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転送装置ともう一つの独立国家


「見ろよ。どの局もこぞって同じことを口にしてやがる。『倭都の大黒柱。『動かざる主』なんて呼ばれてたあの虎王が目を覚ました』ってな」

「テレビやラジオみたいな会社だけじゃなくて、ネットにある掲示板さえもその話題で持ち切りだよ。今更だけどさ、もしかして僕らって、ものすごい瞬間に立ち会っちゃったのかな?」

「僕の場合、そんな人と真正面から向き合ってたんだよね………………なんか、今更になって吐き気を覚えるよ。し、失礼なこととか言ってないよね!?」


 倭都の中に転送装置が置いてある場所はない。

 これは彼らが『自分たちは他者と協力関係は結ぶが、どこにも所属していない』という事を伝えているため。つまり自分らの土地にズカズカと余所者を入れないためである。

 そのためシェンジェンが利用する予定の転送装置に辿り着くためにはしばし移動する必要があり、表彰式が終わった一時間後、一行は祭りの騒々しさとは異なる理由でざわめく『倭都』から脱出。

 来る時に使った寝台列車とは違う列車に乗り、松の木や祭りがやっていることを示す提灯を見届けながら転送装置のある場所へと向かっていたのだが、気持ちは未だ倭都の中にあった。


 なにせ世界中がかの場所に注目している。

 テレビではついさっきまで目にしていた倭都の木造家屋や枝垂れ柳が映っており、ラジオでは司会者の声が縁日に関する説明を行っている。


 いやそれだけではない。


 どの情報媒体も最後には同じことを語っているのだ。


 すなわち『虎王』に関する事柄である。


「ま、安心してくれたらいいよ。これから訪れる場所はおそらく、この手の話題に関しては他の場所より遥かに興味が薄い場所だからね。他の事が原因で落ち着かないかもしれないけど、少なくとも今とは違う空気に身を浸せるはずさ」


 この旅行に参加した面々の大半が、目の前で起こった事態と様々なメディアを用い襲い掛かる情報の洪水に辟易している。

 そう感じたシェンジェンが座っていた席から立ち上がると、置いていたリュックサックを背負いながら前へ。


「さ、降りよっか」


 他の者に目的地が迫って来てること伝えると立ち上がる事を促し、胸中の思いや困惑はあれど、全員が立ち上がると出口の側にまで移動。

 溜まっていた空気が抜ける音と共に電車の扉が開いたのを確認すると、夏の夜特有の生暖かさを残した空気を全身で浴びながら何もないホームに降り立ち、駅を出てすぐにある築年数がそれほど経っていない様子の三階建ての横に長いお店にまで足を運ぶ。


「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか?」

「午後六時半にシェンジェンという名前で予約しています。確認をお願いできますか?」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 そこに入るため自動扉を潜るといくらかの客が並んでおり、十分ほど待ったところで最前列まで到達。『次のお客様!』と呼ばれ受付にまで行き説明すると、シェンジェンと会話をしていた女性スタッフは慣れた様子でキーボードを叩き始め、十数秒経ったところで画面に向いていた視線をシェンジェンへと移動。


「お待たせしました。三階のA室に移動していただき、こちらのカードキーを差し込んで移動してくださいませ。人数分ありますのでご確認ください」

「ありがとうございます」


 女性スタッフが差し出した銅色のカードを受け取ったシェンジェンはそれを全員に配っていき、言われた通り三階のA室まで移動すると中に入るのだが、そのタイミングで意地の悪い笑みを浮かべながら振り返った。


「一応聞いておくけど、この中に転送装置を使ったことがないなんて田舎者はいないよね?」

「なんで無意味に煽るようなこと言うんだよお前はよぉ。まぁ該当者が居ると思えねぇが」

「誰にも迷惑が掛からないってわかってるからこそ、棘のある言い方をしたんだよ」


 我龍が苛立った声を返すと肩を竦めながら返事を行い、目の前にある物体。

 数十本の色とりどりな配線が繋がれた、高さ一メートルほどの黒鉄色の円柱。

 すなわちこの場に居る誰もが見慣れた転送装置の上にシェンジェンが乗り、持っているカードを側にある機械の差し込み口へと挿入。


「先に行って安全確認をしておくけど、こっちの事はヌーベさんに任せてもいい?」

「僕が最後に行けばいいんだね。わかったよ」

「助かります!」


 足元にある機械が青白い光を発し自身を包み込み始めたタイミングでヌーベに後を任せると、頭部を掴まれ勢いよく引っ張られるような感覚を覚えながら移動を開始。

 無数の光点が奥へと伸びる流星へと変貌し、それが終わったかと思えば漆黒の闇が渦巻き始め己が前進が飲み込まれるような錯覚を覚え、かと思えば視界は正常なものに。


「うん。やっぱりこの場所は虎王さんの件があっても騒ぎになってないね。別の意味で騒がしいけど」


 転送装置から降り周囲の光景を見渡せば、それが自分が予想した通りのものだったことを把握でき、それから僅かな間を経て、良照がシェンジェンも使っていた転送装置の上に出現。

 目にした光景を前に圧巻された様子のため息をあげ、それは続けて出てきたアレクシィに我龍。それに数多の戦場を潜り抜けた東一郎や、富豪の娘であるメイとユイでさえ同じであり、


「今夜の宿はここだっけ?」

「そうですよ」

「それはそれは………………高かっただろう。この場所は」

「普通の立場ならそうかもね。けど今回はちょっとズルをしましてね」

「ズル?」

「僕自身が持ってる『神教本部所属』っていう肩書と、イレの持ってる『三賢人実娘』っていう肩書を利用させてもらったんだ。こう………………チラチラっと見せびらかしてね」


 最後にやって来たヌーベのコメントを受けたシェンジェンは、悪戯っぽい仕草と声色で自身が行った行為の種明かしを行い、


「権力の乱用じゃないですか! 褒められる事じゃありませんわよ!」

「でもさー、こうやって友達と一生モノの思い出を作るためならありじゃない? よく言うじゃん。学生の頃の思い出は、大人になってからの宝になるって!」

「それはまあ、そうですけど………………」


 そんな彼に厳しい声で突っかかったメイの指摘は、シェンジェンの側に移動し、肩にもたれかかっていた協力者。

 すなわちイレ・スペンディオが気楽な笑みを浮かべながら行い、それを聞いた彼女はやや複雑な思いを秘めた様子ながらも反論はせず、


「反対意見も出尽くしたと思うので、そろそろこの場所に関して説明させてもらおうかな。といってもみんな知ってるくらいには有名だと思うけどね!」


 二日目の夜を過ごす地。


 日進月歩の成長を遂げる繁栄の具現化。

 

 不夜城


 黄金都市


 新世界


 他にも様々な言葉で呼ばれている、蒼野が統治する新時代に突入するや否や頭角を現した超新星。


 独立国家『ハンティプン』が二十歳にも満たない若者たちを迎え入れた。


ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


独立国家旅行その二。

今度こそこれまで影も形も、それこそ名前も出てこなかった新エリアの解禁です。

この場所に関しては次回以降で詳しく語りますが、今回の話の最後で語られた通り、ここ十年でメキメキと力を付けてきたタイプの国です。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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