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ウルアーデ見聞録 少年少女、新世界日常記  作者: 宮田幸司
1章 ギルド『ウォーグレン』活動記録
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前門の目標後門の謎


 銅像たちが並ぶE2を超えた彼らが廊下を歩き次に入った部屋は真下に会ったE1だ。

 そこは雷が鳴り響く演出や雨や草木が揺れる音が部屋中に施されており、その部屋に入ったギルド『ウォーグレン』の面々が口を開けた。


「おいおい、賢者王が作ったかどうかは別として、この建物は遥か昔の物だろう? そんな過去にこんな技術があったのか? オーバーテクノロジーじゃねぇの?」

「この場所を作ったとされているのは粒子を発見し、それを広めた様々な技術の枠組みを作る元となった男賢者王だ。他の者ならば遥か未来の技術でも、彼ならばこの程度容易いだろうよ!」

「なんだそりゃ、賢者王ってのは未来人か何かか?」


 康太が軽口を叩きながらも周りへの警戒は解かず先へ進み、目的地であるS1を目指す。

 そうして歩き続けていると途中いくつかの部屋で見たこともない植物や鉱石を目にしながら、神殿全体の折り返し地点直前のM1を超えN1まで移動。


「結構歩いてきたな。目的地も近づいてきたし、よーしここで一服するか」


 ゲイルの号令に一同が賛成し、持ってきていた飲み物を飲みながら休憩。

 彼らが現在いるN1はガイドによれば特殊粒子で満たされた部屋で、古びた石畳に壁に生えている苔やどこからか降り注いでいる日光の光が合わさり厳かな雰囲気を作りだした、神殿のような場所である。

 ゲイルと宗介がこの場所を休憩所に選んだ理由は目的地が近づいてきた事に加え、R1にまっすぐに進む道がないため障害に挑まなければならない状況が迫っていたからでもあった。


「っっっっかー! 茶がうめぇ!」


 なので一応は万全の状態で挑みたいと考えた一行であったが、彼ら以外誰もいないその場所で、水筒を忘れたゲイル対し蒼野が持っていた予備の水筒を渡し、それを呑んだゲイルの声が周囲に木霊する。


「マジで茶がうまいな。おたくら毎日これ飲んでんの?」

「いや、当番制で日ごとに変えてるぞ。ちなみに今日のは康太作だ」

「うぇ、マジか! ガサツに見えて意外と繊細なのなお前」


 そのまま雪崩のように感想を告げるゲイルであるが、それを作ったのが康太であると知ると目を丸くし、聞こえてきた感想に対し康太が鼻を鳴らした。


「意外は余計だ余計! 住んでた孤児院で長い間給仕係をやってたからな。オレは料理関係なら大抵の事はできるだよ」

「へぇー。ところで、おたくが水筒に入れてるそれは何だ? シュワシュワ言ってね?」

「コーラだ」

「おたくは水筒の中になんつー物入れてやがる。いやそもそも、炭酸飲料って水筒と相性が悪かったはずなんだが…………」

「最近アルさんが新しく作った最新型のサンプル品だ。まあオレも普段なら絶対に水筒に炭酸飲料なんて入れないんだが、この機会にと思ってな。あとの特徴としてはプレス機に潰されようと、原形を崩すことない耐久性も持ってる」

「…………炭酸飲料に関しては水筒の範疇なのかもしれんが、プレス機に潰されない耐久性っつーともはや兵器だな。それが一般家庭に流通があるとなると、ちと怖いな」


 そんな話をしながら各々が好きなように過ごし限られた時間の休息を取る。


「…………ちぃ」

「なんだ? 怜はこういうの苦手なのか? ちょいと貸してみ。ある程度の操作なら教えてやれる」

「……恩に着る」

「積の言葉を借りるわけじゃないけどほんと意外な特技よね。アイツが料理うまいってのは。まあ、ちょっと苦いのは残念だけど」

「たぶんそういう風に作ってあるんだと思うぜ。素材の味って奴だ。気になるなら俺から言っておこうか? 優からじゃ言いにくいだろ」

「…………いや、やめておくわ。アタシが言ったってばれると、絶対に何か言ってくるわアイツ」


 数分後には、ゼオスと積、優と蒼野、そして康太とゲイルと宗介のグループに分かれ、各々が自由な時間を過ごしていた。


「ところで気になったんだけどさ」

「む?」

「宗介さんはこれまでどんなものを発見してきたんだ?」


 部屋の壁にもたれかかりお茶を飲んでいた康太が、宗介に対し疑問を伝える。

 すると少し離れた位置にいた蒼野や優も会話を終え三人の側に近寄り好奇の視線を彼に注いだ。


「俺か。幾つかあるな。そんな大した発見ではないが」

「例えば?」

「そうだな。あえて言えば龍の鱗の化石が恐らく一番大きな発見だな」

「龍の鱗の化石?」


 その視線をものともせず彼は話を進め、疑問を投げかけられると腕を組み大きく鼻を鳴らした。


「ああ。年代不明、正体不明。過去に存在した竜種の化石だ!」

「へぇー。それって結構すごくね?」

「物自体の価値は中々のものだろうな! 何せ竜種……いや竜人族は既に絶滅した種族だ。いつ、どこの物かがわかれば歴史を紐解く手がかりになる。だが掌に収まる程度の小さな欠片だ! 解析するには小さすぎる!」

「そうなのか……残念だな」

「いや、逆に目的ができた!」

「目的?」


 蒼野が疑問に思うような声色を出したのに反応し、宗介が立ち上がり握り拳を上げる。


「そうだ! この鱗の正体を解きあかし、過去の歴史を解明する! それが! この俺の! 久我宗介の目標だ!」


 世界中にいる人々に演説を聞かせるような勢いで、男は自らの目標を宣言。

 同行していた蒼野達の驚きの視線が全て注がれるが、それでもなお彼は恐れることなくそう言いきった。


「いやー夢があっていいねぇ。正直ゲイルの奴の動機やら目標も応援はするが、比べた場合俺はこっちを応援したいね」

「ゲイルが考古学者になった理由?」


 積が楽しそうに行った言葉に対し、蒼野が尋ね当の本人がピクリと肩を揺らす。


「ちょ、待て積!」

「そこまで変な理由でもないんだから隠さなくたっていいじゃねぇか。こいつ考古学者になった理由はさ、じいちゃんを追っての事だよ。んで目標ってのは、そのじいちゃんを超える事だよ。けどまあ、こう言いきる姿を見ちまうとちょっとチンケに感じちまうなぁ」

「おいコラ! 勝手に言っておいてケチまで付けるとはいい度胸じゃねぇか!」

 

 ゼオスに地図の操作を教えてた積の頬を、ゲイルが飛ばした光弾が掠める。すると積は体を震わせながらしゃがみ込んでしまい、彼を守るようにゼオスが立ちふさがった。


「そ、そこまで怒るなよぉ……」

「うっせぇ! てかな、この目標はめちゃくちゃ難易度高いんだぞコラ!」

「そーなのか?」

「そうだぞ積。お前は何も知らずに俺の夢と彼の夢を比べたが、ゲイル君のおじいさんは俺達の世界じゃ英雄だ」

「英雄?」


 積の頬の傷を優が直す傍ら、周囲に意識を向けていた康太が尋ね、宗介は頷いた。


「ああ。ゲイル君の祖父、ドルフ殿は世界中で活動を繰り広げ、歴史上重要な遺物を複数発見。そしてこの洞窟で『真の声』を3つ見つけることに成功したまさしく偉人だ!」

「ハッ! 英雄は流石に大げさな気がするけど、まあ世間の評価はそんなとこだな。実際そこまで動けた理由は、貴族衆って立場あっての物なところも多いがな。ま、でもこれで俺の目標とするじいちゃんのすごさがわかっただろ?」


 自らの祖父が褒められたことでゲイルは気を良くして、トレードマークのカウボーイハットを深々と被り見えないところで笑いながら矛先を収める。


「お前の爺ちゃんがすごいことはわかったけどよ、それだとよっぽどの事をしないときついんじゃないか? なんか対抗できる発見とかあるのか?」

「うぐ!?」


 だが悪意を一切含まぬ蒼野の投げかけを聞くと体を僅かに揺らし、笑っていた顔を強張らせる。


「そうだよなー。それほどの人物を目標にしてるってことは、今の時点でもある程度の結果は出してるはずだよな。ほれほれ、言うてみ言うてみ!」

「アンタ……ついさっき痛い目見た癖にそこまで言えるのね。将来有望ね。悪い方に」

「お、俺だっていっぱい結果を出してるさ」

「例えば?」


 呆れ果てる優を前にしながらもゼオスを縦にしている積の追及は止まらず、ゲイルは頭をフル回転させていく。


「例えばだな…………」

「言えねぇじゃねぇか!」

「うっせうっせ! こちとら最近は家の事もいろいろ大変なんだよ!」

「がはぁ!?」


 がしかし起死回生の一手は頭に浮かぶことなくいじるような積の物言いに対し再度光弾を発射。

 それはゼオスから飛び出ていた積の腹部を見事に捉え、積の体が宙を舞った。


 がそこで、彼の頭に天啓が舞い降りる。

 それはまだ十にも満たない頃に彼が見つけたとある建造物の記憶。


「ハッ! ならこの俺とっておきの発見、偶然の産物を教えてやる!」

「偶然って言っちまっていいのかよ…………」

「まあいいんじゃないかね! 大発見なんてものは大抵偶然の産物なのだ!」


 ゲイルの物言いに対し呆れ果てる康太だが、宗介はそれを否定。

 蒼野と宗介共々ゲイルの物言いに対し興味を抱き、そんな二人の思いに応えるように、息つく暇も間を置くこともなく彼は自らの成果を口にする。


「船だよ船! 俺は昔、船を見つけたんだよ!」

「ふねぇ? おいおい、そりゃなん、だ?」


 そうしてゲイルが言いきると同時に積が口を開きながら体勢を整えようと地面に手を置くのだが、その時妙な浮遊感が彼を襲った。


「な、なんだ?」


 思いもよらぬ事態を前に積が急いで立ち上がろうと足に力を込めるのだが、すると今度は足場が崩壊したことで頭から地面に衝突し頭を押さえる。


「い、イテェ! ヘルプ! ヘルプミー!」


 そんな事を言いながら優へと向け転がる積だが、目の前の景色が目に入った瞬間、痛みは自然と引いていた。


「な、なぁ…………お前らに聞きたいんだが…………こんな道会ったっけ?」


 積が先程まで居た場所に門、いや道が突如現れたのだ。


ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


というわけで今回の話にて状況が変化。

彼らの前に予想外の事態が発生しました。

これからどうなるか、それは次回で。


それと、前回までの話と比べ目的地やらが変わっているのですが、最新話のこちらの方が正しいものとなります。

また早いうちに修正をかけるので、よろしくお願いします。


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