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新たなる敵 一頁目


『それで、最初はどっから話す? やっぱいつも通りの流れからやっていくかい?』


 此度の会議に参加する者達が揃い、ギルドの代表として参加していた壊鬼が画面の向こう側で頭の後ろで腕を組みながら口火を切る。


「そうですね。そこらへんはいつも通りに進行しましょう」


 これに答えたのは現神の座・古賀蒼野であり、一穏やかな声を発していた彼は、喉の奥に溜まった咳ばらい一度だけすると開口。


「それじゃあ! 定期連絡になるがミレニアム自体である黄金の鎧を発見、もしくは痕跡を見つけた者はいるか? それと、デュークさんを襲撃した犯人に関する正体に繋がる情報があるのなら教えて欲しい」


 口に出したのはイグドラシル生存時から今まで続く大きな謎。十年前の時点から解けていない二つの件である。


『ざ、残念ながら………………』

『見つかってない、わね』


 これに関する報告は、常日頃と変わらない。

 やや怯えた声色でキングスリングは定型句を呟き、優も首を左右に振って否定する。


「そうか………………上手いこと情報が集まらないのはキツイな」


 これを受けた蒼野はというと慣れた様子で額に右手を置き返事をするが、それほどまでこの案件に関してこだわっているのは、この場にいない積やガーディアが特に注目しているため。

 これから先に絶対に必要となると考えていたゆえだ。


「ま、今回に限って言えばその辺りに関してはさほど気にならない。目下最大の問題に関して少しずつ分かって来たからな」

『ほう。つまり』

「ああ。ここ一年ほどのあいだ世界中で暗躍してる犯罪グループ。奴らに関する情報が集まった」


 常日頃であればこの後は先の件を何とかするための対応策を一通り練られ、次に各所で起きてる大小様々な事件の解決案を構築。他にも各地で見られている怪しい動きに関する事前の策を練っていくという流れになるのだが、今回は違う。

 ここ一年のあいだで彼らの頭を最も悩ませていた案件に関する情報を集め続けた結果、その成果が表れたことを青野が告げ、全員の意識が注がれる。


「さてと、まずは奴らに関して既にわかっていることの確認だが、まず初めに奴らの目的は『金』だ。これは各地で誘拐を繰り返し、金品との交換を求めていることからわかる事で、残念ながら、今なお、そのお金をどこでどのように使うつもりかはわからない」

『そうじゃの。お主の言っていることに間違いはない』


 すると蒼野が感情をひた隠しにした声で既にわかっている事実を告げ、賢教代表としてモニターに顔を映している雲景が合いの手を一つ。


「次に気になるのは、奴らの素性だ。なにせ撃退して捕まえた奴らの半数以上が戸籍を持っていない。もちろん現代でもなおそういう奴がいるのはわかってるんだが、それにしたって多すぎる」

「…………だから『奴らの中には過去からやって来ている』というのが俺達が抱いた共通の結論だ」

「で、そんな奴らだとしても構成員の内の一人でも素性がわかれば、他の奴らも芋釣り式でわかっていくんじゃないかって話もしたんだったわよね」


 蒼野が続きを語り始め一呼吸置くと、その間を縫うように腕を組んでいて神妙な顔をしていたゼオスが続きを語り、後に続く優の語りに全員が同意。


「もちろんそれだって簡単な話じゃない。何せ調べなくちゃいけない対象の数が膨大で、場合によってはデータのない時代まで遡らなくちゃいけないわけだからな。案自体は出たが、それを実現するには至ってなかったというのが現状………………だった」


 蒼野が続けて語り始めるが、最後まで聞き終えたところで半数以上が眉を持ち上げた。末尾の言葉がいつもと異なるゆえに。


『蒼野君。今君は『だった』と?』

「はい。というのもつい先日、レオンさんがシェンジェンの元を訪れた時、俺達のよく知っている人物と遭遇したんです」

『それは?』

「………………ブドーさんです」


 それを察したルイとシリウスが口を開けば蒼野も重々しい様子で言葉を紡ぎ、報告者であるレオンの表情に影が生まれ、彼に視線が注がれる。


「もう一つ気になる情報があります。その件に関する最重要情報提供者である二人の女学生に聞いたところ、主犯はセロと名乗った人物であるという事で、二十五兄弟のまとめ役をやっているという発言。何より遥か昔を生きた人間であると、本人が口にしたらしい」


 それを振り払うように蒼野がはっきりとした声を上げればレオンに注がれる視線は減り、話の内容は終わりへ移行。


「正直に言うとですね、その手掛かりを元に彼等に関する情報を集めたんですけど、俺達は見つけられなかったんです。図書館で過去千年分の記録を漁ったけど、影も形もなかったんだ。けれどもこの星が生まれた時点から観測しているアイビスさんは違った。彼らに関して覚えていたんだ」


 大詰めを迎えると同時に全員が自分に対し耳を傾けていることを蒼野は察し、早鐘を打つ心臓に負けないよう大きく深呼吸を行い、


「曰く、彼等は日夜命がけの舞台で暴れ尽くした連中。禁止行為など存在しない原始的かつ野蛮なその場で、血で血を洗う日々を送っていた戦士の端くれ。そしてトップであるセロは、そんな場所の大スターなわけですが………………みなさん、もうお判りでしょう」


 最後の部分を口にすることはなかったが、蒼野の言いたいことはみな十二分に理解した。



 次の敵が――――――――ロッセニムの歴史そのものであると。

ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


これからに関する情報の提示回でしたが如何だったでしょうか?

次回は引き続き情報開示回。今回の件以外にも起きた変化を紹介していければと思います。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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