚く。
今この場の主導権を握っているのは間違えなく蒼野だ。その点について異論を挟む者などいない。
にも関わらず老人は間を置かず答えを返す。
その思いもよらぬ返答に彼は戸惑い、脳をフル回転させ情報を引きだす方法を模索する蒼野。彼は意識を全てそちらに向け熟考していたが、ゆえに背後から迫る危機に気付けなかった。
生い茂る林が左右に分かれ、轟音を立てながら巨大な大型二輪が姿を現す。
蒼野の背丈を超えるほどの大きさを誇るそれは、前輪を蒼野の頭部にあたる位置まで上げ、獣が鋭利な牙で噛み砕くかのように振り下ろす。
「!?」
それに蒼野が気がついたのは、前輪が振り下ろされる直前の事だ。
周囲で燃える炎の音に混ざり耳障りな機械の擦れる音が聞こえ、反射的に突風を後ろへ放つと、襲い掛かかってくる鉄の獣の動きが瞬き程の間だが止まる。
「く、そ!」
回避は間に合わず、能力を発動する隙もない。
迫る脅威を前に迷う事なくそう判断した蒼野は、持っていた竹刀を前輪へと向け、迫る一撃を防ぐための盾とするが、交錯の結果など考えるまでもない。
「ごぎゃっ!?」
例え風を纏ったとしても、防御に向かない風属性では目の前の一撃を防ぎきれるわけがなく、竹刀は一瞬でその原型を崩し、鉄の獣の前輪は変わらず振り下ろされる。
違いがあるとすれば、前輪が潰した部位が頭でなく右肩であった事か。
「この……野ぁ、ろう!」
右肩から全身へと、焼けるような熱さが巡る。倒れていく体に力は入らず、それでも目の前に現れた敵の正体を見極めようと顔をあげ、左腕を掲げる。
「あ……」
満身創痍の蒼野が目にしたものは、燃え盛る炎の光を反射し輝く黄金の大鷲を刻んだフルフェイスのヘルメットに、その上からカウボーイハットを被るという奇妙な格好をした存在。
「悪いな、こっちも必死なんでね」
その男が持っていた金の棒を蒼野へ向けると、光属性を固めた弾丸が蒼野の頭部へと放たれる。
「……!?」
直撃の瞬間、衝撃に耐えかねた蒼野の体が地面を何度も跳ね、土埃を立てながらうつぶせに崩れ落ちた。
「………………」
地面に伏した蒼野はピクリとも動かない。加えて辺り一面を真っ赤に染める血を見て、ヘルメットを被った男は蒼野から視線を外し老人にゆったりとした足取りで近づいていった。
「おい、大丈夫かおたく」
「ワシの事などどうでも良いわ! それよりも役目は果たしたのか貴様?」
ヘルメットを被った男が懐から短刀を取り出し、体に巻かれている風の縄を切り裂いていくと、老人が怒鳴り声をあげる。
「仕込みは十分。目標も達成できているはずだ。これでおたくらも文句はねぇだろ」
その後ヘルメットを被った男の返事を聞き、老人が鼻を鳴らす。
それから老人を乗せた男はバイクのアクセルを踏み、重々しい駆動音を鳴らしながらその場から離れる。
「――――――――――」
後に残ったのはうつぶせに倒れたまま動かない蒼野一人だけであった。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司と言います。
作者はこの作品が小説家になろうの初投降作品のため、申し訳ありませんが未だ慣れていないことが多いです。
使い方なども含め、これから色々勉強していく身でありますので、よろしくお願いします。
基本的には毎日18時から22時台の更新を目指しています。どうしても用事などで難しい時は、前日に二話連続投稿すると思います。
あ、それと、最初の数話は一つの話の区切りとして長めにとっていますが、本来は一話につきおよそ4000時ですので、ご了承していただければ幸いです




