THE URERAED NEXT STAGE
「お疲れレオンさん………………あら? シェンジェンを追い詰めた奴はどしたの?」
「すまない。逃がしてしまった」
「うっそレオンさんが!? すっごく珍しいじゃない!? 何かあったの!?」
「………………すまない」
「……なーんかあったみたいだけど………………まぁそれは後にしましょ! とりあえず怪我人の治療は終了! あとは周辺に残った敵の痕跡確認やら聞き込みだけど、そこらへんは貴族衆の人に任せましょ!」
「そうだな。だが何もせず帰還するのも申し訳ない。微力ながら彼らの力になろう」
長く続いた此度の騒動が幕を閉じた数分後、勝者たちが合流する。
この戦いに参加した人らの怪我を傷跡一つ残さず癒した優は、クドルフを筆頭に行われている事情聴取を見つめながらレオンにそう提案。受けた彼もそこに異論を挟むことはなく、一度頷くと肩を並べてシェンジェンの側へと移動していく。
「こーんな可愛い方らが風属性を司る神様だなんて驚きですわ。ていうか、なんで貴方はそこまで彼らを煙たがってますの。普通かしこまるか拝むかするべきでは?」
「ほらほら聞いたシェンジェン! やっぱそういうのが普通なんだって! だから君ももっと僕らを敬ってよ!」
「ワタシ達超凄い神様なのよ! その辺の事がわかったのならお菓子を用意しなさい! うーんと甘い奴をね!」
「僕達は君の命の恩人なんだよ? その辺しっかりとわかってる?」
「見てわかるだろ猫女。コイツラはすっごくうるさいしわがままなんだ。一々相手してたら無限に体力が吸い取られる………………はぁ、なんでヘルスさんのところの神様みたいに寡黙じゃないんだ。僕あっちの方がいい!」
「そうは言ってものう。あやつはあやつで自分の意識を放棄しすぎだと同僚によく言われているんじゃぞ。むしろ我々の方が普通じゃ」
「うっそだろオイ!?」
「シェンジェン、少しいいか?」
「この事件に一番関わってたお二人にお話を聞きたいんだけど?」
「「!!??」」
二人が三位一体である風属性の神に対し愚痴を呟いている彼の側まで寄ると、二人の姿を見た猫目メイと狗椛ユイの二人は、急いで背筋を伸ばし敬礼。
「一波乱あって疲れた後にその態勢は大変だろう。姿勢を崩してリラックスしてくれ」
「というかアナタ達の回復がまだだったわね。ちょっと待ってて蓄積してる疲労を取ってあげるから」
「きょ、恐縮ですわ!」
「お、お会いできて光栄です!」
「…………別にいいんだけどさぁ! 僕に会った時と態度違い過ぎるだろ二人共!!」
その態度の変わりようを前に半目で見つめていたシェンジェンが苦々しい顔でそう訴えるが、質問を投げかける二人はその様子を無視して、此度の一件で一番大きく二十五兄弟と関わった二人に対して質問を開始。
「協力感謝する。優、これは」
「ええ。結構興味深いわね」
それが終わると帰還し、クドルフを筆頭としたプロテクス家の者らも周辺の捜索を終えると撤退。
「まずはアイスだ。五段積みの奴だ!」
「私は砂糖とミルクを一杯淹れた甘いコーヒーが飲みたいわ! 帰ったらすぐに用意しなさいシェンジェン!」
「これこれ二人共。あまりシェンジェン君を困らせるではないわ」
「別にそれくらいいいんだけどさぁ。君らいつ帰るのさ」
「「満足するまで!!」」
「………………胃に穴が開きそうだよ。ホント」
シェンジェンはと言うとこれから起こる望まぬ日々を察知し肩を落としながら帰還。
当然ながら優とレオンから事情聴取されたご令嬢二人も帰還し、こうして此度の事態は完璧に幕を閉じる。
「あークソ。早く帰らないかなぁ君達! もう三日目だよ!」
「いやだよ! 現世に呼ばれるのなんてすごくレアなんだよ! 百年分は楽しまないと!」
そしてやってくるのは少々の変化はあれどいつもと同じ日常。
シェンジェンは残っていた風の神たちに振り回されながらも勉学や友人との交流に時間を費やし、命を賭けた闘争を間近で見たのに加え、原始人たちとの交流を行った二人の少女は、人として大きく成長した。
そうこうしている内に期末テストの結果が返され、夏休みがやってくる。
8月になればオルレイユにある八つの高校全てが参加する対抗戦が再び行われ、個人ランキング戦も行われるだろう。
もちろんシェンジェンが望んでいた友人たちとの旅行もある。
『ギルド代表、壊鬼』
『ギルド代表、き、キングスリング、参加します!』
『貴族衆からは私、ルイ・A・ベルモンドとシリウス・B・ノスウェルが参加する」
『賢教からは雲景が参加する』
「わかりました。こちら側からは俺と優。それにゼオスが参加します」
『無所属からはレオン・マクドウェルが参加する。ところで康太君は………………』
「いつも通りです。何か大きな動きがあれば報告しろ、と」
『………………了承した』
『遅れてすまなかったな。シュバルツ・シャークス、参加するぞ!』
しかしである。それ等に目を向けるよりも早く一つ話をしよう。
長く続く物語を新たな一歩へと進める瞬間を。
「よし、じゃあ定例会議を始めるか!」
舞台は神教本部ラスタリアの中心『神の居城』。
その場所の、いや世界の新たな主となった古賀蒼野の発言により、その第一歩が踏み出された。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
休載期間を含めればかなり長く続いたご令嬢誘拐編がついに完結!
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
という事で今回は『いかにも』な雰囲気を醸し出すタイトルですが、その予想の通りかなりおっきな意味合いを持つ話。端的に言ってしまうと色々と世界観に関わるお話。
それがどういうものかに関しては、見ていただければわかるかと思います。
あ、それが終わったら愉快な夏休み編です。
それではまた次回、ぜひご覧ください!




