夜無き国の冒険
独立国家『ハンティプン』はあらゆる分野において『一流』が集まる場所である。
聳え立つ摩天楼の中で最長の建造物『トッレ・デル・シエロ』は、この国だけでなく世界中で最長最大の建造物にして金色に輝く光の柱であり、そこで仕事に従事する様々な企業の社員は、全員が何らかの分野において超一流の称号を得ている、もしくは備えている者である。
国内に点在する企業エリアには一流ブランドやメーカーの本社がところ狭しと並んでおり、住んでいる住民は大富豪や歴史に名を残すような偉業を成した者とその家族や従者のみ。
訪れる観光客に関しても様々な審査を通る必要があり、国内で一泊しようものならば、超特権階級でもない限り、百万以上支払う必要がある。
これだけでも十分にすごい場所であるが、この場所の真価は集めた人員の質だ。
鍛冶師ならば鍛冶師の島『ナーザイム』の中でも選りすぐりの人材が。
行政ならば六大貴族の一角B・ノスウェル家が統治している『プロニック』の中でもトップの者を。
科学分野ならばG・ゼノン家が統治していた『バク』の主要メンバーを雇用しており、
二大宗教の大司教など高位の者が喧嘩する事もなく道を歩いており、その教えを人々に伝えている。
当然亜人もいるが彼らが差別される事もまるでない。
つまりこの場所にはありえないほど豪華なメンバーが集まっているのだ。
その理由、あらゆる分野の一流とそれらを支える超級の人材を揃えられるきっかけ。
それこそが『ハンティプン』の最も誇れる部分。
蒼野が神の座になってからすぐに、彗星のような勢いで飛び出た有名人。
各勢力の長やカリスマを持つ人物を差し置いて『世界一の統治者』と呼ばれる女傑にある。
「さてと、じゃあまずは貰った『コラント』を渡しておくね。一人十枚あるはずだから、ちゃんと確認してね」
そんな場所に辿り着いてすぐ。
異名の一つである『不夜城』を示すように昼と変わらない、いや昼以上の輝きを無数の金色の照明により実現する街の一角。転送装置から少々離れたところにある伝言掲示板の前で、シェンジェンが周りの者に配った物。
それは紫色の小さな硬貨であった。
「んだこりゃ?」
「僕達みたいな未成年向けに発行された専用の通貨さ。食事やレジャー施設の利用なら大抵のものは一枚で。ショッピングなら三枚使えば大抵のものは買える。世界最長の建造物。雲を超え成層圏さえも突破し、宇宙にまで届いてる『トッレ・デル・シエロ』にだって乗ることができる優れものなんだぜ」
見覚えのない物を渡され、表面と裏面を交互に見ながら質問する我龍に対しシェンジェンが答えたのは硬貨の利用方法で、聞いた直後に大半の面々が驚愕で顔を染める。
売っている何もかもが自分らの手が届かないほど高額な異世界を楽しむ権利を、両手の指の数と同じほど貰えるなど想像していなかったのだ。
「い、いいの!?」
「やって来た子供達を歓迎するための制度らしいよ。聞いたところによると、どこのお店もこれくらいやっても十分な稼ぎがあるらしいし、遠慮せず使っちゃおう。あ、それとこれが今日泊まる部屋のカードね。無料で使えるサービスやアメニティも揃ってるらしいから、疲れた人はそっちで休むのもアリかも。もちろん施設でもその硬貨は使えるよ」
その理由はまさしく稼いでいる者らだからこそ言える類で、再度息を呑む声がシェンジェンの耳に届く。
「ち・な・み・に、これを増やす方法も用意されてるんだよ」
「増やす方法ですか?」
「この国の至る所に設置されてる賭場でギャンブルをして勝つ。そうすればいくらでも増やせるって寸法さ!」
その上で口にしたのは、この場所で最も多く存在する娯楽施設に関して。
没落した六大貴族の一角E・エトレア家。
彼らが統治していた賭博の島『オルレイユ』に代わり、今や世界最大のギャンブル施設としても『ハンティプン』は名を馳せており、規則や身分を証明する事で子供でも『コラント』を使い入場する事が出来るのだ。
「ああやって『お得意様』を増やすんだなぁ。勉強になったよ」
数分後『倭都』に居た時と同じように解散すると、大半は堅実に使う、もしくは疲れを取るために宿へと向かって行ったのだが、ごく一部は近場にあるカジノへと吸い込まれていった。
「言うねぇ。じゃあシェンジェン君はどうするのさ?」
「八枚は食事やらレジャーに。残る二枚は運試しってところかな?」
「うーん中途半端!」
では残ったシェンジェンはどうであるかと言うと、隣に立っているイレの質問に対しそう答え、聞いた彼女がバッサリと言い切る。
「そういうイレはどうするのさ?」
「今日はねー久々に君との親交を深めようと思ってるのだ。だから一緒に『ハンティプン』の観光を使用ではないかー?」
「それなら単刀直入に聞くけど、おすすめの飲食店とかある? 正直この場所に関してはしっかりと調べきれてないんだよね」
「任せておきたまえ! この場所に関してはリサーチ済み! 夕食もデザートも、望む場所に案内してくれようぞ!」
次いでそのような会話を行うと、周りの目を惹く美男美女が肩を並べて歩き始め、夜の町へと溶け込んでいく。
となれば後の展開は予想できるもので、シェンジェンはイレのおすすめした場所に足を運び、おいしい物を頬張り、顧客を満足させる事に特化したレジャー施設を堪能する。
そんなありきたりな、けれど高校生という限られた期間で行えば、大人になってまで残る黄金の記憶を刻み込む時間が待っている。
「ん? 何だろあれ?」
「気になるね。行ってみよー!」
そんな訪れるはずであった未来は、大きく変わる。
非日常的経験が加わる事で、より強固なものとして記憶に残る事になるのだ。
「12だ。君は?」
「23………………バーストだ」
「おいおい! どうなってるんだこりゃ! どれだけやっても! どんだけ小さな数字でも! この兄ちゃんが勝っちまってるぞ!?」
「21。ブラックジャックだ」
「てか数字がおかしいだろ。もうニ十回以上ブラックジャックを出し続けてやがる」
近くを通った賭場で荒稼ぎをしている人物。
「頼む………………別の場所に移ってくれ。これ以上は………………………………無理だ」
「そうか。ならそこのスロットを………………………………」
「待て待て! なんで一回レバーを捻っただけでトリプルセブンが出るんだよ! おかしいだろ」
「そこまで難しいものじゃないさ。ほら」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!? い、イカサマ! 絶対イカサマだぁ! どのスロットでもレバーを一回回すだけで、トリプルセブンが出てやがる!?」
他者の畏怖の念を一身に受け、イカサマを疑われても何食わぬ顔で動き回り、どのギャンブルを行っても荒稼ぎをしている人物。
「………………………………まさか」
「なんだい君らは? 僕にそんな視線を向けるなんて不敬だよ」
すなわち『神の子』ゴットエンド・フォーカスと遭遇したゆえに。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
急成長を遂げる独立国家『ハンティプン』を舞台とした冒険の始まり始まり。
とはいえ今回のメインは子供達ではなく最強メガネ。
久方ぶりにゴットエンド・フォーカスの登場です。
惑星『ウルアーデ』の外で異星からの侵攻を監視するはずの彼がなぜここに居るのか?
来た目的は?
不夜城と呼ばれた場所で繰り広げられる冒険をしばしお楽しみ下さい
それではまた次回、ぜひご覧ください!




