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オルレイユ全高校合同対抗戦第4期 二頁目


 円形リングを舞台とした最初の戦いが終わり、呼吸一つ乱していないエラッタ・リードが選手席まで帰還。これと同時に始まったのは実況席に座る少女・アヤ・シンシャによるマイクパフォーマンスだ。


『第三高校対第七高校! 今季トップ争いをする二校による先鋒戦は! 第七高校が誇る『ルールの壁』エラッタ・リード選手が勝利! 続きましては第二試合! 第七高校から来るのはこの人だぁ!」


 快活な声と空から降り注ぐ照明を浴びたのは、椅子に座って自分の番を待っていたシェンジェンで、彼はやや驚いたように肩を上下させながら視線を実況席に座るアヤへ。


『初戦にて素晴らしい快勝を刻んだ流行の最先端! 突然現れた彗星! いや風雲児! シェンジェン・ノースパス! 私が今一番押してる選手の入場です!』

「うぇ~面倒な事になっちゃったな」

「頬のニヤケが消せてないぞチビ助」


 彼女はその真意を乗せながらマイクパフォーマンスを続け、シェンジェンは声に関してはひどくめんどくさそうに。けれど口角をやや持ち上げながら立ち上がり、我龍の言葉など気にしない様子で前へ。


「一応言っておくが、ふくれっ面で帰ってこないよう気を付けるんだな。次の相手はちと面倒だぞ」

「僕が負けるわけないじゃんか!」

「お前みたいな奴でも、フラッグ戦は足元を掬われる可能性があるって言ってんだよ」

「ないない。大丈夫だって!」


 後ろから投げかけられた声を振り払うと、シェンジェンは頭の上に支給されたフラッグをつけながら円形リングの上へ。


『対するは第三高校最強の双龍が一頭にしてシングルランク第九位! グーツヘラー・C・クロムウェル!』

「相手はシェンジェン・ノースパスだ。賭けは俺の勝ちだなアニキ」

「俺の相手は人間台風か。悪くはねぇが、今回の場合ハズレだな」


 その対戦相手としてリングの上にやって来たのは、短髪を借り上げにして鋭い視線を携えた灰色の肌をした男であるが、彼の名前を聞いた瞬間、シェンジェンは僅かに首を揺らした。

 クロムウェルという名前は、それだけの意味があったのだ。


『ではでは初めて行きましょう! 第七高校が王手をかけた副将戦! レディー!』

「その前に僕のファンになったお姉さんに聞きたいんだけどさ、今言った『シングルランク』ってのは何? それとクロムウェルってもしかして」

『おおっとこれは嬉しいアクシデント! まさか気になる美少年から質問をいただけるとは! ではスケジュールの邪魔にならない程度に説明させていただきますと! シングルランクとは高校・中学・小学校ごとに別れて行われている個人戦の順位付けです! 決め方に関しましては『大枠』と『内戦』の二つがありますが、『大枠』は各種授業における戦闘関連科目の成績。『内戦』は月一回行われる自由参加のタイマン戦の成績で決まります!」


 その意味を問うために、ついでに気になった点も合わせて質問。彼女はついでの方から答え、


「俺の苗字に関してはお察しの通りだよノースパス殿。まさかこんな学校行事なんかで、アンタみたいな有名人と戦えるとは思ってなかったぜ」

「……どーも」


 本題に関しては、すかした笑みを浮かべる本人の口から語られる。


『それでは気を取り直しまして!』

「今日の俺は超絶ラッキーだ。過去最高の勝利を飾れるわけだからな!」

「妄想を垂れ流すのはいいけど、僕に関して吹聴するのはやめてほしいな。そういうのは隠して学校に通ってるからさ」


 再び戦いの始まりを告げるため声を張り上げるアヤ。

 その声に包まれる中、グーツヘラー・C・クロムウェルの浮かべる下卑た笑みを前にして、シェンジェンは冷たい態度であしらうが、顔に浮かんだ笑みが消える事はなく、


「やめさせたきゃ力づくでしろよ『勝った方が願いを叶える』それがこの星の基本原理だろ!」

『副将戦! 開始です!』


 男が得物である鉛色の棍を構え、アヤが意気揚々と声をあげ持ち上げた腕を振り下ろした瞬間、シェンジェンが疾走。


「じゃあそうさせてもらうよ!」


 初戦と同じく風を纏い、フラッグではなく顔面を射抜くよう拳を撃ちだす。


「やっぱ今日のオレは運がいい!」

「ッ!」


 結果は彼の思い通りには進まない。

 拳は目標にぶつかる以前に固い感触を覚え弾かれると、噴水のような勢いで血を吹き出した。


(風属性が!?)


 いやそれ以前の問題として、体に纏っていたはずの風属性粒子は霧散し、シェンジェンは本来の実力を全く発揮できず、


「アンタが相手になるってわかってるんだ! そりゃ対策くらいするわなぁ!」


 この状況を待ちかねていた男が、ハイエナのように舌を出しながら、手にした棍をシェンジェンの頭上に付けられたフラッグへと向け突き出した。

ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


夏風邪気味なので本日はちょっと短め。後書きもそれに合わせて短めで。


今回は副将戦に至るまでの前哨戦。あと地味ですがシングルランクの話もありましたが、もちろんこれも今後の話に関わってきます。

それにしても、こういう息子娘世代を出せるのって、年月が進んだことを感じさせられて楽しいですね。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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