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堕ちた神の座


 振り返ってみれば彼は、死してなおいくつもの事件に関わっていた。


 ミレニアムが動き出したのは彼が死んだ直後の事であり、


 ガーディア・ガルフが世界を相手に戦いを挑んだ理由は彼の死が大きく関わっていた。


 一時起こった賢教による攻撃の熾烈化も、デューク・フォーカスに続き彼という存在が消えたゆえである。


 その男が今、立ち塞がる。

 この土壇場で、ギルド『ウォーグレン』が超えなければならない最後の関門として立ち塞がる。


「………………これは罪の告白と受け取っていいんだな。イグドラシル」


 その事実を突きつけられた直後、ゼオスの声が鋭くなる。

 今回の戦いが始まって以降初めて、玉座の前に佇むイグドラシルに対し殺意を込めた声を吐き出す。


「………………思えばこれも、数奇な運命ですね」

「なに?」


 それを受けても、目の前に自分の命を狙う積がいたとしても、彼女の声に怯えはない。

 目から黒い粘性の液体を零すという異常な光景を見せつけながら自身の胸に神杖を持っていない左手の掌を持っていき、普段と変わらぬ声で言葉を紡ぐ。


「神の座に至るための最後の試練。それは代表達を選出しての力比べです。人数や対戦形式はその時々で変わりますが、これだけは変わりません」

「………………それで?」

「それを今、この『神の居城』を全域を用いて行っている。そう思うと………………こみあげてくるものがありませんか?」

「ねぇよバカヤロウ!」


 それを聞き苛立たしげな声をあげた積が駆けだす。一分一秒でも早く目の前の存在を仕留めるべく全速力で前に出る。


「世界樹よ! 私に力を!」

「うぉ!?」

「あれは!」


 これに対しイグドラシルが声高にそう宣言すると、状況が大きく変化する。

 ラスタリア全域が強烈な揺れに襲われ、かと思えばシンボルであり『神の居城』に近い高さを誇っていた世界樹が発光。

 最初は生命の営みを感じさせる黄緑色の光を放っていたそれは、時が経つにつれ黒く変色し、かと思えば光の柱を形成。

 その光はイグドラシルの持つ神杖『エマーレイラ』に収束していき、


「積。もしやあなたは、世界樹がただのシンボルだなんて思っていましたか?」

「っ!?」


 嘲るような声と共に一振りして繰り出されたものを見た瞬間、積は呼吸が止まった。


「世界樹の正体は千年という時のあいだ私が溜め続けた木属性粒子の貯蔵庫です。つまりあなたはこれから、私が築き上げた千年と戦わなければならない」

「お前………………お前ぇぇぇぇ!!」


 繰り出された攻撃の威力が熾烈だったからではない。

 出てきた物が木の根ではなく『黒い海』であったゆえだ。

 そしてそれは彼女が杖を振り抜くと何度も三日月型の波として迫り、触れるだけで勝負が終わってしまうと知っている積は回避に専念。


「逃げ続けてもいいですが、辿る未来は哀れな死だけですよ!」


 その歩みを阻むように今度は分厚い木の根が打ち出され、積の逃げ場を奪いながら幹の至る所から『黒い海』を噴出させる。


「………………あぁそうですね。康太君が見てるんでしたね。でしたら………………こうしましょう」


 この動きを止めるべく再び康太が発砲。イグドラシルの上半身と下半身が離れるが床に触れるよりも早く繋がり、持っていた神杖で地面を二度小突く。


「面倒な事をしやがる!」


 これにより原点回帰の発動で生まれた巨大な空洞を塞ぐように『黒い海』が脈動。更にその上から球体状の膜を張り、最上階全域が外部から隔離された空間へと変貌した。


「こちら古賀康太! 通じてるかわからねぇが連絡だけは入れておくぞ! このままじゃ狙撃は無理だ! もう一回蒼野の原点回帰で風穴を開けるのもいいが、ゲゼルさん相手にその隙はないと見た! だからオレも中に突入する! それまで誰も死ぬんじゃねぇぞ!」


 この状況を前に康太は予定を変更。

 本来ならばこのまま狙撃手として陣取り、ラスタリアだけでなく世界各地で起きている事件の援護を務めるつもりであったが、『神の居城』最上階の戦いを最優先事項と認定。

 定位置から離れ、ギルド『ウォーグレン』の仲間達が待つ現場へと向け駆けだした。


「急げよ康太ぁ! こりゃ! きついぞ!」


 その声は内部へとしっかりと通じており、ゲゼル・グレアと対峙する蒼野が焦燥感を滲ませた声をあげながら繰り出される刃に対応。

 瞬く間に追い詰められた彼の元へとゼオスとレオンが馳せ参じ、


「我が剣――――果てへと至る」

「これは!」

「…………重ね閃火か!!?」


 そのタイミングを待ちわびたように刃が燃える。そして幾重にも交錯する。

 これにより繰り出されたのは、かつて彼が目指した究極の一。


 『果て越え』ガーディア・ガルフが使う技の一つであり、三人の体に衝突すると蒼野の胴体を真っ二つに、レオンの右腕を頭上へ。そしてゼオスの両足を瞬く間に吹き飛ばした。


「ゲゼルさんが………………若返ってる!?」


 蒼野に関しては自身の能力で再生できるため放置した優が、残る二人の傷を治療しながら目にしたもの。それは体から真っ白な煙を出しながら若返っていく剣聖ゲゼル・グレアの姿。


 千年前、ガーディア・ガルフを仕留めた彼の全盛期である。



ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


今回は短めですが話は結構進みます。

イグドラシルの本領発揮。そしてゲゼル・グレアの全力を発揮開始です。


それはそうと神教が隠していた戦力が前回の話で全露呈したわけですが、ここで一つ話題を。


ズバリ『この戦力ならば三章のガーディアらに勝てるのではないか』というものです。

これに関しましてはゴットエンド無双により、全力を発揮できないガーディアまでは仕留められます。ただその後に出てくる全開ウェルダで詰みます。

一応力関係としてはガーディア・ガルフとゴットエンド・フォーカスは同等クラス。全開のガーディア=ウェルダはその上、という位置づけなので、ガーディアやシュバルツを倒した時点で疲労困憊な神教側は彼に勝てず終わりです。


ではゴットエンドやら仮面の狂軍を四大勢力軍勢に混ぜたらどうかというと、ここまで行けば本編ガーディアの代わりをゴットエンドができるので勝てます。

ただしこの場合、仮面の狂軍の正体により世界中を巻き込んだ戦争が勃発。泥沼の大戦の末に総人口の半数が死傷者となるという目も当てられない結果になるため、本編のような着地が無理です。


なのでまぁ、ウェルダ生存ルートに入ったのも含めて、本編以上の結末はないと言えるでしょう。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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