裏切りのワイズマン 五頁目
遅くなってしまい申し訳ありません、少々体調を崩したもので。
最低限御整えはしたものの見苦しい文章になっていなければ幸いです。
明日明後日には快復すると思うので、よろしくお願いします
「調子はどうだ?」
「六時間休ませてもらったんだ文句なしの絶好調だ」
蒼野の見張りが終わり交代で優が見張りを引き受け、康太が行い最後にゼオスが見張りをする。
そうして八時間が過ぎ、時刻は午後三時。
リビングに集まった四人は長方形のテーブルに座り、ゼオスの能力で勝ってきた好きな飲み物を手にしながら、康太が書きだした図を眺めた。
「追手を撒きながらではあるが、濃霧の方角を気にしながら逃走してたからな。キャラバンの位置はこれで間違いはないはずだ。加えて追手でやって来た奴らは、基本複数人で動いていて、ある程度の連携もしてくるのはもちろん、連絡網もしっかりとしたものを持ってるようだった」
「……実際に見ていないゆえに何とも言えんが、相当訓練されているな」
口にしていたリンゴジュースを飲み終え置いたゼオスが腕を組みながら尋ねると、康太はそれを肯定。
「ああ。加えて上下関係もあるみたいだ。上の連中は各々好きな仮面を被ってるが、下の奴らは銀行強盗なんかが被ってる……あれだ。名前が出てこない」
「目出し帽か?」
「そうそれ! それをちょっとオシャレにしたようなものとサングラスを付けてる」
「なるほど、ね。まあ組織の基本だけど、アタシたちからしてもわかりやすくていいわね」
蒼野の口にした答えに対し康太は指を突き出し、優が頷く。
そんな優の言葉に対し珍しい事に康太は悪態一つ吐きださず、それを見て蒼野は今回の事態の難易度を再度理解した。
「んで、実際に奴らと遭遇した俺が提案したい作戦はヒットアンドアウェイの奇襲だ」
その後口にした康太の提案に異論を挟む者はいない。蒼野も優も実際に今回の敵と直面した彼の判断を最上位の者と理解し、首を縦に振り同意する。
「何も言わないが、お前はどうなんだよ」
「……文句はない。むしろ、自分たちだけでどうにかすると言われた方が厄介だ」
「ぬかせ。八時間前の言い方はどう考えてもそれを狙ってただろ」
「……もしヒュンレイ・ノースパスが主犯ならば死にに行くようなものだ。そんな提案をするほど愚かではない」
「ちっ!」
「そ、それより出発はいつなんだ。すぐ行くのか?」
不満を吐きだすような舌打ちをした康太の様子を見た蒼野が口を挟む。
すると康太もすぐに気を取り直し、自分たちが今やるべき、最も重要な課題に意識を向けた。
「ああ。日没三十分前くらいに奴らのいる場所に到着したいから、それまで周りを警戒しながら、体力を温存させるためにゆっくり移動する」
「奇襲なら夜じゃないの?」
「ここまでしっかりと訓練されてる奴らが相手だ。夜になった瞬間、堅牢な守りを展開されでもしたらどうする。不確定要素は削れるだけ削る」
「それで日没三十分前なのか」
夜になる前の僅かな時間。
もし敵が夜になるにつれて陣形を変えるのならばその隙を突け、そうでないとしても相手の観察をじっくり行える。
そう考え両手を合わせ合点がいったという様子で蒼野が口にした。
「あっちに着いてからはどうするんだ?」
「さっきも言った話だが夜になれば動きに変化があるはずだ。日没三十分前に目的のエリアに到達したらその場所から相手の動きを読み取って、その変化に合わして一グループを攫う。んで、その後そいつから情報を聞きだす」
「…………拷問か」
「ご!?」
ゼオスの発言に蒼野の顔が引きつる。
と同時にその発言に対し康太が心底嫌そうな表情を晒し、ゼオスに向けまっすぐと指を向けた。
「お前はよく覚えとけ。拷問は神教と賢教が定めた法で禁止されてる行為。つまり犯罪だ。だから俺達はそれ以外の方法で奴らに吐いてもらう」
康太が革袋から取りだしたのは、掌で収まる白く小さな丸い錠剤。
「……なんだそれは?」
「自白剤だ。これを飲ませる」
「……そうか、これが」
物珍しいものを見るような表情でゼオスがそれを眺める。
「なんだ、初めて見たような顔して」
「……実際初めて見たからな。それはそうと、これはどう使う」
「あ、ああ。この錠剤を口に入れて水で流し込む。それで相手の判断力を奪えるから、その間に色々と聞きだそうっていう魂胆だ」
ゼオスの答えに面食らった康太が、僅かに動揺しながらも言葉を返す。
「さて、じゃあ行くか。ゆっくりと相手に悟られず、だったよな」
そうして康太が説明を終えて立ち上がると、蒼野と優が人数分のカップを片付け、残る二人が一早く身支度を済ませ、
「素朴な疑問なんだが俺達の居場所は悟られてないのかな」
「大丈夫じゃない? 濃霧の場所からここまで五十キロ近く離れてるのよ。流石にこの場所はばれてないと思うんだけど」
先に玄関に向かう二人を追うように蒼野と優が靴を履き、気になった点を説明した。
「一応確認しとくか」
その後蒼野が風の属性粒子を辺りに撒き周囲を探るが人の形が引っかかることはなく、その結果を知り安堵。
「目で見える範囲にも怪しい影はないわね」
「俺の直感も反応なしだ」
銃に手をかけた康太と臨戦態勢の優が警戒を解き、黙っていたゼオスも剣から手を離す。
「よし、行こう」
そこまで確認した上で先頭を歩く蒼野が大きく深呼吸を行い心を落ち着かせるとそう口にして、先頭を歩く蒼野に続いて三人が進み始め、一行は濃霧の向こう側にあるキャラバンへと向け進み出した。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
明日はいつも通りの時間に投稿できると思います。
話としては進軍開始回。
もう数話でタイトルは変更かと思います。
それではまた明日、よろしくお願いします




