二人の密談
時は十数分遡る。
「やあ、遅かったじゃないですか」
「まっためんどくせぇことしたがるなお前は」
濃霧を抜けた善がギルドに足を踏み入れる。
すると普段と同じように玄関から入り、さして周囲に警戒した様子もなくリビングダイニングに入ると、椅子に座りながらせんべいを齧りテレビを見ているヒュンレイ・ノースパスと目が合った。
「やあ、待ってましたよ。善」
「うっせ、勝手に動いといて文句言うな」
反乱軍の首魁と話しているというのに善の口調は軽く、ヒュンレイの様子も普段と変わらない。
「それにしてもよくぞここまで集めたもんだ」
「皆、久しぶりに集まれると聞いて喜んできてくれましたよ。悪さをするわけでもなければ大きく動くわけでもない…………ただの『演習』だというのに」
淹れた緑茶を飲みながら二人が交わす言葉。
ヒュンレイ・ノースパスが行った此度の反乱、その真相が今、明かされる。
椅子を引き席に座り、ドカリと重苦しい音を立てながら机に脚を掛ける。
そのままポケットから花火を取り出し口に咥え、ポケットからライターを取りだしながら火をつける。
「汚いですよ。せめて土くらい掃いなさいよ」
「あいつらがいねぇんだ。んなみみっちいこと気にすんな」
蒼野達部下の前で見せるのは控えている粗暴な行いを前にしてヒュンレイが叱りつけるが、善はそれを流しながら苛立った気持ちを募らせた息を吐いた。
「花火も室内では禁止です。火事になりますから」
「…………そうだったな。火事は困る」
複雑な表情をしながら、立ち上がったヒュンレイがいつものように差し出したコーヒーに角砂糖とコーヒーフレッシュを一つずつ入れ、かき混ぜてから口に運ぶ。
「しっかし、派手な事しやがる。何を考えてこんなことをしやがった。え?」
「強いて言うなら、君の今後を憂いてですよ、善」
ガラの悪い不良が絡むような様子で善がヒュンレイに追及し、それを聞いた彼はやれやれとでも言いたげな様子で首を横にする。
「俺の?」
「ここまでお膳立てしなければ、君は彼らを死地に飛びこませないでしょう。過保護すぎます」
「人の方針に文句つけんな」
「はぁ」
その後ヒュンレイが口にした内容について強い口調で言い返す善の様子に、ヒュンレイの口からはため息が漏れた。
「なんだよ」
「いや、うまく騙せたかどうかは甚だ疑問で。特に康太君は鋭いですから」
「うっせぇな。隠し事は苦手なんだよ俺は」
彼ら二人の間で行われる会話のノリは、カフェの一角で行われるような気軽さである。それを繰り広げるヒュンレイの表情は心底楽しそうで、対して善の表情は固い。
「あ、いや康太は、というか蒼野以外は気づいてる様子だったな」
「マジですか」
しかしその後善が思いだしたようにそう告げるとヒュンレイは残念そうな声をあげ、それを聞き善は少々気を良くした。
――――二人を乗せ、キャラバンは進んでいく。二人をふさわしき場所へと、連れて行く。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
というわけで本日は物語の真相発表回、そしてヒュンレイ再登場です。
これで今回の物語のこれまでの騒動についてはあっさり説明されたわけですが、
事はそう簡単には終わりません。
詳しくは次回で
あと本日は短くてすいません。
ちょうどういい区切りであったため、短めとなりました。
それでは、明日もよろしくお願いします




