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竜と亜人の新時代 一頁目


 初日は参加者が集合し賢教が統治する西本部を訪れ、エルレインに行ったかと思えばかつて闘技場の頂点に君臨していた女帝、エスカッティ・バンピーロと戦った。

 二日目は古城の中の探索を行ったあと市街散策を行い、夜になったところで寝台列車に乗って移動。

 三日目明朝になると天到勇美の待つ倭都に到着し、驚く事に千年以上ものあいだ動くことのなかった虎王復活の瞬間を目にする事に。

 同日の夜には世界で最も凄まじい速度で繁栄している独立国家ハンティプンを訪れ、これまた驚いた事にゴットエンド・フォーカスがその地の主にして王。アダメント=ラントと一悶着起こした。


『次は――――。―――――でございます。お降りのお客様は」


 そんなトラブル続きの世界一周大旅行は、ついに折り返し地点の四日目を迎える。

 先日の夜にゴットエンドが荒稼ぎした金貨をふんだんに使い最高級の朝食を食した一同は予定していた転送装置を使った移動を取りやめ。

 手元に残っていた金貨を使い超高速特急の切符を買うと、一時間ほどのあいだ、流星のように流れる光景を背景に、友人たちと話しながら次なる目的地へと向かっていく。


「ここがかつて秘境と呼ばれてた地か。テンションあがるな!」

「わたくし、結構なお金持ちの家系に生まれたという自負があるのですが、それでもここまで豪華な旅行をした覚えはありませんわ。というかハンティプンとここは初めてですわ」

「なんにせよ楽しんでくれたら発起人としてはありがたい限りさ。まずは今回の案内人がいる場所まで向かおっか」


 そうして目的地にたどり着くと勢いよく空気が抜ける音が駅のホームに木霊するのだが、一行がたどり着いてしばらくしたところで、滅多に味わう事の出来ない経験をすることになる。


「おぉ。おぉぉぉぉ!!」

「世界が全然違うように見えるよ。これを経験できただけでも、ここに来た意味があるよ!」


 彼らが今いる場所は、新たな地へと導く入り口。

 電車が止まるために用意された駅なのだが、改札口に持っていた切符を通し『8番出口』と書かれた出入り口から出たところで、彼等は異変に気が付いた。


 周囲が山脈に囲まれていたという意味では、その場所はエルレインと変わらない。

 建物に年季が入っているという意味でも同様である。


 しかしだ、この場所には二つ、他の場所とは異なる点があった。


 第一に、存在する種族の種類が多い。

 ただの人間ではない。つまり亜人が過半数を占めていたのだ。


「巨人の視座ってのはこういうもんか。まさかこんな体験ができるとはな」

「同じ目線で話すための措置、なんて理由らしいよ。ホント、強さや姿形に反して穏やかな種族だよね。彼らは」

「そうかもしれないけどさー、やってることはだいぶ豪胆だよね。自分達が小さくなるよりよっぽど大変なんじゃないの?」


 そしてもう一つが、この地を訪れた観光客全てに効果を発揮するよう用意された能力。

 やって来た旅人の体が竜人族と類似するほどまで『巨大化』するというもので、同じ視点に立つことで彼らは目にして体験することになるのだ。


 普段は見る事の出来ない視座からの絶景を。


 大きい者がどれほど注意を払い歩いているのかを。

 

 この場所を統治している彼らに近い身長や空気を得る事で、知ることになるのだ。


「いらっしゃい! 麦酒はいかがかな? 我々の里の物は他とは一味も二味も違う! 一度飲んだら病みつきになるよ!」


 だがその事に対し感慨深く思っている暇はない。

 なぜなら当然ではあるが、彼等は目にするのだ。秘境と呼ばれる土地の住人たちの姿を。

 

「こっちは栄養満点の土地で作ったお野菜だ! おいしいよ!!」

「ちょっと気になるのですけど、この場所から持って帰る場合、大きさってどうなるんですか? そのままだと大変な事に………………」

「安心してください! そういう場合は縮小するよう設計してるからね! その辺りの事なんかは気にせず、好きなだけ買い物をしてくれ!!」


 木属性粒子を大量に使う事で生成した大樹を無数に切り裂き作られた決して立派とは言えない出店の数々。

 そこで様々な種族の客人と向かい合っている者達の姿には類似する点が多々あった。


 己が身を守る、鋼鉄よりも強靭かつ柔軟性を備えた鱗に包まれた全身。頭から生えた角に鋭い瞳。

 口にはあらゆるものを噛み砕く牙が揃っており、掌には全てを引き裂かんと伸びた爪が生えた彼等は、しかし自分達が野蛮な存在でない事を示すように様々な衣装に身を包んでいる。


 彼等こそは竜人族。

 惑星『ウルアーデ』において最も優れた身体能力を備えている種族にして、かつては刈られるべき存在と見定められ、隠れ住む事を選んだ存在。


 そんな彼らの大きく変化した姿が今、同じ目線にまで巨大化した子供達の瞳に映ったのだ。


「本当に………………本当に素晴らしい光景です。何度か来たことがありますが………………見る度に涙が溢れます!」

「大袈裟な………………なんて言いたいところだが、貴方から見ればそれほど望んでいた光景なんだろうな」


 身長五十メートルほどになった勇美の隣で涙を流し続けるガルゴネシアであるが、その理由は竜人族の置かれた立場ゆえ。

 そしてそれは、古賀蒼野が神の座になって十年のあいだに行った政策の中で最も大きな事柄の一つにして、最も大きな変化を起こしたもの。


「はい。この光景こそは、竜の血が流れる全ての者が夢見た世界です!」


 第一に、神の座になった蒼野は竜人族というものを、『希少で崇めるべき存在』。言い方を変えれば『畏怖されるべき対象』として扱われていた彼らの存在を、他の者達と同じものであると熱心に説いた。


 幸運だったのはこれを行ったのがイグドラシル撃破からすぐの事。


 つまり『悪意なき世界』であった状況の時に行ったという事で、喜怒哀楽の中でも『喜』と『楽』しか持っていなかった当時の民衆らは、不平不満を一切漏らすことなく彼の言葉を容認した。


 そうして言質を取った蒼野は竜人族の王エルドラと連携を取り、大急ぎでガーディア・ガルフやイグドラシルとの戦いの際に、最前線で戦い活躍した竜人族の者達を表舞台に引き上げ、以来負の感情が現れるまでの一年以上ものあいだ良好な関係を築き続けた。

 そうする事で負の感情を思い出した後も竜人族の存在を民衆は受け入れ、様々な施策を行い竜人族から歩み寄り続けた結果、身近な存在になったのだ。


「よし、着いたね」


 それが竜人族という種族に起きた変化。『他種族との共存』である。


 これに加えガーディア・ガルフが起こした戦争により裏に潜んでいた竜人族を商品として見ていた悪徳者の多くが滅んだことが合わさり、彼等の望んでいた世界に大きく近づいたのだが、この十年のあいだに起きた大きなうねりはこれだけでは終わらない。

 なぜなら変化が起きたのは竜人族のみではなく彼らを含めた亜人全体に関してであり、その証拠となる物が、巨大化して身長五十メートルを超えた彼等さえ易々と包み込める巨大なログハウスの看板に記されていた。


「あ、あの………………もしやこの先に居られるのですか! 我らの偉大なる指導者エルドラ様が!」

「それはわかんないな。事前の情報によると案内人をよこすとだけ言ってたから、たぶん本人は来ないと思ってるんだけど」


 整備された土の地面を数分ほど歩き子供たちが訪れた駅前大通の端にあるその場所は、かつて竜人族の里に用意されたギルドの支店であったのだが、現在は違う。

 『団結商会 ベルラテス支店』などという看板が掲げられている場所で、シェンジェンの真後ろを歩いていたガルゴネシアが生唾を呑み込み、


「あぁ、来た! 此度の件にお客様が! 未来を見据え希望に輝いた瞳を宿した若き魂! 染み一つない肌に! 伸び続ける身体能力! そ、そして青春!! す、全てが、全てが羨ましぃぃぃぃ!!」


 扉を開けたと同時に耳を貫いた情けない声によるわけのわからない嫉妬。

 それを聞きシェンジェンは思わずつぶやいた。


「なんなの? 四大勢力は奇人変人を案内役にする決まりでもあるの!?」



 


ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


申し訳ありません。書き終えていたのですが投稿ボタンを押すのを忘れていました。


それはそうと話は四日目折り返し地点へ。

今回の舞台はギルドのベルラテス!

少年時代編では天変地異の壁に守られごくごく一部の者しか訪れる事の出来なかった場所を、癖のある案内人と共に回ります。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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