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元祖最強ガーディア・ガルフ


「どうやら君ご自慢の幸運にも限界というものがあるようだね」

「………………なんだと?」

「先の例に合わせるなら、主人公補正とて通用しない領域。全てのチャンスを使っても届かない、いわゆる『負けイベント』という奴だ」


 ゴットエンド・フォーカスが指の怪我を修復した直後、これまで以上の攻撃の嵐が彼の身に襲いかかり、結果として全身の至る所に浅くはない傷が刻まれる。

 それは十秒にも及ぶ衝突を終えた事による結果で、全てを終え彼の目の前に現れたガーディアは、同様かそれ以上の怪我を負っていたが、充実感を得たような空気を発しながら彼を指さし指摘する。


「ふざ、けるなぁ………………………………!」


 その返答は激昂と共に行われたのだが、ゴットエンド・フォーカスは裏で冷静に分析する。


 今しがたガーディアが告げた説明。


 これは間違っていると断言できる。


 惑星『ウルアーデ』に住む凶悪な犯罪者であろうと、宇宙の果てから来た力自慢であろうと、誰も彼には触れられなかった。彼が繰り出した攻撃を躱せなかった。


 それ等の結果はいつだって彼の前に示あれ、結果として万人が彼の思い通りに死に、目的の達成にこぎつけたのだ。


 だから彼の幸運に『限界』の二文字は存在しない。


「言うまでもないことではあるが、睨んだだけで私は殺せないよ。能力の類は神器で弾くし、ただの粒子術では君の幸運を使っても――――」

「黙れ!」


 存在しないはずなのに――――――存在している。

 今、彼は、触れられるだけでなく明確なダメージを受けている。


「………………………………業腹だが認めざる得ないな」


 この矛盾の正体にゴットエンド・フォーカスは既に気づいていた。不平不満はあれど納得していた。


「貴様は本当に僕と同じ領域に立っているんだなっ!」


 それは相手が『果て超え』ガーディア・ガルフであるゆえであると。


 彼だからこそ他の者とは異なり、攻撃に触れた直後にも強引に回避行動に移れるのだ。

 彼だからこそこちらの防御に触れた後でも攻撃の軌道を変え、更なる連携へと持っていけるのだ。


(考えを改めざるえないな)


 正直なところ、ゴットエンド・フォーカスはガーディアに対し自分が有利な立場にいると思っていた。

 多彩な遠距離攻撃を持っており、距離を取る手段も十二分に備えていた。だから有利に立ち回り、それこそ一方的に蹂躙できるとさえ考えていたのだ。


 だが現実は違った。


 他の者が相手ならばこうはならなかっただろう。

 無限の手数も異常な速度も持っていない相手ならば、彼は傷を負うことなくいつものように勝利していたはずなのだ。


  つまりである。ガーディア・ガルフはゴットエンド・フォーカスにとって唯一無二の天敵だったのだ。


「――――ふぅぅぅぅ!」


 そこまで考えたところで、体に刻まれていた傷の修復を行い、目を閉じ深呼吸を行う。

 それはこれまでしていたような楽観視を止めるための彼なりの儀式であり、閉じていた目を開き鋭い視線をメガネの奥に携えた直後、


「シューティングメテオ(隕石雨)!」


 腹の底から声を張り出しながら腕を前に突き出し、かつてない意志を込め攻勢に出る。

 太陽と同等以上の大きさを秘めていた無数の星を、流星群としてガーディアへと落としていく。


「今更この程度」


 だが星同士の間に僅かながらも隙間のある程度の攻撃がガーディアに当たるわけがなく、隙間を縫うように駆けると瞬く間に突破。視認できないほど遠くへ離れたゴットエンド・フォーカスへと接近していく。


「ギャラクティア・ラビリンス(銀河大迷宮)!」


 はずであったが、その行動を読み切っていたゴットエンド・フォーカスは既に更なる手を打っており、己が粒子で形成した巨大な銀河のど真ん中にガーディアを閉じ込められる。

 それによりガーディアが一瞬足を止めると、その隙に同じものを二重三重と重ね身動きを取れなくし、


「サテライトロウ(衛星の法)!」


 そうして足を止めたガーディアを飲み込むように、四方八方から極太のレーザー光線が撃ち込まれる。

 その規模はこれまでのような超広範囲には非ず。

 しかし一撃必殺に重点を置いたそれは数多の銀河を貫くだけの威力と貫通力を秘めており、直撃せずとも余波だけでガーディアを殺せるだけの殺傷力を持っていた。


「ぐぁ!?」

「君の建てた策がまた崩れたぞ。次はどうする後輩?」


 それほどの技を重ねても、ガーディアは止まらない。

 気が付いた時にはゴットエンド・フォーカスが敷いた拘束と即死技の連携を潜り抜け、彼の周囲に漂っていた防御網やカウンター技も解除し、脇腹を深々と切り裂く。


「対応が…………早すぎる!」


 今しがたゴットエンド・フォーカスが繰り出した技の数々は、これまでガーディアには見せてこなかった初見のものだ。そして策に嵌ったことは一瞬足を止めたことから理解できる。


 だというのに次の瞬間には抜け出しており、反撃を当てるという結果まで叩き出した。


 この結果に絶句するゴットエンド・フォーカスは『なぜそんなバカげたことが可能なのか』と考えるが、答えはガーディアが『果て越え』たる所以。『他者の十倍の時間』である。


(先ほどの障害は五百と少々か。これまでの傾向から考えるにその辺りが一度に展開できる限界か?)


 『万物万象が追い付けない速さ』


 『数万を超える行動回数』


 上記の二つの要素もガーディア・ガルフという男を『果て越え』たらしめる大きな要因ではある。

 しかしそれらが完璧な効果を発揮するには、それを使いこなすための優れた脳が必要なのだ。

 

「ビックバン!」

「………………あの場所なら千手使えば穿てるな」


 その脳が十全に働くのには大量の情報と時間が必要なのだが、ガーディアの特異体質『十倍の思考時間』がその全てを成し遂げる。


「は、離れても離れても!」

「――――」

「どこまでも追いかけてくる! 僕の繰り出す全てに――――対応して来る!」


 目標がどれだけ逃げようと、時間を稼ぐために妨害しようと、はたまた仕留めるための策を繰り出そうと、常人を遥かに上回る思考時間。そしてそれを十全に活かした速度と手数が凌駕する。

 気が付けば攻撃を喰らう事はなくなり、逆にゴットエンド・フォーカスは傷の修復を終えた頃には新たな傷が刻まれるようになっており、


「っっっっ!」


 内臓を痛めめ口から血の帯を流しながら、ゴットエンド・フォーカスは認める。


 どれだけ大量の星を撃ち込もうと、銀河や銀河群、それに銀河団を利用した超広範囲攻撃を仕掛けようと、ブラックホールやビックバンを連発しようと、


 生物の枠組みを突破した目の前の存在。


 『果て越え』ガーディア・ガルフを仕留めるには至らないと。


「くぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」



 つまり――――――――もはやこの場において己に勝ち目はないと。


 己が思考がそのような結果に達した瞬間、ゴットエンド・フォーカスがこれまでにない勢いで咆哮する。

 自身を中心とした超新星爆発を連続して繰り出し、ガーディアの歩みを阻む。


「血迷ったか? 冷静さを失った状態の相手に負けるほど、私は甘くはないぞ?」


 これに対しガーディアは攻撃の圧が薄い部分を正確に見つけると、神器と圧縮した炎を用いて反撃。十五度にわたる爆発の衝撃全てを相殺し、


「神器の硬度が宇宙最強とは知っていたが、まさかそれを己が身で体感する事になるとは…………消えた?」


 目にすることになる。それまで中心部にいたはずのゴットエンド・フォーカスが消え去った光景を。


『ワールド・エンドォォォォォォ(宙の終焉)!!』


 この事態を不審に思ったガーディアはすぐに周囲の気配を察知し始めるのだが、すると三百六十度全てを埋めるような声が響き、


 直後、ガーディア一人だけを残していた夢双領域がひび割れ崩壊した。



ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


『果て越え』二人による戦いも佳境へ。

戦いはかつてない規模に至り、一気に進みます。

なお今回の話で銀河やビックバン。それに超新星爆発相手に打ち勝っているシーンが何度もありますが、これはウルアーデの住民が異常な強さで、ガーディアがその中でも上澄みの中の上澄みゆえに連発でいると思ってください。

他の面々なら流石にここまでの無茶を連続で通すことはできません。


次回も引き続き最強二人による決戦。

クライマックスへと向け二人が死力を尽くします。


それではまた次回、ぜひごらんください!

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